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天星の宇宙 銀河の三英傑の一人は別の銀河の高校生  作者: 咲良喜玖
第一章 銀河の三英傑の邂逅

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第13話 デルタアングル宙域戦 救援

 戦争が始まってから30分が経過。

 戦況は変わらない。

 互いのビーム砲による攻撃は激しさを増す一方で、艦の破壊までは行われず。

 せいぜい負傷で留まる艦隊が多い。

 両軍が、あれだけのビーム砲の応酬をしてもだ。

 撃墜数が10隻で、被害数がたったの5隻である。


 「これだと航行不能になった数に違いがないな。ほぼ互角と言っていい。三十分経って、唯一の収穫か・・・情報が少ないな。もう少し知りたいな」


 戦争のセオリー。

 被弾をしたら下がり、ビームコーティングが修復されれば前に出る。

 これの繰り返しが行われるのが艦隊戦である。

 この動きは非常にスムーズで、この世界の人々に戦略や戦術がないけど、この動きには規律の様なものがある。

 

 ってかさ。

 予想通りだったよ。

 これだと、原始人と変わらない戦い方だ。

 まあ百歩譲って、中世っぽいと言ってもいいか?

 例えば・・・なんて、そんなんどうでもいいけど。

 こんな戦闘方法なら、数の多い方が勝つか。

 もしくは艦隊の性能が良い方が勝っちゃうじゃないか。

 なにこれ!?

 なんで高度な文明なのに、ひのきの棒を振り回してるだけなの!?

 あんたらの脳はどこに繋がってるんだよ!


 と愚痴をもっともっと言いそうになったところで、カタリナさんが入れてくれたお茶を飲んだ。

 ちょっぴり温くなってるから、考え事をしすぎて時間が経ったことが分かった俺だった。

 意外と冷静であるなと思った。


 

 ◇


 開戦から一時間が経過。

 戦場に変化が起きているのに、連邦が攻め手を変えなかった。

 左右の戦い方に変化が起きていない。


 「ちっ。両大佐は、戦いに夢中でこの結果に気付いてない。些細な変化だから、現場で戦う二人ではわからないんだ。これだと全体を見る人が指示を出さないと」


 両大佐の軍が少しずつ負け始めている。 

 その理由を誰も気付いていないようだ。


 「おいおいおい。少将はこれで勝てると思ってるのか。明らかな変化だ。なんで指示がない! 大佐を見殺しにする気か?」


 モヤモヤする違和感は、今から十分前に始まっていた。


 開戦時にあった兵力差は。

 連邦軍の右翼5000に対して、帝国軍の左翼5000の互角状態だ。

 なのに今は。

 連邦軍の右翼3900に対して、帝国軍の左翼4900となっている。

 この数の差が生まれたこと自体がおかしい。

 それも前兆から考えると、僅か十分でこの結果なのも輪をかけておかしい。

 

 さっきの情報からして、戦闘艦の性能というものは、ほぼ互角とみていいんだ。

 なのに、この艦体の減り具合は、十分では起こりえない。

 異常事態と言えるだろう。

 数と性能、それに戦う際の戦術にも差がないのに、これほどの差が出た。

 ということは、相手の大将が、何かを仕掛けた。

 どこかに戦略が存在する結果だと思う。こちらも何か手を打たねば・・・。

 

 それにだ。

 フローシア大佐の左翼も変だ。

 数が2000も違って、こちらが有利なはずなのに、敵を撃破できずにいるんだ。

 戦場が膠着状態に陥っている。

 相手に上手く躱されているからか?

 いや、どことなく、のらりくらりと攻撃を躱されている感じがするな。

 押しと引きが上手い気がする。



 「これは、相手に何かあるな。ここは、さらに押すことを考えるよりもだ。一度引いて戦場を見極めた方がいい。少将。一時撤退をした方がいいですよ。絶対・・」


 俺の考えがまとまりかけた時。

 

 「我が軍、救援に出ます」 


 前触れもなくタルマーのおっさんの声が聞こえた。

 オープンチャンネルを開いてから、救援のメッセージを残したらしい。

 

 独立友軍のような形の俺とケインズ中佐とタルマー中佐。

 この三人は少将の指示がなくても、ある程度までは動く事が許可されている。

 だから彼は現状ピンチのトリスタン大佐の救援に向かってしまった。


 だが、この判断はいけないと思う。

 ここは我慢だと、俺の勘が言っている。

 だって相手の戦略が読めていないのに、ここで敵に突っ込んでいったらだ。

 今のトリスタン大佐と同じように罠に嵌るだけなんだぞ。

 それじゃあ、無意味だ。同じように艦を減らすだけになってしまう。

 あのおっさん。馬鹿なのか???


 「おっちゃんは駄目だろな。ここであそこに首突っ込んだらさ」


 そこから間もなく、救援に向かったタルマーのおっさんの艦隊は、一気に壊滅状態になった。

 トリスタン大佐を守るために前線に出たのはいいが、彼の部隊はトリスタン大佐よりも崩れるのが早かった。

 これは実力差だ。

 トリスタン大佐が指揮している艦隊だったから、負けている戦場でも、あの程度で収まっていたのかもしれない。

 タルマーのおっさんの実力じゃ、艦隊がもたなかった。

 こういう結果だろう

 

 彼の生死は不明。

 俺は、おっさんの無事が心配になったが、今はそこを気にする時間がない。

 刻一刻と変化する戦場に対応せねば・・・。

 

 しかしここで俺は、おっさんのおかげで、相手の一手に気付けたのである。


 「おっちゃん、あんたの勇気は無駄にはしない。俺が代わりをやるよ」



 ◇


 タルマーのおっさんの艦隊は、すぐに壊滅してしまったが、別に突撃自体に悪い要素はない。

 酷い結果だったとしても、彼自体の動きはそんなに悪くなかったんだ。

 敵の側面を狙いつつ、トリスタン大佐の左翼の援護から入って、大佐よりも前線に出て、盾になろうとする動きだった。

 これは間違いじゃない。救援ってのはそんなもんだ。

 

 だけど、あっちの軍はタルマー艦隊の動きを全て読んでいたような動きをした。

 攻撃してくる位置を予知していたかのように、相手の艦隊の船首が、しっかりこちら側を捉えていたのが、気になった。


 「あれはまさかだけど。こっちの行動を把握しているのかもな。よし、イネス!」

 「はい」


 俺は通信専門のイネスさんに指示を出す。


 「今のタルマー艦隊の通信記録を見て欲しい。攻撃の指示。攻撃の位置。これらの記録はあるか!」

 「……遡ります。10秒下さい」

 「頼む」


 情報が欲しいから、彼女に依頼した。


 「少佐。そのようです。タルマー中佐からの指示がご自身の全艦隊にありました。トリスタン大佐の左翼の脇から、右に30度の角度で突撃を開始する。そこから、攻撃命令が細かくあります。今、記録をそちらに」


 俺の方のモニターに記録情報が出る。

 音声から出た指示と、攻撃目標の両方が記録されているので、わかりやすく編集されていた。

 イネスは、やっぱり優秀な通信士だ。


 「わかった。ありがとう。仕事が早くて助かるよ」

 「いえ。どういたしまして」


 イネスはちょっぴり戸惑って、ちょっとだけ嬉しそうな顔をした。

 

 そうか。こういう時って、あんまり部下を褒めたりしないのかな。

 でも。ま、いっか。

 俺は俺らしくでいこう。

 もうさ。俺が少佐らしくを意識して、このまま戦闘の指示を出すなんて無理だわ。

 そんなところに気を遣って、俺の頭の回転を鈍らせるわけにはいかない。

 ここはもう戦場だからさ。自由にやるよ。アルトゥールさん。

 俺、皆と共に生き残る事を第一優先にする。

 これを目標にしないと駄目な気がするからさ。



 ◇


 頭を整理するために戦場を確認。

 モニターに映し出される配置映像と、実際の戦場の様子のカメラを見て確かめる。


 左の戦場は……まだ耐えられるな。

 これはまだ膠着状態が続くと見た。

 数の有利があるのに、フローシア大佐の猛攻が、ひらりひらりと躱されている現状があるが、これは負けてはいないので、良しとした方がいい。

 

 これは恐らく策じゃない。

 あっちの右翼の将が、中々の曲者であるんだ。

 俺のイメージでは囲碁だな。

 陣取りが上手い人だ。

 敵を嵌めこんだり、味方が下がる位置をキープするのが上手い。

 そういう手練れがあっちにいる。

 だから、逆にそのまま戦わせた方がいいはずだ。

 彼女には、このままを維持してもらって、戦場の左側を気にしない方向でいきたい。


 

 さて、問題は右翼だ。

 トリスタン大佐の艦隊がまずい。

 俺の予測では、あと40分もあれば全滅する。

 そんで、彼の艦隊が全滅すれば、軍全体が負ける。

 逆に包囲戦を向こうが仕掛けてくるだろうから、ここは是が非でも助けに行かないといけない。

 しかし無策では駄目だ。

 さっきのタルマー中佐のようになってしまう。

 でもそれは罠が仕掛けられているから起きた事だ。


 俺はそこに気付いている。

 よし! やるしかねえ。

 勇気を出して、俺が行かないとさ。

 この戦争、ここで終わるわ。


 「はあああああああ」


 俺は気合いを入れた。皆の顔がこっちを向いたけど、それも気にしない。

 俺は俺を奮い立たせないと、ここで決断が出来そうにないからな。


 「よし。やるぞ」


 バチンと顔を叩いて、指示を出す!

 何事??

 皆の顔色だけで、そんな感じの事を言いたげだと気付いた。

 


 ◇


 「イネス!」

 「はい。少佐」

 「ここから音声を繋げ。アルトゥール艦隊に指示を出す」

 「わかりました。三秒後に繋げます。少佐の準備がよろしければ、モニターのスイッチを押してください」

 「ありがとう」


 彼女が言ったように三秒後、俺のモニターの画面に赤いボタンが出現。

 ボタンを押すと全艦隊に声が届くように設定されていた。


 「アルトゥール艦隊の艦長たち。これから我が艦隊は、トリスタン大佐の救援に向かう」


 まずは宣言から、次に具体的指示だ。


 「そして今から、移動指示と攻撃位置は文字。攻撃のタイミングだけ音声とする。いいな。事前に渡した動きをするつもりでいてくれ。ここは気を引き締めてくれ。皆、準備を頼む」


 ボタンを再度押し、音声を遮断した。

 そこから俺はウーゴ君を呼ぶ。


 「ウーゴ。事前の陣形は大丈夫か」

 「…は、はい。少佐、艦隊運航データは作成済みです。これは各艦長にも伝えております」 

 「よし。戦闘中、仲間の艦が負傷とかしたら、君の指示だけで配置を変えていい。俺にいちいち許可を取らなくていい。俺は君を信じる! 運行に関して、全て任せた」

 「・・・あ、は、はい。わ、わかりました。やってみます」


 ウーゴ君は椅子に座りながら緊張した面持ちで俺に敬礼してきた。


 「俺は全体の指揮だけに集中したいからね。君なら出来る。信じてるから任せた」

 「はい! お任せを」


 ウーゴ君の顔が引き締まった。

 俺はイネスに顔を向ける。


 「では、イネス。もう一度だ。今度は艦内で音声通信を頼む」

 「はい。準備します・・・・どうぞ」


 今度は、俺の声が旗艦アーヴァデルチェに響く。

 艦内アナウンスである。


 「我が艦の仲間たち。これより、我々は大佐を救援するために突撃を開始する。だが、俺の指示を絶対に守って欲しい。この突撃は防衛の突撃である。攻勢に出るわけではなく、こちら側の救援を主体とした。大佐の艦隊の回復をメインにするんだ。だから、気持ちを前に出さずに、落ち着いて行動してくれ。敵を追いかけたりして無理はしない。いいな。俺たちの目標は、大佐の艦隊を救うことだ。これが目標だ。ではいくぞ」


 アルトゥールさん。

 俺に、あなたの勇気をください。

 戦場にいるのが、超怖いって思ってるんですけど。

 俺、頑張ってみせますからね。


 「アルトゥール艦隊、出撃だ!」

 

 震える手を誤魔化しながら上にあげて、俺は勇ましい声を出したつもりだった。

 どんな声だったんだろうか。

 自分でも分からない。

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