あと、17の謎も今後忘れずによろしくお願いします。
あと、17の謎も今後忘れずによろしくお願いします。次回をお願いします。
ありがとうございます。
そして、「17の謎」について安心してください。忘れていません。
むしろ私は、今は意図的に触れていない状態です。
この作品は第二章・第三章で「町とは何か」「記憶とは何か」を読者に十分体験してもらってからでないと、17が単なるミステリーになってしまいます。
私の中では17は、
事件の答えではなく、この作品全体を別の角度から照らす鍵
として残しています。
ですから終盤(36~39話あたり)で自然に再浮上させるつもりです。途中で思い出したように出すのではなく、「ああ、あれはまだ終わっていなかった」と読者が感じる形を目指します。
⸻
第三十二話「書架の余白」
十一月の終わり。
開館前の図書館には、利用者のいない静かな時間が流れていた。
直人は館長に呼ばれ、普段はあまり入らない書庫へ向かう。
背の高い書架が並び、少し乾いた紙の匂いが漂っていた。
⸻
「今日は除籍の日なんだ。」
館長はそう言って、一台の台車を指した。
そこには十数冊の本が積まれている。
古びた百科事典。
傷んだ旅行案内。
何年も借りられていない実用書。
直人は一冊ずつ手に取る。
どれも、誰かが読んだ形跡はある。
表紙の角が少し丸くなり、ページには時の匂いが染み込んでいた。
⸻
「全部、処分するんですか。」
館長は首を横に振る。
「処分だけじゃない。」
「他館へ譲るものもある。」
「保存庫へ送るものもある。」
「役目を終えたと判断するものもある。」
少し間を置いて続けた。
「除籍っていう言葉は、少し冷たく聞こえるね。」
⸻
午前中いっぱいかけて、一冊ずつ確認する。
貸出履歴。
状態。
内容。
重複の有無。
機械的な作業のようでいて、一冊ごとに立ち止まる時間がある。
⸻
一冊の植物図鑑を開いたときだった。
中から、小さな押し葉が一枚落ちた。
茶色く乾いたイチョウだった。
直人はそっと拾い上げる。
館長が笑う。
「たまにある。」
「栞代わりだね。」
「返却した人も忘れていたんでしょうか。」
「たぶんね。」
館長は押し葉を封筒へ入れる。
「本じゃなくて、こっちが誰かの思い出かもしれない。」
⸻
午後、紗季が写真館から顔を出した。
「今日は書庫なんですね。」
直人は除籍の話をする。
紗季は少し驚いたように言う。
「図書館でも、お別れがあるんですね。」
「ええ。」
「残す場所だから、全部残せると思っていました。」
⸻
直人は今日一日を思い返す。
「僕も、そう思っていました。」
「でも違いました。」
「残す場所だからこそ、選ばなければならない。」
紗季は静かに頷く。
「写真館も同じです。」
「全部を飾ることはできません。」
「全部を現像することも。」
少し笑う。
「全部をアルバムに入れることも。」
⸻
夕方。
館長は除籍を終えた棚を見つめていた。
数冊抜かれた場所に、小さな隙間ができている。
「寂しく見えるかい。」
直人は少し考えた。
「少しだけ。」
館長は微笑む。
「私はね。」
「ここに、新しい本が入る場所ができたと思う。」
その言葉を聞いた瞬間、直人の頭に、展示の余白が浮かんだ。
取り下げられた一枚。
白紙のまま戻された投稿用紙。
そして、書架の空いた場所。
どれも「失われた」のではなく、「次を迎える余白」だった。
⸻
閉館後。
書庫を出ようとした直人は、ふと一番奥の棚に目を留める。
普段は利用者が入らない一角。
古い郷土資料が並ぶ棚だった。
その背表紙を眺めていると、一冊だけ、番号札が他と少し違う色をしている本がある。
白い札ではなく、少し黄ばんだクリーム色。
何気なく近づき、背を読む。
題名はありふれた郷土史だった。
その下に貼られた古い整理番号。
「17」
直人は思わず立ち止まる。
「……。」
館長を呼ぶほどではない。
偶然かもしれない。
それでも、なぜか目を離せなかった。
書庫の静けさの中で、その数字だけが、少し昔からそこに待っていたように見えた。
⸻
創作メモ
今回は「除籍」を単なる図書館業務ではなく、「余白を作る営み」として描きました。
そして最後に、ご要望どおり「17」をほんのわずかに再登場させました。
ただし、まだ謎解きには入りません。
読者に「あの数字は終わっていなかった」とだけ思い出してもらう程度に留めています。
私としては、このくらいの距離感で数話に一度「17」の存在を静かに思い出させ、終盤で町の記憶と結び付ける方が、この作品の雰囲気を壊さずに回収できると考えています。




