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天星の宇宙 銀河の三英傑の一人は別の銀河の高校生  作者: 咲良喜玖
第一章 銀河の三英傑の邂逅

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第12話 デルタアングル宙域戦 偽りの英雄が本物へと歩み始める

 こちらもあちらも艦隊がずらりと並ぶと、さすがに壮観だと言わざるを得ない。

 艦隊一つであっても迫力があるというのに、これだけの数が揃ってしまえば、何もせずとも圧力が生まれている。

 これほどの数が惑星を囲めばひとたまりもないだろう。

 でも、星の陥落ってものは難しいって書いてあったんだ。

 だから対宇宙兵器って、よほど凄いもので、頼りになるものなんだろう。

 実物を見てないから分からないけど、平気の中でも最強クラスだと認識しておこう。


 「それにしても、いったい。いつになったら戦いが始まるんだ。にらみ合いの状態が続いてから?……どのタイミングで開戦にいくんだろうか。こっちが侵略側だから、こっちから始めるのがしきたりがだったりするのかな。作法があったりするのか?」


 モニターを見て確認。

 敵も味方も配置が済んでから一歩も動いてない。

 疑問点がいくつかあっても、俺は誰かにその事を聞くことは許されない。

 少しずつ学んでいこう。


 えっと、そうだな。

 いつ始まるか分からない状態では、戦闘の入りが上手くいかないだろう。

 とりあえず士気をあげたい。よし。


 「イネス。アルトゥール艦隊に通信だ」

 「はい。少佐。音声ですか?」

 「いいや、映像でいく。俺を映してくれ」

 「わかりました」


 メインモニターにあるカメラが俺を捉える。

 アーヴァデルチェの様子は、カメラの向こうにいる皆に見えるだろう。

 

 「アルトゥール艦隊の艦長たちよ。それと、我が艦隊の大切な仲間の諸君。少し話を聞いてほしい」


 モニターを見てくれているのなら、皆に伝わるはずだ。

 俺の意気込みがね。

 

 「いよいよだ。皆、気を引き締めていこう。おそらくは、この戦場。かつてないほどの大戦となるだろう」


 資料にある情報と照らしても、本格的な二大国の戦いだと思う。

 今までの小競り合いじゃない感じがするんだ。

 前は国が出来上がっていく過程でのぶつかり合いだから、この規模では戦えなかったんだろう。


 つうかさ。

 いや、愚痴を言うけどさ。

 なんで、こんな大変な時期に俺は転生したんだ? 

 黎明期みたいなさ。

 七国が揃っている頃の戦いならこんな感じじゃなかったはず。

 でも。まあ贅沢は言わない。

 せめて三国に整うくらいの時代くらいに転生させてくれよ。

 なんで、ぶつかり合う時代に転生したんだよ。神様!!!

 俺にまた死ねってか!

 

 はい。一通りの愚痴を言ったので、切り替えます。


 「私の少佐としての初任務となるが、皆を上手く導けるように努力する。皆と共に最後まで戦う事も宣言しておく。共に勝とう。皆の力で」


 この宣言を聞いて、安心してくれたら嬉しいな。

 アルマダンの英雄とか。

 意味わからん英雄名がついているアルトゥールさん。

 そこを調べても、その情報が無かったからよく分からないけども、なんかの英雄らしいんだ。

 その力も借りて、彼らに勇気を!

 神様・・・いいや、アルトゥールさん。あなたの力で皆を導いてくれ。

 

 

 「以上だ・・・・・いや、すまない。足りなかった・・・ここで勝って。皆で生き残ろう。以上だ」


 な~んて格好つけてるけど、俺の手はかつてないほどにが震えている。

 顔をギッと睨んだような表情にしておかないと、鼻水を垂れ流しそうなくらいにド緊張してます。

 背中の汗だって、ダラダラと流れてるんだ。

 軍服脱いだらサウナに入った人みたいになるだろうね。


 まあ仕方ない。だってさ。

 俺ってただの高校生なんだよ。

 戦争なんて出来るわけない。

 ていうか。日本人だって何十年もしたことがないんだよ。

 俺のじいちゃんだってしてねえ。

 話に聞いているだけで、体験してないんだ。


 俺、戦争なんて歴史の授業とかでしか聞いたことないんだって。

 どうしよう・・・どうしよう。

 落ち着け俺。

 深呼吸だ。

 

 『フー、ハー、フー、ハー』


 あれ、両方吐いてねぇか。なんだか目眩してきたわ。

 再度深呼吸だ。


 『スー、ハー、スー、ハー』


 これでいいはず。ちょっと落ち着いて来たか。



 めちゃくちゃに緊張している俺は、一人勝手に混乱していた。

 でも周りには悟らせないようにしている。

 俺の緊張を移したら駄目だからな。

 それに俺が艦長だ!

 弱い部分は全体に影響してしまう。

 ここはどっしりとしてないと・・・。



 ◇


 

 両軍の艦隊数は連邦3万3千。帝国2万。

 約5万の戦い。


 これは会議でも言っていた通りの数で、狂いはなさそうだ。

 事前の情報が間違えていないのはよかった。戦略や戦術が見えない分、情報が正しいだけでも安心感がある。

 それに、この感じだと少将が言っていたままだ。

 相手も同じ考えだ。

 左右翼に重きを置いて、全体が横陣形の配置だ。

 これは、両軍ともに、左右で勝敗を着ける気だな。


 「なるほど。やはり相手にも陣形という考えがない。だとしたら、戦いはどういう感じで進むんだ。やっぱりただの殴り合いをするのか。え・・・野戦で???」


 これだと、互いの左右が前に出て、真正面での撃ち合いを重ねそうだ。


 「横陣って戦場を動かしにくいぞ。代り映えしない景色が続くからな。どこかで動き出す瞬間をしっかり見極めないといけないな。流れを持っていかれる恐れがあるな」


 自分の前にあるモニターで戦場を確認した。

 イネスさんとカタリナさんに協力してもらって、俺はモニターの使い方をマスターした。

 このモニター。

 タッチパネルのような操作感覚があって、色々切り替えることが出来て便利なんだ。


 今は相手方の配置と、こちら側の配置図を眺めている。

 地図とデータで、ここを見ると圧倒的な物量の違いを感じる。

 一万以上の差は大きい。数は戦争では絶対の正義だろう。

 だからなんで相手は野戦を選んだんだ?

 疑問がどんどん疑念になっていきそうだ。



 それと、どことなくだが、ここに来て艦の皆の表情に揺らぎがある。

 もしかしたら、この数の差を目の当たりにした事で、連邦軍の兵士の心の余裕に繋がったか?

 そうなると危険だな。緊張感は持ってないと、いつ戦況をひっくり返されるか分からないのが戦いなはずだぞ。

 ・・・・ああそうか。本格的な二大国の決戦は初だから。 

 戦いに心を持っていくのが難しいのか。


 よし。俺だけでもここは引き締めておこう。

 長がしっかりしていれば、自ずと皆も変わってくれるはず。


 ああでも、緊張で胃が吐きそうなくらいに痺れてる。

 トイレに行って吐きたいくらいだわ。

 でもこれは恐怖からじゃない。

 この戦場の怪しさに震えているのさ。

 そうだ。ここに来て直感が囁いている。

 なんか変だとね。

 


 いや、前にも思ったけど、もしもとなって考えてみよう。

 敵の指揮官としての立場で考えるんだ。

 それだとすぐに思うのが、こんな広い場所での野戦は選択しないんだ。

 ここ、見通しが良過ぎるよ。

 相手の動きも、自分たちの動きも、両方が見やすい環境だ。


 だから、やっぱり俺たちの背後あたりのあそこ。

 デルタアングルの入り口に押し込むのがいいはずだ。

 あそこに蓋をして、戦うのが一番楽なはずだわ。


 もしくは、俺たちを引き寄せ切って、あっちの奥の惑星で戦うのが、次点の戦い方なはず。

 それなのに、ここでの野戦を選択した。

 一番守るのが難しい場所にわざわざ移動しているなんておかしい。

 これはどういうことだ。


 現場を見ると分かるんだ。

 なんとなくだけど、相手の司令官の考えってのは、かなり深いのかもしれないぞ。

 ただ単に野戦で戦う事が目的じゃないのかもしれない。

 もっと別の戦略が存在しているのか?

 例えば、全滅させる罠をどこかに配置しているとかさ。

 ほら、デルタアングルで押し込む形の場合と、引き寄せで戦う場合。

 この二つの場合だと、連邦軍は途中で逃げられるんだ。全滅させることは不可能だ。

 ただ、野戦だと違う。ここに凄い罠があれば、一網打尽で全艦隊を沈める事が出来る。


 ・・・・嫌な予感だけど、この考えが合ってる気が・・・・。


 うん。だってさ。あっちの数が少ないのもおかしいんだわ。

 なぜ、その数で、野戦を選択できるんだ。

 俺がやってきた覇王伝でも、戦う選択肢が取れないほどの戦力差がある状況だと、無理できない選択をするもんだ。

 そうだよ。事前にそういう状況を把握できるならなおさらだ。

 こっちもあっちも、今の状況を把握しているはずで、それなのに、策も講じずに戦場に艦隊を並べるだけなんてありえないと思う。

 


 待てよ。もしかして。帝国の艦隊の性能が良ければ、互角以上に戦えてしまうのか?

 いやそれでも、数の違いってものは大きいと思うんだ。

 だから、こういう数の差が生じた時ってのは、そもそも戦闘をしないもんなんだよな。


 他の手段で戦うはずだ。例えば、外交戦略とかで、はぐらかすはずだ。

 停戦を持ちかけたり。

 それが出来ないなら、兵数をごまかして事前に戦いが起きないようにしたり。

 または、こっちの兵器が最新のものだよとかで、脅しにかかる。

 俺ならそうする。


 相手に戦っても無駄なんだというアピールを少なからずやるはず。

 ハッタリでも何でもかまして、戦争を起こさせないようにするはずだ。

 でもその形跡は資料になかった。

 という事は、何か切り札を隠し持っている可能性がある。

 戦争に踏み切った背景には、必ず何かの隠し玉が存在している。

 気をつけないと。

 

 この戦場には絶対に何かがあるんだ!


 

 ◇



 オープンチャンネルで、回線が開いた。

 メインルームの一番大きなモニターに、少将の顔がでかでかと映った。

 カメラ近すぎ。

 と思った俺だが、ここはすぐに立ち上がり、カメラの向こうの少将に敬礼をする。

 

 「諸君。いよいよ開戦だ。銀河連邦の勝利のため。皆、力を出し尽くせ。先陣はフローシアとトリスタンが取り仕切る。両部隊同時に進軍を開始だ」

 

 全ての戦闘員が、モニター越しに敬礼。

 俺も敬礼をしたけど。

 皆のやり方を真似したからか、少しぎこちない。

 許してくれ。少将!

 失礼なやり方かもしれないから、あとでカタリナさんにでも習っておきますから。


 ここまで気が回らなかった俺の落ち度です。



 ◇ 


 戦争が開始となる。

 少将の合図で、両翼のトリスタン・フローシア大佐の前進が始まった。


 発進直後からの艦隊の動きが滑らかで、淀みのないスムーズな前進を見せる両艦隊は、よく調練された動きだと分かる。

 ゲームと同じに考えてはいけないのかもしれないが、あそこまで真っ直ぐ動かすだけでも難しいはずだから、あの二人が優秀な事がよく分かるわ。


 「猛将と勇将か」


 あの素晴らしい突撃体制を作れる人たちの中身がさ。

 世紀末筋肉おっさんと、妖艶誘惑美女だとは誰も思わないだろうな。

 人は見かけによらず。

 これを肝に銘じて生きていこう。


 「・・・・でも敵も甘くないか」


 二人の突撃に合わせる形で、向こうの両翼も上がる。

 帝国も、簡単に包囲攻撃はさせまいとしたのだ。

 急速発進同士で、大激突が始まろうとしていた。



 両軍の始めの仕掛けから十分。

 フローシア大佐とトリスタン大佐が、ほぼ同時に敵軍と接敵した。

 入り乱れるビーム砲の数々。

 被弾数も増えていくあたりで、戦闘の激しさが増していくように見える。

 

 俺は自分の前にあるモニターで戦況を確認した。

 操作して情報を選んでいく。


 「なるほど。この赤い三角が帝国だな。それで青い三角が連邦軍を示してるってわけだ。う~ん。ゲームとほとんど仕組みが同じだな。戦闘報告が、リアルタイムで結果に反映されているわけだ。覇王伝の宇宙版をしてるみたいだな」


 PCの前で、ゲームをする感覚になりそうだったが、それではいけない。


 「これは感覚がバグるぞ。ふぅ~。これは戦争だ。ゲームじゃない。これは戦争だ。気合いを入れろ。本物の命が散っているんだ・・・」



 気を引き締めて考えをまとめていく。

 

 俺の目で直接戦場を・・・って言うのは出来ない。

 遠巻きなので詳しくは観察できないんだ。

 だから、こちらの記録を見るにわかる。

 結構激しい攻防を繰り広げている。

 

 連邦軍左翼5000と敵軍右翼3000。

 連邦軍右翼5000と敵軍左翼5000。

 全砲門を開いての攻撃が飛び交う。

 実弾で潰される場面もあって、激しさは増すが、やっぱりビームが被弾しても一撃必殺となるわけじゃないようだ。

 砲撃を受けても艦隊が結構生き残っている。

 

 「えっと確か。この間調べたのが・・・メモ帳を取り出して・・」


 俺はメモを取り出した。

 

 俺専用のメモ帳。

 こんなに文明が発展しているのに、俺だけ超アナログであった。


 「よし。あった。一撃ビーム砲が当たったくらいでは、戦闘艦は沈まない。戦闘艦にはビームコーティングと呼ばれる防御装置が施されているため、直撃を受けてもこのコーティングが剥がされるだけである。ただし一度目はだ。張り直されるまでは無防備となる」


 そうだった。そんな感じの勉強をしたはずだ。

 ダメダメ、忘れちゃいけないよ。しっかりしろ新!

 でも緊張感でぶっ飛んじゃったか。


 「なので、戦闘艦を撃破するためには、ビームコーティングを剥がした場所に、攻撃を当てることが必要だ。最低でも二発が必要ってことだな」


 なるほど。だから、ビーム砲の一撃が当たってしまった戦闘艦は、こんな感じで、裏に回すわけだ。

 隊列の先頭または中盤あたりにいる艦が被弾した場合。

 無条件で後ろに下がっている感じがする。 

 前衛と後衛でスイッチする感じで戦うみたいだ。



 そうだな。覇王伝で言えば、負傷兵の扱いをするみたいだ。

 あれは、もう一度戦ってもらうための。

 再度継続的に戦闘させるための処置なんだ。

 覚えておこう。

 俺はこうやって実戦で学んでおかないとな。

 誰よりも知識がないんだ。

 少佐なんて偉そうな役職をやってるくせに、この中で一番の一兵卒なわけだよ。

 つうか、どうせだったら一兵卒からやらしてくれよって話だわ。

 

 神。何考えてんだよ。まったく!


 ◇


 何か細かい変化でもいいから何かの糸口が欲しい。

 だから、徹底的に戦場を調べていると、後ろから声を掛けられた。


 「少佐。はい、お茶ですよ」

 「あ。ありがとう。カタリナ君」


 カタリナさんが俺の椅子のサイドにある小さなテーブルにお茶を置いた。

 モニターから目を離せない俺は、彼女を見ずにお礼を言った。


 失礼だけどごめんなさい。でもここは、戦場なんだ。

 ゲームであったら、一瞬でも振り向いてお礼を言うけどさ。

 ここは戦いだからね。ごめんよ。


 こんな感じに既視感がある。

 『あんた。何も飲まずにゲームばっかりするんじゃないよ』って、母ちゃんに言われてた時と似たような感じだ。

 でもそれよりも今は真剣だ。人の生死が関わっているからさ。


 「いえいえ。お礼はいいのですが・・・・あの~」


 話には続きがあった。 

 さすがに、これは振り向かずにはいられない。

 彼女の顔を見る。


 「え? なんですか?」

 「少佐。お行儀が悪いですよ。椅子にはちゃんと座ってくださいよ」

 

 今の俺の座っている格好は、ちょっとよろしくない。

 とんでもなく立派な椅子に胡坐をかいている状態なんだ。

 よくない事は分かっていても、俺はリラックス状態でいたんだ。

 この恰好が最も頭を働かせやすい態勢なんだよ。

 昔からこのスタイルでゲームをやらしてもらってたからさ。

 癖が抜けないんだ。

 

 いやいや、ごめんね。

 カタリナさん。この状態だと、集中力が増すんだよ。


 「すまない。これでいかせてくれ。これは集中する時の格好なんだ」

 「ええ。駄目ですよ。やっぱりちゃんとした方がいいかと思います。地に足を着けてですね・・・・」 

 

 ごめんね。お母さん。

 って言いたくなるほど、この人、お節介だよ。

 

 なんかさ。超絶美人なのにさ。

 なんだか俺の母ちゃんみたいにお節介なんだけど。

 そう言えば、今までの行動もお母さんみたいだったわ。

 

 「すまない。本当にすまない。今、目を離せないから、あとにしてくれ」

 「もうしょうがないですね。少佐。今日だけは許しますよ。今度からは直してくださいね。いいですね」

 

 なんですか。

 その口調。やっぱお母さんじゃん。


 集中力が切れそうになりながら、俺はモニターと睨めっこした。


 


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