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ハグ
突き放すような、けれどほんのりと、憐憫も込められている、そんなエイプリルの言葉に、こぐまは返す言葉を見つけられずにいる。
エイプリルは彼の反応に、彼に興味をなくしたか、こぐまに背を向けた。もう帰るつもりなのだろう。見送りを、と身体に力を込めようとした瞬間だった。
「……っ」
「悪いな」
エイプリルがこぐまの目の前に立っている。
扉からこぐまのいる位置まではわりと離れていたが、彼女はこぐまが瞬きした瞬間には手で触れられる距離にいた。
吸血鬼、という人外の存在であるということを、忘れていたわけではないけれど、いきなりそういう面を見せられると驚いてしまう。
「何もしない。それは変えねえよ。あたしはただの、たまの訪問客。それだけだ」
目を逸らすことを許さない、エイプリルの意思の強さを感じる深紅の双眸。それを至近距離から見つめていると、ふわりと、こぐまの身体は程好い温もりに包まれた。
抱き締めてくる力は、存外優しい。




