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期待はずれ
控えめなノックと共に、使用人が部屋に入ってくる。彼女が押しているカートの上には、三人分のアップルパイが乗っかっていた。
「今回のおみやげ?」
「ああ。■■■■■って所に行ってよ。現地で食べたら旨かったから、お前にも食わせたくなってよ。好きだろ、林檎」
「大好きよ」
どこか冷ややかさのある顔に笑みを浮かべ、ミザールがそう口にすれば、エイプリルは満足そうに頷く。
先ほどまでしていた会話は続かない、もう別の話が始まる。切り替えろ。こぐまも笑みを浮かべ、使用人が皿と食器を並べていくのを静かに待ち、使用人が出ていけば、さっそく食べ始めていく。
「甘さがしつこくなくて、さっぱりしているわね」
「だろ。あの国に住んだら毎日でも食いに行くわ」
「私も、毎日食べたい。こぐま」
呼び掛けられ、彼はほんのり期待しながら返事をする。
「現地に行って、レシピを調べて」
笑みを維持するのに必死で声を出す余裕はなく、こぐまはただ頷くだけだ。




