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目覚めた姫は夜の散歩へ
エイプリルと何を話していたのか、眠ってしまうとその内容は、ぼんやり溶けて消えてしまう。
いつものことだ。
満足感だけが胸に残るから、無理に思い出すこともせず、ミザールはベッドから抜け出た。
カーテンの締め切られた部屋は、照明も落とされている。耳を澄ませても聴こえる音は少ない。
まだ、夜だ。
サイドテーブルに置いた、電気式のカンテラを手に取り、置き時計の前まで近寄って時間を確認した。朝になるまでいくらかの余裕がある。
吸血鬼といえば夜の王だが、ミザールの生活リズムは、共に暮らしている人間と変わらず、朝に起きて夜に寝る。この家の者達は、ミザールが人間の子供であるかのように接してきた。どの魔法使いもそうだった。
別に寝るタイミングによって涙の効力が変わるわけでもないのに。
おかしな所は何もない、くすりとも笑わずに、ミザールは部屋の外へ──夜の散歩へ出掛ける。こんな時は共犯者が欲しかったが、現れる者はいなかった。




