表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明の白詰草  作者: 大和 臣爺
3/8

2,白い部屋


…ハヅキ


「誰だ…」


誰かに名前を呼ばれ振り返るとヨシノが立っていた。


「ヨシノ!カズラ達には会えたか!」


パァンッッ!!


ヨシノに近づこうとすると足元に銃弾が飛んできた。

足を止めて銃弾が飛んできた方を見ても何もいない。


再びヨシノに視線を戻すと、フードの男がヨシノの頭を掴んでナイフを首に突き立てていた。


「やめろ…」


ハヅキ…怖いよ…


「やめてくれ…」


フードの男はナイフを振り上げ、勢いよくヨシノの首に振り下ろした。


「やめろぉぉぉぉッ!!!!」


・・・・・


「ッ…!」


次に意識が戻ると、見覚えの無い白い部屋のベッドに寝転がっていた。


「さっきのは…夢か」


体を起こし汗が滴る顔を手で拭うと、ジャラっという金属音が聞こえた。

手元を見ると、手首には手錠がついており一本の鎖が両手を繋いでいた。


そういえばヒトに拉致されたんだと思いながら立ち上がると、壁にある姿見が目に入った。

姿見に写る自分は肌着姿になっていて火傷をした右手と撃たれた肩は丁寧に手当てが施されていた。


机に置かれていた服を手に取ると、肩部分には穴が開いており、べっとりと赤くなっていた。

もう着れないと思い手に取った服を机に戻し部屋を歩き回っていると、格子の扉からフードの男の姿が見えた。


「起きたな」


「貴様…」


睨み付けると、男はフードを外し長いコートを脱いだ。

男の頭には狼のような獣耳が生えており、コートを脱いだ体には大きな尻尾が生えていた。


驚いたことに、男は漆黒の毛色をしていた。

長く生き様々な獣人にも会ってきたが、黒狼は初めて見た。


「まだ名乗っていなかったな、私の名はリカン。この研究所の職員だ」


「お前の名前など興味はない。村人達は無事だろうな」


「…あぁ、それぞれ逃げ出して行方は把握していないがあの後直ぐに撤退をした」


問いに答えると、リカンと名乗る男は顔を俯け格子を握りしめた。


「暫くはお前の監視をすることとなった。不審な行動は慎む様に」


それだけ言うと、リカンは去って行った。


「何なんだあいつは…」


すると入れ替わりで白衣を着た男がやって来た。


「オルコ族の青年…更に形の綺麗な角だ」


不気味に笑う男に尻込みしていると、白衣の男は格子の鍵を開けて扉を開けた。


「出たまえ。早速最初の仕事だ」


警戒をしつつ言われるがままに部屋を出ると、部屋の外には武装をしたヒトが立っていた。


「抵抗するんじゃないぞ」


「・・・」


無視をしていると、銃で後頭部を殴打をされ床に倒れ込んだ。


「うぐッ‼︎」


「無視をするな‼︎」


「おい、傷を付けるんじゃないぞ」


小突かれた武装したヒトは青ざめた顔で白衣の男に謝っていた。


痛む頭を押さえながら立ち上がり、再び白衣の男について行った。


・・・・・


「ここだ。入りたまえ」


案内された扉の前に立ち部屋の中に入ると、そこはベッドや銀色の器具が置いてあり、手術室の様な場所だった。

生唾を呑み部屋に入るのを躊躇っていると、白衣の男に背中を押されて部屋の中に入れさせられ、扉には鍵を掛けられた。


部屋の中には自分と白衣の男と武装をしたヒトの3人だ。


「そこの台に横になるんだ」


逃げ道は無いと思い、言われるがままに手術台の様なベッドに腰掛けると、突然腕の鎖を頭上から背中側に引っ張られ体が倒れ、両腕が頭上で拘束される体勢になった。

その後も白衣の男は手際良く体をベルトの様なもので拘束していった。


「な、何をするんだ…」


「ん?その形の綺麗な角を貰おうと思ってね」


角はオルコ族の象徴とも言える大切なもので、角の大きさが魔力の強さに関係する。

角が無いと魔法が使えなくなることに加えて視覚や聴覚などの五感が鈍くなると聞いたことがある。


「角には触るな」


威圧をしても白衣の男は不気味な笑いをするだけだった。


「オルコ族の英雄ともあろう者が無様な格好をしてるねぇ」


白衣の男は箱から何かを取り出した。


「…は?」


目の前に出された透明の袋の中には折れた角が入っていた。


見覚えのあるその角は…カズラのものだ。


「そ…れ…」


「子供と一緒にいたオルコ族の男の物らしいね」


白衣の男は袋から角を取り出して飴のように舐め出した。


「この角も形が綺麗だったからねぇ…言うことを聞かない奴らはすぐ殺したけど、こいつだけは生きたまま角と手を切り落としてから…」


体の奥から怒りを通り越した感情が込み上げてきた。


「貴様…」


「なん…だッ‼︎」


白衣の男は勢いよく吹っ飛んで壁に叩きつけられた。

部屋の中には強風が起こり周りの器具が中を舞っている。


「大人しくしろ‼︎」


武装した人が銃口を向けてきたが、中を舞うナイフが頭に刺さって呆気なく倒れた。

体の拘束具が壊れ体を起こすと、白衣の男が頭から血を流しながらも動いているのが見えた。

台から降り近づくと、さっきまでの態度とは打って変わって怯えた顔をしていた。


「能力を弾く効果があるはずなのに…何でだ‼︎」


「俺が貴様らに協力することで、村には手を出さないと約束した筈だろう…」


腕の鎖は脆くなっており、左右に引っ張ると容易く壊れた。


「約束ぅ?…ヒヒヒ、どうせあの馬鹿犬が何か言ったんだろ。誰もあいつの話なんて聞かなッ。」


白衣の男の首を力強く殴ると、脆いヒトの体は簡単に崩れ、小さく動いた後ピクリとも動かなくなった。


風がピタリと止み、白衣の男の手に持っていた角を取り握りしめ、膝から崩れ落ちた。


「っカズラ…」


親友や村を守れなかったことを悔やんでいると、突然強い眠気に襲われ意識を手放した。


・・・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ