エピローグ
友達とその彼女を見送った駅のホームで遠く霞んだ青い空をふと見上げる。
たった二日間なのに、時間軸が歪められて数十日は過ごしたような感覚も、やがては薄れていって忘れていくだろう。だけど、それ以外にも色々なことが有りすぎて、しかもその原因はすべて僕で……。
「僕はルナの分も生きていく……それで良いんだよね」
不透明なままにしておくわけにはいかない。考えなくてはいけないことが沢山ある。
今やるべき事は、こうしてずっと友達を見送った余韻とか罪悪感ともなんともつかないものに浸るのをやめて、空が綺麗なうちに寮に戻ることだ。
下を向きすぎずにちょうど良く景色に目を向けながら、雑踏に紛れ込んで歩いて行く。
考え事らしくない考え事でもしながら歩いて行けば、完全に雑踏に溶け込むようなことはは無いだろう。
だけど、結局の所人混みに疲れきってしまってそこから外れる。
入り口に黄色いテープが貼られていたけれど見張りの人はいない公園に立ち寄り、色がすっかり落ちきったベンチに腰掛けて、また特別好きではないけど空を見上げようとおもった。
「全部僕のせいだ」
自嘲気味に呟くと笑い声こそ出てこなかったけど、ふっと笑えてきた。
別にアウトローでやたらとかっこつけたい種類の人間に憧れているわけじゃ無いけど。
一人きりになったからって、もう死にたいとは思わない。
能力を暴走させた結果からもしかしたら誰かに命を狙われてもおかしくは無くて、かといって殺されたいとも思わない。
嫌がらせでもしているかのように、適当に能力で誤魔化しながらのうのうと生きていくんだ。
誰も隣に立つことは無いだろう。
完全に一人きりになってしまっても、寂しくは無くて……。
「ルナ」
名前を言葉に出してしまうと、涙がこぼれ落ちた。
僕は泣きたいなんて思ったわけじゃ無い。
ただの生理的なものだろう。
むなしくてみっともない。すぐにとまるはず。
なのに、おかしいな、どうしてとめどなく溢れてくるんだ?
「僕は……」
さっきも、言ったじゃ無いか。
また言葉にして、この涙は止まるのか?
言葉を飲み込んで、飲み込まなくたってろくに声も出せないほど情けないぐらいにしゃくり上げながらぼろぼろと泣く。
泣いたって気が晴れるわけじゃ無いのに。
「待宵さん」
そう名前を呼ぶ声は、僕があんまりにも泣きすぎて無理矢理に脳が再生させたものかな?
だとしたら、大分僕はおかしい。
「……待宵さん」
ごしごしと涙を拭って、声のした方に顔を上げる。
視線の先にいたのは、僕のあげた髪飾りをつけて、優しく、困ったように微笑む女の子だった。
〈おわり〉