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第4話お願いします。

第4話お願いします。

第四話「棚の向こう側」


六月も終わりに近づき、雨は降ったり止んだりを繰り返していた。


二冊の本は変わらない。


数字も増えず、文字も消えない。


直人は業務の合間に何度か確かめたが、何も起こらないことを確認するだけだった。


「しばらく様子を見るしかないか。」


そう結論づけると、仕事はいつもの仕事へ戻っていった。


返却された本を拭き、予約を確認し、児童書を並べ替える。


図書館は静かで、毎日が少しずつ違いながらも、大きくは変わらない場所だった。



紗季も以前と同じように来館していた。


受付で利用カードを出し、


「お願いします。」


「ありがとうございます。」


それだけ。


以前なら新刊の話をしたり、本を薦め合ったりしていたが、最近は互いに仕事や用事を優先するようになっていた。


特に約束したわけではない。


けれど、直人は利用者と必要以上に親しくなることに、どこか躊躇いを覚えていた。


紗季も、それを察しているようだった。


会話は短い。


視線が合えば軽く笑う。


それだけで十分だと思っているように見えた。



ある日、閉館前。


紗季は借りる本を一冊だけ持ってカウンターへ来た。


直人はバーコードを読み取る。


「返却予定日は二週間後です。」


「はい。」


それだけで終わるはずだった。


しかし紗季は一瞬だけ迷い、


「……あの本、変わりありませんか。」


と、小さな声で尋ねた。


「ありません。」


「そうですか。」


安心したようにも、少し残念そうにも聞こえる返事だった。


それ以上は話さない。


「ありがとうございました。」


「ありがとうございました。」


紗季は静かに図書館を出ていった。



その姿を見送りながら、直人は少しだけ不思議に思う。


以前なら「何もないこと」を報告し合っていた。


今は、それすら一言で終わる。


これでいい。


職員と利用者なのだから。


それ以上でも、それ以下でもない。


そう考えることに違和感はなかった。


ただ、帰宅前に貸出履歴を整理していて、紗季が借りた本の題名が目に入る。


『雨の日の記憶』


偶然だろう。


そう思って画面を閉じる。


それでも、その題名だけが妙に頭に残った。



次の展開候補


1.完全に日常へ戻る

数週間、謎も進展せず、二人もほとんど話さない。読者が「物語は本当に動くのだろうか」と思う頃に、小さな変化が訪れる。


2.第三者の登場

図書館の年配職員や写真館の常連客など、二人をそれぞれ知る人物が現れる。恋愛を進めるためではなく、二人の日常世界に厚みを与える。


3.「17」が静かに姿を見せる

何事もない日常の中で、時計、整理番号、バス停など、「17」という数字だけが偶然何度か目に入る。しかし二人とも意味づけはせず、読者だけが少し気になる程度に留める。

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