2/31
オリバー
絹のように滑らかな長い髪は、雪のように白い髪。
頬は薔薇色に、瞳は熟れた林檎の色に、唇は血のような赤色に染まっている。
服は都会のゴスロリ専門店の通販でいつも頼んでおり、その短い手足を、未発達な小さな身体を、赤や黒系統のゴスロリファッションに包み込んでいた。
──白雪姫。
屋敷の者は皆、ミザール・シェフィールドをそう呼んでいる。
「オリバー! 駄目よオリバー、もっとゆっくり!」
さて、白雪姫はその可憐な顔を苦痛に歪めている最中であった。
「一緒に走ったらいいのに」
ミザールの後ろを歩く星影こぐまは、微笑ましそうに苦戦しているミザールを眺めていた。
「代わりなさいよ、こぐま!」
「駄目だよ。たまにはオリバーと仲良く遊ぼうね!」
「──私の犬じゃないのに!」
オリバー。御年二歳になるオスのゴールデンレトリバーだ。豊かな尻尾を嬉しそうに振り、前へ前へと進んでいく。
「こぐま!」
「薔薇園に着くまではそのままだよ」
「もう!」