第27話 アルマダンの英雄
自室に戻って、カタリナさんから借りた端末を確認。
すると、以前とは違う形で検索が可能となっていた。
大量の情報が、一挙に溢れる。
「あれ? 情報が多いな? なんでだろう」
色々いじっていくと分かる。
これは、前の段階は敵地であったから、端末に残された情報だけが見ることが出来る状態だったらしい。
この膨大な量の検索から言って、今はネットワークに繋がっているみたいだ。
もしかしたらこれは・・・。
「連邦の領域に入ったからかもしれない。さっきのニュースもいきなり入ってきたもんな。そうか。テルトシア宙域に突入したことで、こっちの通信に入れたんだ」
自国領土内に入ったことで、ネットワークに接続できる状態になったのだと理解した。
「じゃあ、調べられるはずだ。アルマダンでさ」
俺は自分を調べる事にした。
◇
アルマダン。
銀河連邦領土。
第七銀河の惑星の名前。
鉄鋼星として存在する資源惑星である。
現在の人口は100万。この星を絶やしてはいけないと。移民によって形成されている。
◇
最初の方を調べ終えた。疑問が出る。
「移民? 元の人は?」
強調して書かれているから、元は現地の人たちが住んでいた証だ。
スクロールして続きを見た。
◇
アルマダンは、過去と今では違いがある。
それは、過去も鉄鋼星としての役割があったのだが、海賊に狙われた事件によって変化が起きた。
あの悲劇的な襲撃事件を境に、惑星の人々の性質が変わったのだ。
ここを知るためには、こちらをどうぞ『アルマダンの悲劇』
◇
「あれ? 別な言葉が。これは参照か?」
アルマダンを調べるには、重要なワードがいくつかあるみたいだ。
◇
アルマダンの悲劇。
宇宙歴1319年5月11日
この日、宇宙海賊たちによって、アルマダンが占拠されるという事件が起きた。
惑星を占拠したのは、計画的とは言えず、場当たり的な行動が多かった。
特に最初の脅しが宜しくない。
一撃目にして、多くの命を奪った。
その為に市民たちは大人しく従ったようだった。
海賊は最初に二千もの命を奪った。
この数が失われたのは、戦争以外では初の事だった。
当時、アルマダンの人口はおよそ一万。
小惑星に近い規模のアルマダンは、採掘作業の民とその家族しかいない星だったので、彼らが住む地域以外は手付かずであった。
それでも、少ない人数だから、治安も良く、採掘現場に近い場所で暮らしていて、市民たちは日々を穏やかに過ごしていた。
アルマダンの惑星位置も銀河連邦のど真ん中の第七銀河で元アバロン公国にあるために、どこに対しても位置的にも安全であると誰もが思う場所である。
国内に対しても、敵国に対しても、永世中立国に対しても、ここが攻撃を受けるとは一切思わない場所であるし、それに民間人しかいない環境の場所を攻めるなど、国際法としても違反だろう。
侵攻してきた帝国が、もしここを攻める事があったら、非難殺到の大問題となる。
そして、海賊の占拠が上手くいった直後、残りの人々を人質にして立てこもった。
彼らの要求は、莫大な金銭と銀河連邦が逮捕した海賊アイル・ギンビスの釈放だった。
海賊たちは二つの要求に対して返事がない場合。
一時間単位で、百の人を殺すと宣言。
このせいで、連邦の会議が難航して、最初の一時間が経過してしまった。
人の命と、海賊の釈放と金銭。天秤にかけても難しい判断だった。
だが、海賊の宣言の通りに、百の命が失われ、そして次の百も失う羽目となる。
判断が遅れた結果は痛い結果だった。
それで、これ以上の犠牲は。
連邦政府の責任問題にもなり兼ねないとして、交渉をする事にした。
しかしこれもまた上手くいかず、会話が途切れた時に、三回目がなされ。
計三百もの命が落ちる事となる。
ここで、大将が出動。マルドラン大将が王道の道を歩む。
交渉をして、解放条件を詰める。
深い話し合いが起きて無事解決するのかと思いきや、その策と同時に別のものが発動していた。
カーベイン大将が発案した民間人救出作戦であった。
マルドラン大将は惑星の表側から話し合いを呼び掛けた。
彼らから見て正面に、大型船を置いて、視線も集中力も正面に向けさせたのだ。
そして、その正面の裏の部分に、連邦軍のカーベイン大将は小型機三機を突入させた。
当時、早くに出動できるのは、近くの巡回ルートを回る新人だった。
戦闘実績はないが、訓練結果の良い三人組に、この潜入を任せたのである。
そして・・・。
続きはこちら『アルマダンの英雄』
◇
「あれ? ここで終わり? にしても酷い事案だ。海賊が民間人を虐殺したのか」
悲劇と呼ぶにふさわしい結果。
二千を失い。三百の散る必要のない人が散った。
「クソ。ムカつく事案だ。読んでて腹立つのも珍しい」
深呼吸してから、俺は続きを読んだ。
◇
アルマダンの英雄。
当初の作戦は、民間人に紛れ込んで、脱出の糸口を探る。
それが最初の計画であった。
計画通りに彼ら三人もそのようにして動くはずだったが、一人の男がその計画を中断。
大暴れすることで、残りの二人が市民を救出するという作戦に変わった。
のちにアルマダンの英雄と呼ばれることになるアルトゥール。
彼が、海賊船に一人で乗り込み。大暴れ。
中に、最低でも二百はいた船員の殲滅をしたのだ。
1対200。
ありえない数の違いをものともせず。
アルトゥールは勝利を収めた。
しかし、英雄とまで民間人に思われたのは、その結果ではなかった。
彼が無傷であった事が、英雄として認知される要因となった。
あれほどの数の違いの戦いを経ても、傷一つ負わずに涼しい顔で殲滅をしたらしいのだ。
だからこその英雄である。
そして、海賊船を占拠した事で、海賊は力を失う。
アルトゥールと共に潜入した二人が、無事に民間人を逃がしたことで、人質との交渉をしていた施設に残っていた残りの海賊たちが、好き勝手に出来なくなったうえに、逆にこちら側が脅せる立場になったことで、この問題が解決となった。
だから、直接的な交渉勝利の要因が、アルトゥールという事になっている。
関連はアルマダン財団。アルマダン孤児院。こちらからどうぞ。
◇
「は? 1対200???」
正直信じられない。数の違いを覆しすぎだ。
1対2でも凄いのに。
1対200って、桁が二つも違うよ。
「英雄じゃねえよ。もう化け物じゃん。アルトゥールさん!!!」
俺とは圧倒的に違いがあり過ぎる。
「どうしよう。同じことしろって言われたらさ」
出来るわけがない。
俺はそんなに運動神経抜群じゃないし、それに実戦経験がない。
「直接戦う事がないように、神にでも祈っておこう」
ここは運頼みだ。
これからの人生で、田舎のヤンキー大集合決戦が行われないように、神に祈るしかない。
「とりあえず締めのワードがあるから。ここを読もう」
最後のキーワードを見た。
◇
アルマダン財団。アルマダン孤児院。
双方同じ欄で扱うのには理由がある。
それが、財団が管理しているのが、孤児院だからだ。
アルマダン財団は、アルマダンに暮らしていた人々が、今後も連邦領域内で平和に暮らせるように支援する財団である。
事件でトラウマが残ってしまった人の心のケア。
故郷に帰る事も出来なくなった事で、新たな惑星での職業支援など。
色々な事で、アルマダンの人々の生活を守るのが目的の財団。
主な資金は寄付金と、政府からの援助金。
寄付は連邦の人々の善意である事が分かるが、政府の援助金は、お詫びの印と言われている。
政府は重要拠点の一つであったアルマダンにも護衛の兵士たちや最新の装備を置いておくべきだったのだ。
落ち度があったことを反省したのである。
そして孤児院。
アルマダンで生まれたのは、トラウマだけでなく、孤児もである。
二千もの命が一挙に奪われた際に、大人が死に、子供たちが取り残された家庭があった。
それでは戦災孤児と呼んでもおかしくない子たちだろう。
彼らが路頭に迷わないように、財団が孤児院を設立。
惑星ノストルに、孤児院を建てて、そしてそこにはアルマダン以外の孤児となった子供たちの受け入れ先となった。
図らずも政府は、アルマダンの事件をきっかけに、連邦の民の心を一つに出来た。
今までの分断社会のような形は薄らいでいったのだ。
連邦が連邦として成り立った事件とも言える。
◇
「つまり、三個の国が一個になったけど、本来の意味では一個じゃなかったところ。この事件で人々の心が一つとなった。こんな感じの解釈で良いのか?」
俺の予想はこんな感じだ。
共通の敵である帝国。これと完全に敵対している意識を持っているのは、国境を接していた元エルストア民主国だけで、その国の裏の位置に当たる二国家は、協力体制の中にあっても、本当の意味での危機感が無かった。
でも、海賊が占拠したアルマダンの事件をきっかけに、共通の敵を認識したから。
人々の想いが合致した。
「これでいいのかな。この連邦の世界の感じは」
俺が生きる連邦は、俺が知る限りでは複雑にしか思えない。
一つの命令系統で動ける。
帝国の方が、強いんじゃないか。
もしかしたら、連邦が複雑な分に、帝国よりも弱いのでは?
「俺の疑問は、実際に体験しないと解決しないな」
俺はアルトゥールさんを演じて、この世界を知らねばならない。
そう思った瞬間だった。




