19.ハンモック爆発
「・・・・ケケ、状態をもう一度、詳しく聞かせて」
沙織、ポッドを目視できるケケに聞く。
「オッケー、キャプテン。・・・船窓から見えるのは第一ドッキングハッチにポッドがついたまま残っている。そしてそれは電磁ロックされており、そこに分離用の高圧酸素が船内と船外の両方から供給され続けている」
「了解。・・・ジン、ハンモック船内からの注入コンプレッサーを止めて。レイ、改めて電磁ロックをオフにして」
機器系の操作パネルを押すジンが答える。
「それが・・・コンプレッサーストップを先ほどからやっているのだが、反応がない」
「沙織、こちらも同じだ。反応しない。・・・先ほどのポッド排出で完了してしまっている。システムではもうポッドは『存在しない』ことになっているようだ。だから電磁ロックの表示さえも消えている」
レイ、モニターに出ている電磁ロックのオン・オフのランプを見ながら、計器スイッチを押して見せるが、何も変わらない。
ブチ。
ドッキング部分にいるケケが、報告してきた。
「何かわからないが、ちぎれるような音が船外から聞こえてくる」
ブチ、ブチ。
「それが連続して発生している」
すると外部をモニタリングしている司令部のスミスが、その原因を伝えてくる。
「ハンモック、それは船体の膨張で外部に貼られている電気コードが切れている音だ」
「高圧酸素による膨張。・・・パルテノンと同じことが始まっているということ?」
「やめてくれキャプテン沙織。別の何かと混同しないでくれ」
必死にキーボードでシステムにアクセスしているジンから、言葉が飛ぶ。
「そうよね。あれはパルテノンで起きたトラブル。・・・ケケ、ロックを手動に切り替えて、ドッキング扉を解放できるか試して。・・・ジン、酸素発生装置に水や二酸化炭素の供給をストップさせて、機械が止まるか、やって欲しい。・・・レイ、供給されている酸素経路を閉鎖するか別の区域に流し回すは、出来る?」
「了解」
ケケ、ジン、レイ、作業を開始する。
司令室から送られてくるハンモックの外部映像を見つめる沙織。接合部付近が盛り上がっているのが目視できるようになっている。
ケケ、先ほど閉めたドッキング入り口の横下にある手動クランクにハンドルを入れて回そうとするが、全く動かない。
「だめだ。まわりゃしない」
ケケ、沙織に報告。
「手動で扉を開けるのは無理だ。電磁が邪魔して全く回りはしない。レイ、電磁系の電源は切れないか?」
「ケケ、電磁系列スイッチが全部、反応しなくなっている。どれもアクセスを拒み、点灯さえしない。・・・沙織、酸素の供給のシステム、こっちも反応しない。船内や船外に分散させようと操作しても、操作パネル自体が全く反応しない。何か制御がかかっているような反応だ」
と、レイが発言してくる。
「沙織、こちらもレイと同じだ。酸素コントロールシステムに、いくらコードを打ち込んでも跳ね返されてしまう」
と、ジンからも報告がくる。
「アクセスに制御がかかり、拒否?」
ケケから沙織に質問がくる。
「溜まっている酸素なのだが、こちらの扉から内部にドリルで穴を開けて抜く方法はダメか?レーザーやグラインダーで切断して酸素を出せば・・・」
「中は高圧酸素よ。切断する時に出る火花の引火で爆発する可能性がある。・・・前の事故の話だけど、パルテノンの事故は船体の高圧酸素が溜まり、膨れて内側に貼られた電気のコードが、引きちぎられて出火し、それで爆発した。船体の半分が吹き飛ぶ衝撃になった」
「・・・そして船体にいた飛行士が3人が爆死してしまった・・・」
レイが付け足す。
「まじか。やばいな」
レーザーカッター工具を出そうとしていたケケは止める。
ゴボゴボ。
「あ、充填率が落ち始めた。今、数値が80%まで落ちている」
キーボードアクセスしていたジンが、充填率を見て声を上げる。
「どうしたの?ストップできたの?・・・ケケ、なんかした?」
一瞬、喜びかける沙織だが、現場のケケから報告がくる。
「こちらのコントロールで落ちた訳じゃない。溜まった酸素の圧力で薄いポッドの扉が壊れ、ポッドの内部に流れ始めたせいだ。充填率が下がったのは、止まったのではなく、今、酸素がポットに流れているためだ」
「でもよかった。一応、危険は止まったのね?」
「なら、こちらもシステムの復旧に専念できる」
と安堵の声を漏らすジン、メインコントロールシステム機器にキーボードを繋ぐ。
しかしそれを聞いたレイが、
「ポッド自体にも酸素が注入?。いや、それはやばいぞ。ポッド自体が酸素タンクになりだしている」
レイの言葉に反応する沙織。
「それが何か問題になるの?」
「ポッドが酸素タンクになってしまうなら、そこに引火して爆発した場合、桁違いの巨大な爆発になる」
「・・・ポッドが爆弾になる?」
レイ、沙織を見てうなづく。
沙織、気を取り直し、
「これは、なんとしても酸素を止めないとダメか。・・・ケケ、今、酸素がハンモックと外部、両方から注入されているのよね?」
「そうだ。外部酸素製造機も水蒸気あげて送り込んでいる」
「・・・司令部、操作室のパネルが原因不明の障害により、アクセスの遮断が起きてます。ポッドに送り込まれている酸素供給ですが、そちらで止めることが可能ですか?」
沙織、司令室に要請。
「司令室ブラウン、了解。こちらからの酸素供給を止める」
連絡を受けて司令室スタッフに指示を出していくブラウン。
「圧力停止。減圧。注入停止。排出弁開け」
しかし戻らない圧力。
焦せだす司令室のシステムコントロール・デスクに座るスタッフたち。
「おいどうした?」
「停止・・・しません」
「コンプレッサーが制御不能。高圧酸素が異常な速さで注入され続け、止まらなくなっています」
とスタッフたちから返答が来る。
「総合コントロールスタッフ、どうなっている?」
司令室の前列に位置する総合コントロールスタッフ5人が後ろを振り向き、ブラウンやスミスに伝えてくる。
「こちらでも酸素システムにアクセスしているのですが、『止める』にスイッチングが移行せず、拒否され続けています」
顔を見合わせるブラウンとスミス。
「そんなはずはないだろ。直ちにシステム解析で介入作業を行なってくれ」
それを聞いている横のフランシス、じっと口びるを噛み締めている。
「・・・サポタージュ」
慌てて、マイクを掴むブラウン。
「何が原因なのか分からないが、今、こちらも操作がストップしている。現在、総合システムコントロールスタッフがアクセス始めて復旧に取り掛かった」
「・・・しかしハンモックに送る酸素供給の機械を早急に止めなくては、事故を巻き起こす可能性がある。アクセスが出来ないなら電源を止めてストップするしかないな」
ハンモックで各機器のオン・オフを確認しているレイが答える。
「そうだ。システムがアクセスを拒むなら、電源を止めて再び立ち上げてCMSを書き換えるしかない」
ジンも同調する。
それを聞いて沙織が司令室に質問
「こちらでは電源のストップの案が出ているのだけど、アクセス拒否である船内から実行出来ない状態です。・・・司令室よりハンモックの電源ストップ操作は可能か?」
それに答えるスミス。
「可能であったが、どうやらこちらの司令室のコントロールシステムに、なにかしらの制御がかかっているようだ。そのために酸素供給システムにアクセス不能になっている」
「スミス、こうなると沙織たちが言っているように電源を遮断し強制終了して、再びDOSからアクセスする方法が必要なのかと思えるが?」
ブラウンが提案し、それを聞いた沙織たち、うなづく。
「・・・だがその場合、こちら司令部の電源をもストップさせる必要も生じてくる。しかしここは巨大な宇宙センターだ。何重にもバックアップがかかって、全ての電源ストップは落ちないように、システムが構築されている」
とスミスが返答してくる。
「そうだな。宇宙空間にて電気ストップは、すぐ死に直結するトラブル。そのため搭乗者を守るためには2重3重にも張り巡らされて『止まらない安心ステーション』を構築している。その電源を止めて、BIOSのシステムを立ち上げようとするなら、このドーム内の全ての電源を完全にスットプして、再起動するしかない。だが・・・それは多分、厳しいだだろう」
ブラウンの言葉はトーンダウンする。
「それはドームの電気をストップするには、ここの研究センターに来ている電流を送電室ごと止める必要があるからだ。それには大学内にある変電所の完全遮断が必要となる」
「大学自体の電気ストップ?」
質問する沙織に答える。
「その通り。変電所からの電源ストップとなる。」
スミスが続ける
「それはとても大変なリスクだ。今、稼働している機器の急停止による故障の可能性。今まで収録したデーターも損失する可能性が考えられる」
「でもハンモックのデーターはバックアップ取れているでしょ?」
驚く沙織。
「いや、稼働してる船体システムのバックアップは、稼働しやすいように電気メモリに引き継がれている。止まって閉じていればいいが、稼働している時の強制終了となると、消える可能性は十分にある」
「そうだな。復旧してBIOS稼働させると、それはもうベーシックシステム部分だけになってしまうかもしれないというリスクもある」
レイも理解したらしい。
「ここ数ヶ月のハンモックが蓄積したデーターの損失・・・」
前にフィリップに聞いた『リアルタイムバックアップ』が仇になったなと思う沙織。そしてブラウンがいう。
「まさか電源を完全に落とすなんて誰も考えてなかったからな。・・・それでフランシス。もしそれをするとプロジェクトの大幅な遅れになるかもしれないが・・・」
そしてブラウンは隣にいる総責任者のフランシスを見る。
「構わない。事故の回避が最優先だ」
かけた眼鏡を押し上げ、即答するフランシス。
「よし、了解は得た。電源を全てオフにする」
ブラウン、そういうと非常緊急システムを発動。スタッフが操作し『緊急変更のモード』にチェンジする。
「大学敷地内にある変電所からの電気を遮断する。メイン、グロス、その他のハンモック施設全ての電源が停止される。しかし数秒後のち、予備電源に切り替えて、メインのみ復活しシステムの立ち上げが開始される。その時、支障や問題がなければ再び接続され、現状復帰されるので安心してくれたまえ」
司令室のブラウンからドーム内に説明が流れた。そして司令室のスタッフに向かって
「・・ではオフにしてくれ」
通達のアナウンスが流れ、スタッフが繰り返しそれをアナウンス。
「メイン、グロス、その他の全ての電源を遮断する。準備してください」
ドーム内の赤いパトランプが周り、『危険状態』に入るとのアナウンスが響き、そしてサイレンがなる。キラキラドーム内にいる人間全てが、じっと息を潜めると、カウントダウンダウンが始まり、そしてドーム内の電源が落ちる。
そして全ての電源が落ちて照明も消えて真っ暗闇。・・・静寂。
・・・しかしそうにはならなかった。
キラキラドームの建物全部の電源が落ちたのだが、ハンモックの船体だけは全く変わらず、照明も機械も唸りを上げて圧縮空気を送り続けている。
「船体の電源が落ちない?」
見つめる作業員たち。
船体外部であるドーム内には、予備バッテリーの非常用電源のスイッチが入り、最低限の室内灯がつき始める。
司令室のコントロールスタッフは、BIOSを立ち上げCMSを書き換えていく。
「こちら司令部ブラウンだ。外部は落ちた。外部からの酸素供給はストップした。しかし、ハンモックは稼働しているようだが、船内はどうなってる?」
司令室から来た質問に答える沙織。
「先ほどど、まったく状況が変わってません」
船内では、レイやジンが操作を再び行うが、反応なし。
「まったく変わらずだ」
「こちらハンモック。こちらの電源は落ちませんでした。どうやらハンモックはドームから来ている外部電源ではなく、船体のバッテリーで稼働しているようです」
「ハンモック船内は、外部供給電力は0%です」
と沙織の返答にジンが付け加える。
「ハンモックのバッテリーで駆動している?いつ切り替わった?・・・これはこちらではタッチできず、ハンモック船体内で遮断しないと止まらないということか」
ブラウンが状況を確認する。
「どうやらそのようですね・・・レイ、電源オフは?」
「だめだな。相変わらず何度もやっているが、システム自体がこちらのアクセスを拒否している」
「まずいわね、外部電源が落ちても継続されてシステムのロックしたままじゃ、打つてなし・・・」
ケケから連絡が入る。
「キャプテン、こちらはもっと最悪になってる。外部電源が落ちたので、船外につながるものが、ことごとくロックされてしまった」
「ケケ、あらゆるところって曖昧ね。具体的には?」
「外部につながる機器関係が主だ。ゴミ排出口の開閉、アーム操作機器や扉とかも動かなくなってる」
「扉?扉も開かないの?」
「そうだ。システムがロックしている所に、外部からのアプローチも拒否されている。だから扉は外からも開かないだろう」
「それは閉じ込められたということ?」
「ああ、内部からも出れないし、外部からも入れない」
ケケ、ヘルメットを脱ぎ、扉にある『手動ハンドル』のジョイントにハンドルを差し込み、回そうとここみるが、全く動かない。
そこに沙織の声がスピーカー流れる。
「こうなってしまったら、そっちで酸素発生装置の機械自体を壊すとかでストップできない?」
「それはそっちの方が近いぞ。全ての部屋に酸素が行き渡るように発生装置は中心部にある。物理的にいくなら操作室から破壊しに行った方がいい」
「・・・ならケケ、こちらに来て着手して」
「了解した。そちらに向かう」
ケケ、外したヘルメットを持ち、操作室に行く。
「システムがロック。酸素がとめられない。ドアが開かず外に避難することができない。・・・とにかく危険を招いているハンモックの酸素発生装置を止める。これが最優先事項。・・・それをするにはハンモックの電源を落とす。・・・ジン、酸素の充填率はどのくらい行ってる?」
沙織の質問にジンが数値を見て
「排出量から予測すると、境界エリアはもう120%を超えているはずだ。いつ爆発してもおかしくない状態になってしまっていると思う」
ボコ。
外部カメラから、今度はポッドに膨らみが出来た様子が映される。
「ポッドが酸素爆弾になってししまったか」
レイの顔が歪む。
ゴン、・・・ゴン・・・・ゴン。
何度も音がする。
「コマンダ・ブラウン。相変わらずハンモックがこちらのアクセスを拒否し続け操作不能です。そして圧縮酸素ですが、ポッドに流れ込み、そこも充填率が120パーセント。危険領域に入っています。これは爆発の危険があります。ハンモック外部いる調査・整備クルーたちに早急に避難するように要請します」
「司令室、了解した。ドーム内、ハンモック船体・外にいる調査員、作業員は速やかに退避させる」
ブラウンの命令でドーム内に響き渡るアナウンス。
「ドーム内、ハンモック船体外にいる調査員、作業員は速やかに退避してください」
ドーム内に流れる避難命令アナウンスの指示に従い、キラキラドーム建物から避難を始める作業員たち。
操作室に戻って来るケケ。
「だめだ。隣の酸素発生装置にある扉が開かない。中に入れなくなってる」
「ますます、追い詰められているわね」
全員が揃ったところで沙織。
「とにかくハンモックの酸素発生装置を止める。・・・システムが受け付けない。装置にさわれないとなると、やはり電源を止めるしかない。それには物理的に電源コードや基盤を外すしか方法が残ってないと思われる」
うなづくレイ、ジン、ケケのクルーたち。
「ジン、船体電力はどの位くらいある?」
「モニターで見ると80%は残量はある」
「ほぼ満タン。・・・ますますパルテノン状態になってきた。早急に停止しないと、内部の電源コードが膨張で切れて火花を起こし大爆発になっちゃうわ」
「だがパルテノンと違い、中の人間が気がついているだけマシ」
レイがいうと、うなづく沙織、画面で爆発を見た悔しさを思い出す。
「・・・司令室、こちらハンモック船体にて電源の遮断作業に入ります」
司令室に伝えると、作業を開始する沙織たち。
ジンがモニターで船内構造図を出す。
そしてそこに配電図を重ね合わせて、赤で表示。
「どこを止める沙織?」
ケケ、張り切って、微笑む。
「レイ、ヒューズボックスやパネルから、止めることできないかしら?」
「それはバッテリーに接続されているはずだ」
ケケ、工具を出し、
「そのハンモックのバッテリーはどこだ?」
「操作室の真下。」
ジンが答えながら、床を指差す。
「すぐかかりましょう」
床の羽目板を止めているビスを、電動ドリルで外していくケケ。
床板を外すと、断熱材が敷き詰められており、それを剥ぐと出てくる真っ黒い絶縁シート。
「なんじゃこれは?」
「それがバッテリーだ」
レイも他の床板を外して、取り除く。下にある断熱材を外していくとやはり絶縁シート。
「でもこれって・・・」
「床下全てがバッテリー。船体の床下全部がバッテリーが敷き詰められている」
ジンが説明する。
「床全部って、そんな大量に?」
「システムは電気を食うからな」
レイも電動ドライバーで床板を外しながら断熱材を剥いでいく。
「それでジョイント・・供給ターミナルはどこにあるの?」
「数箇所ある。故障に備えて分離されて供給されてる構造」
ジンがモニター操作して、ターミナル部分を青マーク表示。
「こんなにあるの?・・・それじゃヒューズボックスって・・・」
「電気遮断が起きないように何重にもセキュリティがかかった基盤にされて繋がっている」
ジンがモニターに配電図を出して説明する。黄色い点滅で数箇所、表示される。
「やはりやはりヒューズボックスの物理的遮断しかないか。・・・ジン、システムにつながるボックス基盤の場所を教えて」
モニターをアップして状態を見せる。
「まずはこの下だ」
「ここね」
絶縁シートを剥ぎ、ケケと沙織が作業を始める。。
そして沙織がレーザーカッターでバッテリーを切り離そうとするとレイに止められる。
「このリチュウムバッテリー外すのに電磁メスで焼き切切ったりしてはだめだ。火花が引火してバッテリー自体が燃えだす。火事になる」
「これを物理的に外すの?」
頷くレイ。。
ゴン、ゴン、ゴン。
断続的音がする。酸素で膨れた船体が悲鳴を挙げている。
ケケ、不安そうに見回す沙織の肩を叩き、微笑む。
「プッシュ、プッシュ。オッケー」
「そうよね、プッシュあるのみ」
バッテリー同士を結線しているコードを物理的カッターで切って分離していく沙織。1m四方の切り離したバッテリーのセルを床に上げる。
ケケもカッターと大型ニッパー使いバッテリーを外していく。
「セーノ・・」
沙織とケケが足下の3層にもなったバッテリーを外す。するとバッテリーの下から、帯状の太く黒い銅線が20x30センチの基盤に接続されて黒いボックスが出てくる。
「あった。これがヒューズボックス?ターミナル?」
「ターミナルの方だ」
そこに繋がれている黒い銅線をニッパーやカッターで切断。
「決してバッテリーを傷つけるな。基盤だけを破壊しろ」
レイに注意を受け沙織、基盤に結線されているコードを全て切る。
「・・・どう?」
「・・・全く変化ない」
みんなの期待をよそに全く変わらない船内。
「どうして?」
レイが答える
「多分、まだバックアップの基盤が3〜4つある。それら全て切断しなきゃ止まらないのはないかと思う」
「・・・それは、あと、どこ?」
「この下」
見えるのはバッテリーのみ。
「もっと下か?・・・もっと下・・・」
ケケが、ため息混じりにいうと、
ゴン、ゴン、ゴン。
船体が膨らんだ部分が音を出す。
「・・・・」
沙織たちは再び床を外し、バッテリーを取り外し作業する。
「沙織、バッテリーの取り外し、間に合いそうもないな」
バッテリーを一緒に持ち上げるケケがポツリと漏らす。
「でもやらなきゃ。プッシュ、プッシュ、オーケー」
微笑んで声を上げるケケ。
「そうさ、プッシュ、プッシュ、オッケー」
ビチ、ビチ、ビチ・・・
なおいっそう外壁のコード類が切れる。
モニターを見つめる司令室のスタッフが声を上げる。
「もう限界にちかづいています」
計器観測員スタッフが
「予測ですが180%、190%、もう臨界点に突入してます」
と声をあげる。
「・・・」
ブラウンが、フランシスを見てる。
うなづくフランシス。
「司令室からハンモック船内へ」
ブラウンの声がくる。
「もうここでストップだ。作業を止めてくれ」
唖然とする沙織たちクルー
「とめろ?なぜ止めるの?」
「モニターで見る限り、限界がきている。作業を中断してくれ」
「どうするの?このままじゃパルテノンのように爆発するわよ」
「そう。俺たちはパルテノンの時のように爆死する」
とレイもいう。
「そうならないように、こちら指示に従ってくれ。・・・まず沙織とケケ、床から上がってくれ。そして全員、着席してシートベルトを着用。これからくる衝撃に耐えられるように体を確保してくれ」
ブラウンの説明にため息をつくレイ。
「爆発を待つのか?パルテノンでは全壊の大爆発を起こした。このハンモックでも、中の人間は、もたないんではないか?」
「総司令のフランシスだ。・・・今はもう緊急を要する状態に陥っている。とにかくこちらの指示に従って欲しい」
と、初めてフランシスから発言が来た。
「・・・」
考える沙織。
「キャプテン。続けよう。出来る限り。俺たちはパルテノンにはならない」
沙織、なおもバッテリー切り出し作業をしようとしているケケを止め、床にあがる。
「司令室、これはフランシスが決めた決定なのか?」
「そうだ。私、総責任者であるフランシスが命令する」
「・・・」
沙織、みんなを見回して
「司令室が、いや総責任者が下した判断なのだ。従おう」
「しかし沙織・・・」
「命令は絶対よ。従うの」
仕方なくバッテリーの上から、床に上がり、ケケも座席に向かう。
「・・・」
疑心暗鬼でいる沙織たち、ブラウンの指示に従い、着席する。
「クルー全員、椅子に座り、シートベルトをつけて頭を抱えるようにして衝撃に対応する姿勢をとる」
「ヘルメットは?」
「衝撃吸収用に被ってくれ」
「了解」
クルーたちみんなヘルメットをつけ、頭を抱えて伏せ、衝撃体制をとる。
「それでは爆破する」
フランシスが明言する。
「・・・爆破?」
司令室・ブラウン、ボタンを押す。
ドッガー、ドガ、ドガー。
船内で同時数カ所で爆発音がする。
「・・・なんだ?」
ヘルメットして頭を抱えているため、何が起きているかわからない沙織たち。
明らかに何かが爆発している音が数発、連続している。
「何が起きている?」
ハンモック船体の壁、貼りあわされている鉄板のプレート壁面。その壁面の内側の4隅のボルト部分に、直径2センチぐらいの装着物がある。その装着物は少量の爆発物が設置しており、それが破裂すると、接続している壁面が外側に向かって剥がれるようにして吹き飛ぶ。
それが船体の中心部から4方向の4箇所が、次々と吹き飛ぶ。
まるで船体の蕾が花弁を開いたように飛ぶ。
まさにその時、その振動が起爆剤となったのか、限界が来ていたドッキングポッドでコードが切れて、詰め込まれていた高圧酸素に引火し爆発。
ドゴーン
ポッドが船体からロケット発射になったかのようにすっ飛ぶ。
接続していた計測機械を巻き込んで吹き飛び、そのまま建物に穴をあけて館外まで飛んでいく。まるでショットガンを撃ったような感じで、建物に風穴があいた。
それはものすごい衝撃で建物全体が揺れるほどのエネルギー。
当然、反対側の船体の方にも衝撃は向かうが、開いた壁のおかげで圧力が逃げ、接続している機器類は吹き飛ばしたが、中央にある操縦席のルームは、コアとして揺るがず、被害が及ばなかった。
しかし当然、操縦席があるルームも爆音と共に激しく揺れ、煙が充満した。
「レイ、ジン、ケケ、大丈夫?」
「大丈夫だ」
「何?今のはポッドが爆発したものよね?」
「数回爆発があったが、最後のやつがポッドの爆発だろう。パルテノンと同じように船体を破壊するような酸素爆発だったが・・・」
「そうね。けどポッド爆発は、こちらまで被害を及ばさなかった」
煙が充満した中で、スピーカーから司令室のブラウンが安否確認。
「こちらハンモック。船内、乗員はこちら全て、無事。怪我もない」
沙織を含め、乗員クルーに怪我はなかった。
「よかった。今からそちらに救護班を送る。動かないように」
「ブラウン、現在の状況を教えて欲しい」
沙織、状況が知りたくて質問するが、
「とにかく大きな危険が回避した。そしてその説明は長くなる。まだ危険がある、速やかに避難が最優先だ。無線のチャンネルを開けたい。船外に出てから状況は説明する。避難してくれ。・・・これから救助に向かう。救護班にしたがって欲しい」
するとすぐさま防火服を着た消化班と救護班が沙織たちがいる操作室に入ってくる。
バッテリーや計器類に消火剤をまく消化班。
「オッケー。火災の心配はない」
救護班が入って安否確認。
「大丈夫ですか?。動けますか?」
頷く沙織たち。
クルーをフォローして
「ハンモック船内の乗員たちに怪我、負傷はない」
と無線をしながら沙織たちに手を貸し、抱えるように外に運んでいく。
船外に出る沙織たち
移動クレーン台車に乗せられて、その台車のまま、船体の脇から動き出す。
「オールオッケー。このまま搬送して、建物から出る」
救護班に付き添われ、ハンモックの船体から離れていく沙織たち。
見ると、ハンモックの壁、四箇所が内側から開き、花のように広がっていて、そこについていた計器類が吹き飛ばされて、倒れている。
消化班が鎮火のために消火剤を撒いている。
そしてハンモックのドッキング部分3分1が爆発で吹き飛んでおり、そこから飛び出したポッドがドーム建物突き破り、外に大きな穴を開けていたのがわかった。
建物を壊すほどの大爆発はあった。ただパルテノンと違い、パイロットクルーは全て、無事だった。




