水浴びしたい。体洗いたい
神さまが引き起こした事故によって死亡した私たちは、別の世界に転生することになった。
小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたはずなのに、一寸法師なみに(サイズの)小さな人間に転生させられてしまった。
そのせいで、私と一緒に行きたいと希望した二人まで小さく転生してしまった。
虫に襲われているし、スズメの糞で溺れそうになるし、ネズミに食られそうになるしで、踏んだり蹴ったりだ。
絶対に転生やり直してもらうんだから!
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いい加減、身体を洗いたい。
レイジはせっせとネズミの肉を保存食にする挑戦を続けている。
保存食作るのにマジになり過ぎて魔力使ってんじゃない?
すごい干し肉出来そうだね。
「身体を洗いたいんだけど、どっか水場ないかな」
「我慢しろよ」
「いやいや、これ糞だからね? 糞を溺れるほど全身に浴びたんだよ? ほっといたら皮膚が炎症起こすよ」
レイジは「女は面倒くさいな」って顔をした。
川か湖が近くにあればいいんだけどな。
耳を澄ましたら水の流れる音が聞こえるとか、上空から観察できるとか、そういうスキルがあれば助かるんだけどなぁ。
「さっき、蚊と戦ったって言ってなかった?」
「レイジと会う前に戦ったよ」
「じゃあ、そっちの方に水はあるよ。蚊とか蠅は水場から遠くには行かないんだ」
レイジすごいな。マジで。サバイバル知識あなどれん。
じゃあ、あっちに戻ってみよう。
「行ってくる」
「1人で大丈夫? コレ終わったら一緒にいくよ」
「マサムネが一緒だから大丈夫だよ」
そう言って、私は水場を探しに行った。
レイジを1人置いていくことにちょっと不安はあったけど、火もあるし、なによりも、体に纏わりついた汚れが我慢できなかったんだ。
マサムネは私の前を歩いている。
たまに振り返って、私がついてきているか確認している。
マサムネの案内で、蚊と戦った辺りまで戻って来たけど、蚊の死骸はなかった。食べられたのかもしれないし、軽いので風に飛ばされたのかもしれない。
そういえば、移動速度についてレイジが教えてくれた。
小さい生物だと、歩幅は小さくなるけど、ピッチが上がるので、身長比率とはならないそうだ。だから思ったより速いって、昆虫大好き芸能人がテレビで言っていたそうだ。
なんと言ってたっけ?
私たちは身長が60分の1だから、歩幅も60分の1なんだけど、体積は60分の1の3乗になるので、えーと、216,000分の1になるだっけ?
あと、筋力のことも言ってたけど…、わかんなくなっちゃった。
とにかく、すごく軽いから小さい割に結構速いってことみたい。ゴキブリが速いのと同じ理屈とか言っていたな。
さて、この近くに水場があるはずって話なんだけど、どうすればいいか考えていると、マサムネがまた案内を始めた。
ついていくと、数分で池のようなところに出た。
私たちにとっては、湖のように大きく感じるが、池だとおもう。
だってあそこに見えている鯨みたいな生物、多分、錦鯉だよね?あの色艶は間違いない。
水は透き通っているし、臭くもない。
よし、ここで体を洗おう。
誰も見ていないので、道着を脱いで、全裸になって水に入った。
精神年齢ではもうアラサーだし、肉体的には引き締まっていた頃に若返らせてもらったし、異世界だしってことで少し大胆になっているのかもしれないな。
道着と袴も激しく汚れていたので、最初に洗濯したのだけれど、やってから他に服が無いことに気づいた。とりあえず、マサムネに預けて、体を洗うことにした。
錦鯉が怖いけど、まあ、ここは池の端だし、浅いので大丈夫だろう。
一通り洗い終わった。
お湯に入りたいという欲求が湧いてくるけれど、とりあえずは汚れを落とせてサッパリした。
しかし、錦鯉がいる池があるということは、私たちは誰かの屋敷の敷地内に転生してきたということなのかな?
そんなことを考えていると、マサムネの鋭い鳴き声と背後から水の音がした。
振り返ると、眼前に大きな穴があって、そこに吸い込まれたような気がした。そして何も見えなくなった。
真っ暗で何も見えない。
体は…、動く。
全身の皮膚に感じるのはヌルヌルとした粘液?
粘液の中に全身がつかっているような感じ。
上下感覚はある。
上は…、空気もある。
ドクンドクンと音が聞こえる。これは心臓の音?
もしかして、ここは錦鯉のお腹の中?
私、食べられちゃった?
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ネズミの干し肉をせっせと作っている。
とてもじゃないけど、こんなバスみたいなデカブツ、全部は無理だし無駄なので、良さげなところだけ処理した。
あとは待つだけなので、俺も体を洗おうかと思ったら、急に明確に嫌な予感がした。
なんだこれ? こんなハッキリ嫌な予感ってするものなのか?予感てうっすら感じるものじゃないのか?
違和感バリバリだ。つまりコレは異世界のものだな。
ということは、最近教えてもらったアレだ。パーティーメンバーがピンチってやつか。
パーティーメンバーのピンチねぇ。
え? ユイがピンチなのか?
よ、よし、た、助けに行くぞ。
慌てて、ビビりながら、ユイが向かった方向に走る。
あんなに強いユイがピンチとかどんな相手だよ。
俺が行ったところでなんか出来るのか。
いや、俺しかいないんだから、とにかく向かうぞ。
回復魔法だけでも役に立つはずだ。
しばらく必死に走っていると、上空から光るものが降りて来た。
ソレは走る俺に合わせて並走して、話しかけて来た。
《レイジさん、ユイさんは何処っスか?》
神さま?
《そうっス。先程は検収作業ありがとうっス。それでユイさんは?》
マサムネと体を洗いに水場へ行ったんだ。それでさっき嫌な
《嫌な予感がしたっスか? 今もっスか?》
え?
《今も嫌な予感するっスか?》
あ、ああ。してる
《じゃあ、ユイさんは今もピンチっス。つまりまだ生きているっス》
よかった。
《この先っスね?》
うん。マサムネが一緒にいるはず。
《先に行くっス》
ソレは加速して先に飛んで行った。
ありがたいけど、なんであんな慌ててるんだ?
まあ、俺も急ごう。
急に心強くなった。…でも、俺、情けない奴だな。




