第7話
「……ど、どうも」
荒山さんがどこからかお茶を入れたカップを二つ持ってきてくれた。その間も視点は鷹宮と呼ばれている支部長に固定されている。
「なんで女性が支部長を?って顔だな。」
「……い、いや、そういう訳じゃ」
「誤魔化さなくてもいいさ、言われ慣れているし気にしていない。」
「す、すいません……」
綺麗な顔立ちに反してボーイッシュな口調。支部長にしては圧倒的に若い。20代だろうか?そんな風に疑念の眼差しを向けていると、ニコリと微笑みを向けられてしまい、俯く。
「いいさいいさ、疑うのは良いことだよ。確かにこんな戦闘経験も無さそうな女が最前線の支部長だなんて、疑うしかないだろうね。」
「勝手に一人語りさせて貰うとする。――私は元々リベラトルの"最古のメンバー"って言われる部類の人間でね。ま、最古って言ってもリベラトルが出来たのは経ったの3年前なんだがね。」
リベラトルの最古のメンバーそれは――確か6人の能力開花者と一人の技術者から始まっていたはず。
「それで……なんで最古のメンバーが支部長になんて?」
支部長は主に前線に立てなくなるような怪我を負った者か年配者が就くはず。見た所目立つ外傷はない。
「能力を悪用する犯罪者組織が居るのは知ってるかな?」
「はい、小耳に挟んでいます」
「私を襲ってきた組織の名は聖盤教。表向きはただの教会だが、裏ではモンスターの捕獲・売買を平気でやっているようなイカれた奴らだ。」
淡々と語る鷹宮の顔は徐々に暗くなっていく。その顔から聖盤教がどういった組織なのかは容易に想像できる。
「そして、私はその中の一人に能力を"奪われた"んだ。」
「奪――われた?ってそんな事が……可能なんですか?」
「私もそれまでは、そんな事ができるなんて考えたこともなかったが……げんに私は能力が使えない。悲しい事にな。」
「そうして、私は止むなく前線から退くしかなくなったと言う事だ。」
能力を奪われた以上、素がどれだけ強かろうとあのゲート内では無意味。足手まといにしかならない。
(懸命な判断だろうな)
そんな懸命な判断ができるからこそ、支部長なんて役職を任されるわけだろう。
「ちなみに、この話は今まで幹部クラスの人間にしか話していない。」
「え?」
(――まさか、もうバレたのか?俺が能力の登録を偽っている事が。否、あり得ない。能力は見せていない。あのゲート内でしか使っていない。)
焦りからか、顔に汗が流れる。
「そんな気を張るんじゃない。安心してくれたまえ。単に君には期待している。それだけさ。」
意味深に微笑む鷹宮の顔と共に支部長室を後にした。
「まぁまぁ気にすんな!支部長はちょーっとだけ不思議ちゃんなとこがあるがよ、仲間思いな良い人だ。やらかさない限りはな!」
肩を勢いよくポンポンと叩かれて軽く前に倒れそうになる。このノリは少し田中轍に似ている。
人情に厚く、勢い任せ。暑苦しい。
本来は最も苦手とするタイプの括りだが、戦闘に於いてはこの手の人間が案外役に立つ。よっぽど捻くれていない限りはこの手の人間に嫌われることはないだろう。
「あの、荒山さん」
「ん?なんだ?便所なら下の階だぞ?」
「いや、あの気になった事があって」
「?」
「さっき鷹宮さん……じゃなくて支部長がこの話は幹部クラスの人間しか知らないって言っていたじゃないですか。てことはもしかして……」
「ああ!そうとも、俺もその幹部クラスの一人さ!なんならお前さんを連れてきた路渋谷もだぞ。」
一気に幹部クラス2人と接触。幸先が良いな。
正直、この支部は本部よりも重要な施設。機密情報も多いはず。俺の任を果たすにはもってこいの場所という訳か。




