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サーフェナイリス症候群改め「吾破(アハ=Awa)病」
歌声事件を経て人々の意識には現象としてのサーフェナイリスと、病としてのサーフェナイリスとの間に、論理的ならざる反発に近い隔たりが生じていた。元より疾病としてかの現象を捉える事に疑問の声が挙がっており、また足並み揃わぬ国内情勢を締めるという日本政府の打算的な思惑も働き、日本国内に於けるサーフェナイリス症候群の呼称が、吾破病と改められる事となった。
だが名称が変わった所で抜本的な解決は望めない。そう、真の目的はそこにはなかった。名称変更の陰で関連法が議会を通り大幅な法改正が為された。何より衝撃なのは、特別区(吾破病罹患者特別治療地区)内を既定の国法の定める範囲外とする吾破特地法の存在だろう。そして特別区憲法とも言える諸法案が可決し、その内容を知った各国大企業がこの日本の決定に狂喜し、しかし後日公布された追加法案に激怒と怨嗟の声を上げた。
日本は西之島海洋都市「淡島(Awashima)」及び同島研究地区以外の特別区からの、海外資本の廃絶を宣言したのだった。