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22,宇宙への道が遠のく?

  また人が減る。

今度はパイロット育成司令コマンダーのブラウンが出ていくという。

「去って行く人々が多いが、役職の人間が去っていくのは効くな」

  コマンダーブラウンというと総司令フランシスに次ぐ役職。

「ああ、ここはもう終わりだと告げらているようだ」

  みんなが愛用するパブ・グランデ。そこに集まり、去っていくブラウンの送別会に参加したスタッフが囁きあっている。


「重要ポストがいなくなるとなると、このプロジェクトはこのままでは済まないな」

  レイが、みんなに別れの挨拶をしているブラウンの姿を見つめつぶやく。

「でもブラウンは別の民間企業に行くのだろ?」

 教え子であるパイロット訓練生も送別会に参加しており、その中のインド人のバルがいう。

「ブラウンはタイミングがいい。上手く繋がっている」

バルの言葉を受けて、中国人・ユアンが答える。

それはアメリカで新しい民間宇宙事業が出来ると最近、噂されているからだ。

「講師の方も、動揺している。羨ましいと媚を売るスタッフが挨拶に行っている」

 レイの言葉通り、ブラウンに挨拶する人間の列ができ始めた。

「これは、まだまだ続くわね。・・・お金が相当、厳しいらしいから」

 面白がってユアンとバルが囁きあう

「インドは頑張って追加融資、出したよ」

「たった少しじゃない。まだまだ全然足りないわよ。きっと」

「それじゃ中国は出したのか?」

「うちの国はお手上げ状態。国の災害が多すぎて、外部にお金が回らない」

「ブラジルも去り、イスラエルも去る。ジンやケケが正解だったということか」

  ユアン、周りを見回し、

「みんな冴えない顔つき。ここを早く立ち去りたい雰囲気が漂っている。・・・でも新しく参入はいいけど、あのロケットを飛ばし続けている電気自動車の会社に対抗できるのかしら?彼らは相当進んでるじゃない」

 市場調査で調べているユアンが質問する。

「なんでもいいさ。どこへでもいくだろう。沈みいくタイタニックには乗っていたくないから」

 バルがタイタニックに例える。

「ねえ、沙織。みんなは祟りだとか、言ってるけど・・・」

 いきなりユアンに話を振られる沙織。

「なんの祟りよ?」

「パルテノンと同じ事故でしょ?だから沙織やレイに取り憑いた亡霊たちの・・・」

「勘弁してよ」

 この前、話したJAXAのサツキさんと同じこと言い出していた。どうやら本当に噂になっているらしい。

「いや、そういうこともあるかもな」

「何言ってんのレイ。そんなことあるわけないじゃない」

「だが、システムを共有して使っているなら、そういうバグに行き着くこともある」

「・・・そんなにいうなら、お祓いでもしようか?」

 おどけて沙織が言うと、

「出来るならお願いします。インド人はお化けが怖いので」

 バルが手を合わせる。それを見て笑ってしまう沙織。

「バル、ユアン、あなたたちはどうするの?」

「宇宙開発が、このまま終わるはずない。まだ始まったばかりのプロジェクト。何かが起きるのが当たり前だ。まだまだ続けるに決まっている」

 バルはまだまだここに踏み止まるようだ。

「うちは経済停滞中。人民元を擦りまくって、金がもう続かなくなっている。国に戻っても宇宙に着手できるどうか。ならばここにこのまま残り、少しでも多く知識を掴む方が賢明という判断」

 今の中国の状態を嘆いて、ユアンがいう。


  そこへブラウンに挨拶を済ました大滝が、沙織たちの所にくる

「よ、お揃いで。作戦会議かい?」

「ブラウンは出て行きますが、大滝さんは?どうするんですか?」

 と聞く沙織が、声をひそめて答える大滝。

「運営が困窮していてね。とりあえず給料が全額もらえてないので、待機して待つことにした」

「ギャラが出てないんですか?」

 驚くバル。

「多分、もらえるだろうけど、今は一部保留中。それに絶えられない講師も出てきて、離れていく最中」

「ブラウンもそれで?」

「沙織、それは言えないだろが。・・・ただ、ありうる話だ。実際、ここでこうして話しているだけで、施設のどこかで金が出ていってる。ハンモックも本当にリストラとかして手を打たないと、終わりになるだろう」

 それほど困窮しているのを知る沙織たち。

「見通しは?」

「同じ事故のパルテノンを比較に出すのもおかしいけど、向こうと違って船体の損傷は少ない。ハンモックの破壊は3分の1で済んでいる」

「ならあまり金をかけず作業に入れるのでは?」

 とレイが聞くと、

「しかしやはり最新技術の塊。膨大な金と、直す期間が数ヶ月かかると言われている」

 と、答える大滝。

「・・・大滝さんは、日本に帰ると言う選択肢はあるのですか?」

 沙織をみる大滝。

「この前、JIXAのサツキさんにも『日本に戻って来い』って勧められたのですが、私なんかより大滝さんの方が大歓迎で迎えてくれるのでは?」

大滝は沙織の言葉に、ちょっと渋い顔をして

「・・・日本には帰らんよ。日本で宇宙を目指すなら、自分には遅すぎるのだ」

 と言う。それを聞いて質問するレイ。

「でも今日本は宇宙に力を入れてるのでしょ?なら日本の技術をもってすれば、世界のレベルに追いつく可能性はあるんじないですか?」

「確かにそうだ。日本なら技術もあるので追いつくことは出来るだろう。しかし日本にはまだデーターもノウハウもないから、確証を得るには数年がかかってしまうはずだ」

「・・・日本はもっとも安全性を重視する国・・・」

 沙織も同意見。

「そうなんだ。もう完成しきったロケットが出来きて『有る』としても、それを飛ばして調査して、実験を繰り返して、やっと有人飛行になる。他で結果がでているのに、まだまだ実験を繰り返し、データーを集める。本当のチャレンジするまでに相当な時間がかかってしまう。・・・今俺が戻っても、俺は空にはいけないだろう。日本は安全に安全に、時間をかけて進む。そんな国だからな」

 そう大滝に言われると、沙織も日本に戻って『飛んでくれ』とは言われたことがなかった。

「だがな、こっちのアメリカや他の国ならば、もしかしたら来年、飛べるチャンスが来るかもしれない。・・・世界は結果を重視する。世界はそんなチャンスに溢れているんだ」

「その年齢になってもまだ飛ぶつもりですか?」

 ちょっと意外だなと聞いてくるユアン。

「自分はあくまでも、宇宙に行きたいんだ。だからここに残る。宇宙探検は俺のロマンだ。俺は宇宙に出たいのだ」

 鼻を膨らまし、言い放つ大滝。それを見て沙織も

「そうだ。私もその類だ。日本に戻らず、ここに残ろう」

 と思った。


「沙織、聞いた?」

 エドナがグラス片手にみんなに近寄って来る。

「何が?」

「国から正式な『パルテノン計画中止』の連絡メールが来たわよ」

「え、本当かよ」

 スマホを出し、メールを見るレイと沙織。

ここに来ているパルテノン計画からの移動者に、メールが送られていた。

「こんなタイミングでパルテノンが正式中止か。勘弁してほしいな」

「あまり期待はしてなかったけど、こんな時に中止だなんて、なんかいじめられている気分ね」

 ため息をつくレイと沙織。

「・・それで沙織、あんた基地キャンプの倉庫に荷物を置きっぱなしでしょ?取りに来るように連絡が入っているわよ」

 改めて別のメールを教えるエドナ。

「そんなのないわよ。私は荷物を整理処分して、ここに入っているから」

「おかしいわね。じゃあなんで私と沙織に引き取り命令が名指しで発表されているのかしら」

「私、荷物なんて・・・・あ!思いだした。マイケルの荷物・・・出るときマイケルの荷物が処分できずに倉庫に預けてそのままになっていた」

「それそれ。それを取りに来いって言っているじゃない?」

「そうかあれか。わかった、取りに行くわ。・・・それでエドナはなにを残しているの?」

「服よ。デート用に買い込んでいたドレス。停止なんてすぐ済むと思ったから、いつでも着ていけるようにそのまま置いてった」

「服って・・・そんなもの廃棄しちゃえばいいじゃない」

「ダメよ。高価なものがたくさんあるんだから。・・・それに量がちょっとね」

「どのくらい?」

「50着・・・」

「え?・・・」

「いえ、・・・まあ100は、いってないはず」

「そりゃ取りにこいって言われるわ」

  呆れる沙織。






 翌日、サングラスをした沙織が、ホンダアコードを運転して国道を走る。 日差しが強いフロリダの広い土地に真っ直ぐに延びた道。

使い慣れた道だったが、走らなくなってもう一年近く経っていることに気づく沙織。

「懐かしいわね」


 国道沿いの道に、フェンスで囲まれた立ち入り禁止の宇宙基地のエリアが現れだす。

 その鉄柵フェンスが続く道を進んでいくと居住ハウスの建物が現れだし、そして軍施設が段々と出てきて、エリアに入るゲートが見えてくる。

沙織、ウインカーを出し車を左に寄せて、左折しエリアに入る。

 ゲートに前に来ると懐かしい守衛さんが待機場から現れ、身分証確認のために車まで来てくれた。

「やあ、久しぶりだな沙織。中止とは残念だったね。・・・これから、またいいことがあるよ。気をおとさずに」

 待機所で読んでいた『パルテノン計画中止』の記事が載った新聞を渡してくれる守衛さん。

「・・・ありがとう。これからも頑張る」

 沙織、受け取った新聞を助手席に置くと大きな見出しが見える。

『パルテノンは調査したが、原因がわからない』

 と、大きな文字がある。

「変ね原因も分からないので中止になるなんて。・・・まあ外部に漏らすわけないか」

「これで沙織は、日本に帰るのか?」

「まだちょっと、わからないわね」

「これらも良い事が起きますように」

 グットサインを出して、微笑んでくれる守衛さん。

「ありがとう」

 守衛さんがゲートを開くと、沙織はエリアの内に車を進める。



 ゲートから長く続く滑走路脇の道を進むと、アメフトのグランドと観客席が現れてくる。

 ここは日曜のたびに地域の試合に開放されるグランドで、子供から大学生までアメリカンフットボールが行われている。

「よくここで観戦したり、遊んだわよね」

 懐かしさのために車を止める沙織、車から降りて観客席に登って見る。

「そういえばここでジョンから告白されたんだっけ。懐かしい」


 アメリカに渡って3ヶ月。毎日のNASAの訓練は英語で行われ、そのネイティブの聞き取りが難しくて、何度もミスを繰り返していたが、どうにか聞き取れるようになってきて、やっと雰囲気に慣れ始めた沙織。

 そんなころ、最初にデートに誘ってきたのがジョンだった。

「私と?」

「そうだ。沙織は遠く離れた日本から着て、一人で寂しいんじゃないのかい?」

 日曜日の地区大会。高校生のフットボールが終わった後、ジョンに呼び止められ、観客席に残った。

「デート・・・」

「そうさ、気晴らしに遊びにでかけようよ」

 観客席に座る沙織の横に、座るジョン。


 ジヨンは典型的なアメリカ人。陽気で、ジョーク好きで、フレンドリーで、誰もが友達になる。

 優しいし、レディファーストで、一人でいる時が多い私を気遣って誘ってくれたのかもかもしれない。

「いや私は遠慮しておく。デートとか今は興味なくて」

「なぜ?」

「今は訓練のことで精一杯なの」

「・・・沙織は付き合っている人がいるの?」

「・・・いえ、いないけど」

「じゃ、俺と付き合わないか?」

不意な交際申し込みに面食らう沙織。

「なぜ私を?」

「いいなと思ったから」

「どこが?」

「なんとなく」

「私はジョンをよく知らない」

「だからつきあおうって申し込んでいるんだよ」

「・・・そんな。・・・あまり知らないのに付き合うっていうのは・・・」

「男女は付き合って、互いに知りあい、愛を深めるものだろう?」

「・・・・・」

 そう答えるジョンに問題はない。

日本での告白は、重大な意志の開示になのだが、アメリカではこれからの進展の意思の提示でしかないからだ。

 男女が付き合うのいうのは、ラバーズの約束をして、互いに深く知り合い、愛を育てていくパートナーへの過程でしかない。


「・・・意味はわかっているけど。考えさせて・・・」

 と言おうとしたが、ここはアメリカ。日本のようにあいまいは許されない。文化が違うのだ。断るにしてもちゃんと話さなきゃならないと思い、

「ごめんなさい。その気になれない」

 と答える沙織。

「俺のことがお気に召さない?」

「いえ、違うの。今の私にはまず宇宙というものがあるから。それ以外はちょっと気が向かないの」

「それは俺も同じだよ」

「いえ私の場合、みんなにとって英語は普通の言語だけど、異国から来た私には訓練なの。・・・時間は待ってくれない。どれだけつぎ込んだかによって、浸透する。今は宇宙飛行士の勉強を主軸に置いているから、プライベートに時間が取れない。残念だけど今ある私のキャパシティに、恋愛というスペースはないわ」

「おいおい、恋愛や生活、それとパイロット訓練は別だろ?プライベートがあるから、仕事ができる。仕事をしているからこそ、プライベートが安定するんだよ」

「気分の切り替えも必要というのね・・・だけど、今の私には訓練作業も言語も肉体強化もすべて同じ時間軸の中にある」

 ジョンのように、対応するものを同時並行させながら、振り分けて進行させる事ができないことを説明するが、

「でも沙織、習得において効率から考えると、集中力の持続は維持できない。休憩をすることによって構築されていく。故に他のことをいくつか入れることによって気分転換になるし、休むことでリフレッシュして習得も進む。それで時間の犠牲は起きないんだよ」

「それがなる人もいるのよ。・・・日本人というのは特別に何かを追求し、追い求めることで、その過程さえも価値として見いだされる『道』という考えがある」

「ロード?」

「何かを極めようとすると、全集中で物事にあたる。立ち止まったり、道草食ったり、たとえそれが出来なくても、たどり着けなくて終えたとしても、向かうという姿勢。それが道。『柔道』『剣道』『茶道』『華道』みんなそれが人生の推進の源で、そのためには自分の全てを捧げる覚悟で行動すること」

「武士道もかい?」

 頷く沙織

「私も何かをするために何かを捨てる。それが私の生き方。出来なくても試行する。まさに全集中という考え方なの」

「それじゃ沙織の人生はどうなるんだい?達成できなきゃ、生きてる意味がなくなるという事なの?」

「極める『道』というのは一時期の時間のこと。人生はこのあと何十年も続く。その中で今が必要なら自分の全てを注ぐ。ただそれだけに邁進する行動」


「人生がもったいない。男と女は付き合って、同じ家に住んで、食事をしてSEXして、楽しいものを見て、苦しい時は助け合って、それができるパートナーは必要だぜ。食事の時、一人で食べるんだぜ?自分のベッドの

隣が空いているんだぜ。寂しくならないのか?」

 ジョンは大らかに質問してくる。

「そりゃ寂しい時もあるけど、目標があるので気にしないようにする。必要な勉強の時間が、パートナーがいることで乱されるなら、寂しい方を選ぶ」

「沙織も俺も同じものを目指している同士、分かり合える。幸福も、失敗も、喜びは2倍に悲しみは半分に。それが彼氏と彼女なら分かち合える」

 首を振る沙織。

「確かに二人同時にパイロットになれたら、または二人同時にパイロットに落ちたら、多分それは成立する。しかし私が受かってジョンが落ちたり、私が落ちて、ジョンが受かったら・・・多分、私は嫉妬する」

 言い返せないジョン。

「それが飛行士を選んだ事。狭き門のその先のことだから」

 立ち上がるジョン。手を差し出す。

「これは文化の違いだね。沙織の気持ちはわかるが、やはり理解ができない。でも同じ仲間であることは変わりない。この先、僕のことを見直してくれたら、教えてくれ。・・・仲良くやろう。まず友人として、これからもよろしく」

 その手を握る沙織。

握手しながら微笑むジョン。爽やかな笑顔。


「・・・そんなジョンが、『陰謀』に加担するのは似合わない。ジョンが殺人を犯すサボタージュするなんて、何かの間違いだろう・・・」

 レイに聞かされたサボタージュの犯人がジョンだということをやはり信じられない沙織。






 沙織の車はゆっくりと住居エリアへ進む。

バンガロー的な家々が並び、その中心部に集会施設があり、そこで暮らす人々が集まってBBQやパーティーなどする広場があり、その片隅に倉庫があり、倉庫の中には2段重ねのコンテナーボックスがいくつも並んで配置されている。

 倉庫に入り、コンテナーを見て歩く沙織。

「あ、そう、これだ」

 ずらっと並んだコンテナーの一つに行き、扉についた回転式シリンダーキーのナンバー合わせて外す。

 そして観音扉を開くと、マイケルのアメフト時代のトロフィー、大学の表彰状・・・マイケルの輝かしい過去が並んでいる。

 それからアニメのフィギア。イナズマファイター、ボルト7マン、ダービーキラー、色々なアニメのフィギア。趣味の数々。

 それらがコンテナーの中に、雑多に物が詰め込まれ、真ん中を通路を残すだけで左右にびっちりと置かれている。

「・・・こりゃあ全部持っていくのは無理だな」

 棚にアニメのマグカップがずらりと並んでいるのを見つめる沙織。

「そういえば葬式の時にマイケルの両親には言われた。・・・私たちはいらない。持って帰っても思い出すだけだから」

 沙織もそう思う。

「マイケルの思いが残っている品々。何かを持っていても思い出すだけ。・・・私は次に向かっているんだ。今の私に必要なものはない。処分するだけだ」

 意を決して、持ってきた70リットル・ビニール・ゴミ袋を開き、手前にある荷物を、袋に入れる。

 「悲しいけど、捨てていく」

 しかし、

「あ、パルコムレディーだ。懐かしい。・・・・これ一個ぐらいなら・・・いやダメ。そんなことしていたら、全部惜しくなっちゃう」

  とにかく物を確認したり、本やDVDの内容を深く見ないようにして袋詰めをする沙織。

「惜しいけど、もういらないものなんだよ・・・」

 どんどんと詰め込む沙織。

「あれ、これなんだ?」

 黒い塊を手に取り、くるりと正面を向かせると

「あ、術界戦線2050のアキラのフィギアだ。除霊とか流行った頃のアニメ。そういえば当時・・・」

 日本で通信衛星のうち上げが連続して失敗して、マイケルと話した事があった。

「ニュースを見たか?沙織、大変だな。このところ悪いことが続く」

「不幸に悪魔が住み着くという諺がある。日本でも悪い気がたまるという言い方をする」

「沙織、アニメみたいに、お祓いをしたらどうだ?」

「エクソシスとかみたいに?」

「違う、悪魔祓いじゃない。日本のお祓いだよ。除霊だ。術界戦線みたいにだよ」

「いやあれはアニメですし・・・」

「・・・封印札を用意して、・・・棒で、こうやって、魔法陣書いて、お祓いして・・・」

 マイケル、アニメと同じように指で『韻』を結び、「退散」と叫ぶ。

「そんなんで消えたら、苦労はしない」

 苦笑いの沙織。


 微笑む沙織。アキラのフィギアをゴミ袋に入れて、次を掴むと、

「あ、セブンズマーチの船じゃない」

2本マストに帆を張っている20センチぐらいの船。中に乗組員たちも乗っている。


「七つの行進曲?・・・どんな話?」

 好きなアニメの話をマイケルとした時、日本の題名と外国の題名が違うところがあり、内容を聞かれる時がある。

「バイキングが7人の仲間と7つ困難乗り越えて7つの海を旅する物語。7つの海の7つの難題を、7人の仲間で乗り越えていく話。・・・例えば、モリの刺さった暴れ者のクジラの話や船の墓場の話、海賊シャークと戦ったり・・・」

 マイケルの問いに答える沙織。するとマイケルが大声をあげる。

「グレイテッド・シー・キングスだ。それはセブンズマーチっていうのか?。俺が一番好きなアニメだ。君も好きなのか?さあ七つの海に出発だ」

 教室で『宇宙での医療薬品生成』の講義の授業中に、大声をあげてしまうマイケル。

「なんの話をしている?海じゃないぞ。宇宙だぞ」

 講師に怒られるマイケルと沙織。


 授業が終わり、休憩時間になっても、マイケルの熱が止まらない。

「アニメで一番好きなのは『グレイテッド・シー・キングス』。日本名・セブンズマーチ。それが俺の原点だ。・・・誰もが夢を持ち、みんなが応援する。誰かが困れば、みんなで助ける。自分のために戦い、そして仲間のために戦う。そして仲間のために命をかけるし、命懸けで助けるんだ。そして目指すは大冒険。本当に最高のアニメだよ。・・・さあパルテノン号に乗って七つの海に出発だ。」

「マイケルはパルテノンをそう思っているの?」

「当たり前じゃないか。仲間のために助けるし、命もかける。パルテノンは俺のセブンズマーチだ」


 はっと我に帰る沙織。

「やばいやばい。こんなことしてられない。整理整理。・・・さっさとこんなもの捨てちゃわなきゃ・・・」

 沙織、手に持ったセブンズマーチの船のフィギアをゴミ袋の中に・・・・





 エドナは家の中で、倉庫から持ち帰ってきた服の段ボールを開けていく。

ハンガーを通し、スタンドにかけていく。

 それが何着も部屋のリビングに並んでいく。

「・・・苦労して持ってきたけど、どれも流行から外れてしまっているわね。これだったら持って帰ってくる必要なかったかもしれない」

 そんなふうに服を出して広げていると、ドアをノックする音。

「はい。空いてるわよ」

 するとカートを押した沙織が家の中に入ってくる。

「何、なに?どうしたの?」

「ちょっとね・・・」

 沙織、入ってくるなり、エドナの家の部屋を見て回る。

「?」

「・・・あった。エドナ、ここの部屋開いてわよね」

「え、そこはこれから、ここの服を入れるため・・・」

 沙織、エドナの話など聞いておらず、持ってきたカートをその部屋に運び込み、フィギュアが詰まったビニールをどんどん下ろしていく。

「ちょっと、ちょっと何してるわけ?」

「あのね、キャンプの倉庫から出してきた荷物なんだけど、どうしても捨てきれなくてさ。エドナの家で空いている部屋があるのを思い出して持ってきたわけ」

 結構な量をエドナの家に持ってきた沙織。

「なに?うちは倉庫じゃないよ。」

「部屋はいっぱいあるじゃん。まあいいからいいから」

「何言いてんのよ。私も荷物・・・」

 沙織、エドナの話を聞かず、家の外においてある第二のカートを運び込む。

「何、おし込んでいるのよ」

「平気平気。ちょっとの期間だけだから、気にしないで」

 エドナの叫びを聞き流して、荷物を降ろしていく沙織。










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