主を拐いに来た奴に遠慮なんかいらねぇだ
神さまが引き起こした事故によって死亡した私たちは、別の世界に転生することになった。
小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたのに、一寸法師なみに(サイズの)小さな女の子に転生させられてしまった。
次々と襲いかかって来る虫や小動物を撃退し、苦労の末に手にした打出の小槌は、呪いと引き換えに一時的に願いが叶うという、質の悪いレプリカだった。ぴえん。
神さまへの生贄になりかけていた小梅という少女を助けたが、再度降りかかる災厄をキャッチしてしまい、鬼の里の長アイリスとガチ対戦になりなんとか勝利する。
神さまとやらの対策を東の領主達に任せ、鬼の里へ向かっていた。
まったく、こんなの命がいくつあっても足りないよ。絶対に転生やり直してもらうんだから!
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夜通しの移動でようやく鬼の里に戻ってきた一行の前に、腹の出た汚いおじさんが現れた。
おじさんは、揺り椅子に揺られて乗ってビール飲んでいた。
「待ったぞ。アイリス」
「ヒロアキさま?! し、失礼しました。か、神さま、なぜこちらに」
「生贄を受け取りに来たんだよ。小梅と言ったっけ?」
「「「!」」」
一行に驚愕が走った。とともに溢れ出る疑問。
このおじさんが神さま?
神さまの名前、ヒロアキなの?
なぜここにいる?
小梅の居場所をなぜ知っている?
小梅の名をなぜ知っている?
アレックス達はどうなっているんだ?
裏切ったのか?
バレたのか?
レイジから指示を受けたユイが、レオナルドの肩からアイリスの髪に鎖鎌を投げて、鎖を高速で巻き取って、アイリスの髪の中に移動した。
(あの男に言え。恐れながら…)
「!…恐れながら、」
アイリスはユイの言葉を繰り返した。
(小梅は人質としての条件を満たしておらず、)
「小梅は、人質としての、条件を、」
たどたどしいアイリスの言葉を腹の出たおじさんが遮った。
「そう、条件を満たしてない。いいよ。知ってるから」
(((じゃあ、なんで?)))
「『娘はいたが人質の条件を満たしていなかった』と『人質はいなかった』は違うだろ? お前らは小梅という娘を隠したんだ。不誠実だよな。罰が必要だ。」
(!くそ、バレたのか)
「俺から隠そうとしたぐらいだ。その娘はお前らや東の領主にとっては生贄になるんだろ? それで許してやる。さ、よこせ」
腹の出たおじさんは勘違いしているが、鬼の里の連中にとって、小梅などどうでもいい存在だ。助かるためならあっさり渡してしまうだろう。
「あれ? アイリスお前、なんで手を縛られてんだ?」
おじさんは他の鬼も調べる。
「お前ら負けたのか。勝ったのはその黒鬼か?じゃあ隣にいる娘が生贄か」
レオナルドだけが縛られていないこと目ざとく見つけて言う。
「アイリス、部下にやられたのか? そろそろ世代交代か?」
おじさんはお腹の脂肪を揺らしながら小梅に近づく。
「なかなか可愛い顔してるじゃないか。お前は今もまだ生贄だ」
小梅が怯えたの見て、レオナルドが2人の間に体を入れ、小梅が隠れるように後ろに下がった。
「黒鬼、邪魔をするな」
おじさんがレオナルドを押し退けようとするが、レオナルドが逆らった。
おじさんがイラっとしてレオナルドの頬を殴った。
それを見て小梅が悲鳴を上げた。
「いやぁっ!」
殴られたことには我慢したレオナルドだが、小梅の悲鳴を聞いて、反射的に、おじさんを殴り飛ばした。
おじさんは、殴られると思っていなかったようで、派手に吹っ飛んだ。
アイリスは顎が外れたかのような大口を開けて、驚いた。
ユイが鎖鎌を上手に使って、大急ぎでレオナルドのもとへ戻ると、レオナルドとレイジが言い争いをしていた。
「お前、短気すぎ! アレ、神さまらしいじゃん!」
「小梅を泣かすから殴られるんだて」
「そうだけど!」
「あいつが悪いだ!」
「わかるけど!」
「アレは主を拐いに来た奴だて、遠慮なんかいらねぇだ」
「レオナルド偉い!」
ユイが割って入ってレオナルドの肩を持った。
「あんた、カッコいいわ!」
「いや、でもお前ら、アレは神さまだぞ?!」
レイジが反論し、2人が答える。
「「知るか!」」
「…」
小梅がレオナルドの腕を引いて言う。
「ありがとう」
「当然ことをしただけですだ」
レオナルドがデレた。
ぶっ飛ばされたおじさんは、鬼の里の建物の一つめり込んでいたが、傷一つなく、埃を払いながら戻ってきた。
「ずいぶん生意気な鬼だな」
「小梅は生贄じゃねぇだ」
おじさんは鼻で笑って、遠い間合いからレオナルドを指さした。
「関係ねぇよ。俺がよこせと言ったらよこせ」
おじさんの指先からレオナルドの額に向かって細い光の線が伸びた。いや、それは光の速さなので伸びるところなど見えなかった。いきなり線が現れたというべきかもしれない。
ともかくそれはレオナルドの額に穴を開け、その穴から血が噴き出し、レオナルドは倒れた。
「さあ、小梅とかいう娘、こっちに来なさい」
おじさんは、倒れたレオナルドのことなど一瞥もせず、小梅に言った。
小梅は突然の出来事に反応できずにいた。
その時、神さまの右目に小さな小さな十字手裏剣が突き刺さった。
「いてぇ!いたたたた!いってぇ!」
神さまが叫びながら、思わず右手で目を押さえると、その右手の小指に鎖鎌が絡まり、ユイが高速で接近してきた。
おじさんは気づいて自分の小指に絡まっている鎖をまじまじと見たが、何もできないでいると、おじさん見ている中で、ユイはその勢いのまま、飛びながら刀を振るい、おじさんの人差し指を切り落とした。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
おじさんは、左手で無くなった右手の人差し指の根本を押さえて、叫んだ。
おじさんの顔面に着地したユイは、とどめを刺すべく眼球から侵入し脳を斬ろうとしたが、めちゃくちゃに暴れたおじさん振り落とされてしまった。
尋常じゃなくのたうちまわっているで、ユイ近づけずに一旦引いた。
レオナルドはレイジの治療で回復して立ち上がり、ユイは打出の小槌で大きくなった。
神さまは少し冷静さを取り戻し、右目と右の人差し指を失って血を流したまま、レオナルドとユイに言った。
「とっととその生贄をよこせ」
「断る」
「断るだ」
間髪入れずに2人は明確な拒否を叩きつけた。
神さまは肩を震わせて、絞り出すように言った。
「ふざけるなよ」
そしてもう一度今度は空が割れるかのような声で言った。
「ふざけるなぁぁぁ!」
雄叫びは衝撃波となって、ユイ達に襲いかかった。
レオナルドが身を挺してパーティーを守る。
強力な衝撃波がレオナルド傷つけていく。
衝撃波は7秒もの間猛威を奮ってレオナルドを痛めつけたが、レイジが傷ついた端から回復していったため、見かけ上は効いていないように見えた。
その間に、ユイはマサムネを召喚した。
衝撃波が止むと同時に、ユイは十字手裏剣を神さまに投げつけて牽制し、レオナルドとユイとマサムネは接近戦をするべく、十字手裏剣を追うようにダッシュした。
神さまは傷が治っており、見た目でわかるほど神々しいオーラで明らかに戦闘力が上がっていた。
先頭のレオナルドを神さまが迎撃をする。先程レオナルドを倒した指先から出る光で3人まとめて串刺しするつもりである。
レオナルドは光には反応できないが、神さまの殺気と指の動きには反応できた。両腕を顔の前でクロスして、全身に力を入れて受け止めて耐えた。
レオナルドの後方には、小梅を含めたパーティー全員がいる。ここは意地でも耐えるレオナルドだった。
ユイとマサムネが、レオナルドの影から左右に分かれて躍り出て、更に間合いを詰めていく。
鬼は十字手裏剣を躱した。
左に飛び出したマサムネがトップスピードを出して、ユイに先行して、斬り込んでいった。
鬼の左側へ着地するように目掛けて、前脚の爪を右、左の順で振るって、神さまの向きを若干向かって左に変えさせて、自分に向ける。
戻ってきた十字手裏剣が、神さまを後方から襲うが、神さまはこれを難なく躱した。
躱し際を狙って、マサムネが左の爪で攻撃を仕掛けるが、爪に当たらないように前脚の深い位置をブロックされた。
そのタイミングでユイが、マサムネによって向きを変えさせられた神さまの後頭部目掛けて死角から袈裟斬りを敢行する。
しかし、突然現れた盾によって、防がれてしまった。
「な?!」
獲ったと確信していたが、思わぬ形で防がれて驚いているユイに、余裕たっぷりに神さまは言った。
「なかなかの攻撃だ。それにしてもお前どこにいたんだ? 生贄はお前でもいいぞ。なかなかいい女じゃないか。そうだ! 2人揃ってもらっていくか」
「誰があんたなんかに!」
ユイは侮蔑を込めて返事を返し、恐怖を少し和らげた。
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