それを踏まえて次回をお願いします。
それを踏まえて次回をお願いします。
ありがとうございます。
今回からは、あなたの「観察」という方針を意識して書きます。
つまり、恋愛らしい出来事は起こしません。
代わりに、「この人は自分の人生の中で少しずつ位置を占め始めている」という変化だけを描きます。
また、今回は「展示しなかった一枚」と「残したいもの」を一つの話にまとめます。
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第十七話「残さなかった一枚」
写真展は三日目を迎えていた。
来館者は決して多くない。
けれど、途切れることもない。
ロビーには、いつも誰かが立ち止まっていた。
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昼過ぎ。
店長は小さな段ボール箱を抱えて図書館へやって来た。
展示の写真を入れ替えるわけではない。
「これ、まだ預かってもらっていいかな。」
箱には展示に使わなかった写真が入っていた。
直人は事務室の棚へ箱を置く。
「結局、一枚も追加しないんですね。」
「うん。」
店長は少し笑った。
「展示しない方がいい写真もある。」
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紗季は箱の中をそっと覗く。
その中に、一枚だけ封筒へ入れられた写真があった。
他とは扱いが違う。
「これだけ別なんですね。」
店長は少し考えてから頷いた。
「見てもいい。」
封筒から現れたのは、ごく普通の集合写真だった。
町内会の集まり。
二十人ほどが並んで笑っている。
特別な写真には見えない。
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「これを展示しない理由って……。」
直人が尋ねる。
店長は写真を見つめたまま答える。
「この中に写っている人で、今も町にいるのは二人だけなんだ。」
静かな声だった。
「亡くなった人もいるし、町を離れた人もいる。」
「それなら、なおさら残した方が。」
店長は首を横に振る。
「写真は残せる。」
「でも、その人たちの事情までは残せない。」
少し間を置いて続ける。
「誰かにとっては懐かしい写真でも、誰かにとっては、まだ見る準備ができていない写真でもある。」
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誰もすぐには話さなかった。
写真は事実を写す。
けれど、その意味は人によって違う。
直人は改めて、その当たり前のことを考えていた。
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帰り道。
図書館を出たところで、紗季が歩調を合わせてきた。
偶然だった。
二人とも駅とは反対方向へ帰る。
「今日は暑かったですね。」
「そうですね。」
いつものような短い会話。
少し歩いてから、紗季がぽつりと言った。
「私、昔は全部残した方がいいと思ってたんです。」
「写真も?」
「はい。」
「でも最近は違います。」
直人は黙って聞く。
「残さないことも、その人への敬意なのかなって。」
その言葉は、店長の考え方によく似ていた。
けれど、まったく同じではなかった。
紗季自身が、仕事を通して辿り着いた言葉だった。
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しばらく沈黙が続く。
気まずくはなかった。
車が一台、ゆっくり通り過ぎる。
夕方の風が少しだけ涼しい。
「浅井さんは。」
紗季が前を向いたまま尋ねる。
「本は、全部残したいと思いますか。」
直人はすぐには答えなかった。
図書館で処分される本。
修復される本。
誰にも借りられない本。
いろいろな本が頭をよぎる。
「……全部じゃないと思います。」
そう答えた。
「でも。」
少し笑う。
「残したい理由より、手放す理由の方を慎重に考えたいです。」
紗季は何も言わなかった。
ただ、小さく頷いた。
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交差点に着く。
「じゃあ。」
「お疲れさまでした。」
二人は別々の道へ歩いていく。
振り返らない。
けれど直人は、自宅へ向かいながらふと考えた。
今日の話は、家に帰っても少し考えてしまいそうだ、と。
それは写真のことなのか。
本のことなのか。
あるいは、紗季が言った「残さないことも敬意」という言葉だったのか。
自分でも、まだ分からなかった。
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次の展開候補
今回は次の章への橋渡しになります。
1.展示に一通の手紙が届く(おすすめ)
展示を見た人物から、「飾られていない写真について話したい」という手紙が図書館へ届きます。ここから町の過去が少しずつ動き始めます。
2.展示終了の日
展示が終わり、後片付けをしながら二人は「展示は終わっても、町の記憶は終わらない」ということを実感します。
3.写真館の日常へ戻る
展示の熱が落ち着き、写真館には遺影や七五三、家族写真など、現在を生きる人々の写真が戻ってきます。過去を扱ったあとだからこそ、「今を残す」ことの意味が新たに見えてきます。
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今回、私が特に意識したのは、「相手を意識する」のではなく、「相手の言葉が自分の中に残る」という変化です。
恋愛感情を直接描かなくても、人は「この人の考え方を持ち帰ってしまう」ことがあります。
私は、この現象の積み重ねが、もし将来恋愛へ至るとしたら、その最も自然な土台になるのではないかと考えています。




