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透明の白詰草  作者: 大和 臣爺
7/8

5,人狼(中編)

※G要素強めです。(R15G)


途中何人かのヒトがいたが、物陰に隠れながら家へと急いだ。

見かけるヒトは皆武装をして大きな銃を持っている。少なくとも五人とすれ違っている。


あまり遠くには行っていなかったのですぐに家に着き、息を整え用心しながら裏口の扉を開けて中に入った。


裏口はキッチンと繋がっており、そこには人気が無く静かだった。

キッチンに置いてある包丁を手に取り、リビングへと向かった。


リビングは家具が散乱しており、争った形跡があった。

父さんと母さんは無事なのか。その事ばかりが頭の中を埋め尽くし、動悸が激しくなっている。


「わっ!」


足元に意識が行ってなく、何かに躓いて転んでしまった。

躓いたものを確認して驚愕をした。


「か、母さん‼︎」


俺が躓いたものは腹から血を流している母さんだった。

かなりの量を出血している。


「母さん…母さん‼︎」


何度も呼びかけていると、母さんは弱々しく目を開いた。


「リ…リカン…」


体を起こそうとする母さんの肩を優しく押さえた。


「起きたら駄目!何があったの⁉︎」


「何処でバレたんだろうね…ヒトが来たんだ…」


母さんは大粒の涙を流しながら息も絶え絶えに言葉を続けた。


「母さんをね…撃ったの、お父さんだったの…リカンのおじいちゃん…」


「え…」


口減らしに子供を捨てるだけで無く、実の娘を撃ったのか。一度も会ったことの無い祖父に対して殺意が湧いた。

母さんは咳をする度に吐血をしており、俺は近くにあった布を傷口に当てて止血を試みた。


「母さん!駄目、駄目だよ…頑張って…!」


「リカン…あの子は?」


「え、あぁ…少し離れた所で隠れるよ…」


母さんは弱々しい手で頬を触ってきた。俺はその手に自分の手を添えた。


「最期に会えて、良かった…」


「やだ…母さん…」


段々と目が閉じていく母さんの顔には、俺の涙が滴っている。


「愛する我が子達…強く生きて…」


頬に添えられていた手の力が抜け、閉じられた目が再び開くことは無かった。


「うわぁぁぁぁ‼︎母さん!母さん‼︎」


汚れることなど気にせず、母さんを抱きしめた。母さんの体はまだ温もりがあるが、もう動くことはない。

大声で泣いていると気配を感じ、ゆっくりと顔を上げた。


「遂にくたばったか…子供が戻って来てるとはツイている」


涙でボヤける視界を整えて声の主を見ると、そこには髭面の男が立っていた。腕には銃を持っていて服は血で汚れている。

不気味なことに、髭面の男は髪色や目元が母さんとそっくりだった。


「母さんを撃ったの…お前?」


「歳上に、しかもじいちゃんに向かってお前とは何だ、孫よ」


俺は母さんの体に布を被せ、立ち上がった。すると、髭面の男は笑顔で手を差し伸べてきた。汚い手だ。


「じいちゃんと一緒に来てくれ。もう一人は何処だ?」


「…んで」


「ん?」


爪が手に食い込むほどに手を握りしめ、髭面の男を睨みつけた。


「何で母さんを殺した‼︎」


「ヒトであるこいつは邪魔なだけで用はないからな。用があるのはお前の父さんと孫だけだ」


髭面の男は床に倒れている母さんの頭を足で突いた。


プツン…


「さあ、もう一人の孫と一緒にっ。」


気がつくと俺はキッチンから持ち出した包丁を握りしめて髭面の男に突き刺していた。

勢いのままに押し込んだ包丁は柄まで入りこんでいる。


「あ"?…なに…を…」


勢いよく引き抜くと、男は吐血をして跪いた。傷口からもかなり出血をしているが、踏ん張って倒れないようにしている様だ。


しぶとい…


床を蹴って髭面の男を押し倒し、再び胸に包丁を突き立てた。

包丁は体を貫通して床にまで届いている。

手を上げては下ろし、一心不乱に繰り返した。


何度も…何度も…


「あ…」


気がついた時には握りしめた包丁の刃は割れてボロボロになっていた。


「父さん…父さんを探さないと」


俺は銃とストックの弾を手に取ってポケットに入れ、父さんを探しに家の中を走り回った。


・・・


二階に上がり、奥にある父さんと母さんの部屋の扉を開けると、父さんはいなくヒトが二人立っていた。


「ガキだ!狼のガキがっ。」


ヒトがこっちに気づいた瞬間、ポケットに収めていた銃を取り出し弾を一発ずつ撃ち込んだ。

弾は見事に二人のこめかみに命中し、二人は倒れた。

部屋を見渡しても父さんは見当たらなく、俺と弟の部屋を見に行っても誰もいなかった。

どの部屋も片っ端から俺たちを探していたのか家具が荒らされていた。


ジャリ…


何かを踏んだ感覚がありふと足元を見ると、フレームの割れた家族写真が落ちていた。大切に飾っていた宝物が…。


「父さん…何処…?」


「グルルルッ‼︎」


震える体を抑えて立ち尽くしていると、揺れを感じる程の低い唸り声が聞こえた。父さんの声だ。

外から声が聞こえ、窓を開けると外に父さんがいた。傷だらけの父さんの前には五人のヒトがいて、父さんに銃を向けていた。


俺は銃の弾を補充して、ヒトのに頭に向かって迷いなく三発撃ち込んだ。今日まで銃を使ったことはなかったが、三発はそれぞれ三人の頭に一発ずつ命中した。


突然の出来事に父さんは驚いていたが、すぐに意識を残りのヒトに向け攻撃をした。

俺は窓から飛び降りて外に出た。


五人いたヒトは一瞬で動かないものとなっており、父さんはフラフラになりながらも俺に近寄り、血塗れの俺を抱きしめた。


「無茶なことを…」


「父…さん、母さんが…」


「うん、分かってる…言わなくて良い」


父さんは服の袖で俺の顔に付いている血を拭い、優しく頭を撫でた。そして立ち上がり背を向けて歩き出した。

見慣れている大きな背中が遠く感じ、慌てて父さんの腕を掴んだ。


「ど、何処行くの?嫌だ…父さんまで…」


「まだこの辺りにヒトがいる…そいつらをどうにかしないとな…」


不安な顔をしている俺に微笑みかけ、腕を少し乱暴に振り払った。


「リカンはあの子を守ってやってくれ…リカンのことは父さんが守るから…」


「いや、嫌だ…無理だよ…父さん、僕には…」


「泣くな‼︎‼︎」


目元が熱くなり涙が出そうになると、聞いたことがないほどの声量で父さんが大声をあげ、肩を掴んだ。

予想外の出来事に驚き呆然としていると、優しく抱きしめられ頬を擦り合わせてきた。


「いや…泣いていい…泣いたっていいんだ」


父さんの毛並みの良い体毛に顔を撫でられていると、体が暖かくなってきた。

眠気を誘う様な、優しい匂い。


「お前がいなくなったら誰があの子を守るんだ?」


俺は震える手で力強く抱きしめ返した。


「父さん、今日沢山食料手に入ったんだ。美味しいご飯作るから…夜ご飯楽しみにしてて」


「…あぁ、分かった。リカンの料理は美味いからな…とりあえずあの子のところに戻ってやってくれ」


一瞬父さんから離れるのを躊躇ったが、意を決して父さんに背を向けて走り出した。不安な気持ちに押し潰されそうになり目からは涙が溢れ出ている。

俺は後ろを振り返らずに真っ直ぐ弟がいる場所に向かった。


「愛する我が子、強く生きるんだ…」



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