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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
第二章 ドワーフ地下帝国

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067 黒い魔力

 轟炎竜を操っていた、あの黒い魔力。


 あの時は、エルエルヴィがエルフたちと協力して行使した、強力な魔法解除によってどうにかなった。

 今回は


『不快である。即座に焼き尽くせ』


 まだ何か繋がっている轟炎竜からイライラとした気分が伝わってくる。


「いや、手掛かりでしょ。とはいっても、調べようがないけど……」


 この黒い魔力の源が、轟炎竜の時と同じなら大きな手掛かりとなりうる。

 だが、今のところ調べる手段がない。

 エルエルヴィが居れば知恵を貸してくれるだろうが、今はいない。


「シタガエって何をさせようっていうの?」


 そうすると、言葉を発したことに期待して話しかけてみる。


「ワガウチニトリコマレヨ」


 聞き取りにくい、副長の声とも違う、甲高く不快感を催す声。

 声だけでも嫌がらせをしようということなのか。

 あるいは根本的に相容れない何かなのか。


 ただ、わかることもある。

 他者を取り込むことで強化されるタイプの存在ということだ。


「副長と不死帝も取り込んでしまっているのかしら?」


「ワガウチニトリコマレヨ。ソノチカラヲフルエ」


 この状況から副長を救出する手段はあるのか?


 副長が被害者であるという前提の思考だが、間違ってはいないだろう。

 つい先ほどまで、黒い魔力を感じなかった。

 これはマジカルナックルだけではなく、聖女やエルエルヴィも見落としていたことだ。


 副長がこの魔力の根源であれば、誰かが気づくだろう。

 可能性としてはここに来てから取りつかれたか、あるいは、隠れていたのか。

 いや、意図して隠していなければ隠れられないだろうか?


 そうすると副長はずっと黒い魔力の支配下にあった可能性も?


「よし、殴ってみよう!」


 考えている余裕はない。

 どちらにしろどうにかしなければ脱出もままならない。

 あまり暴れると、予備管理知能が敵判定してきてマジカルナックルも排除されかねない。


 できることは限られていた。


 いつものことだ。


 そういう時はそれをやる。


 速やかに。



「マジカル・奪取!」



 マジカルナックルを包み込もうと広がる黒い魔力の帯を打ち破るつもりで魔力奪取を試みる。


 有効な手はこれくらいしか思いつかない。


 いつものように、接触と同時に拳を起点に魔法を発動する。




 その瞬間。




「これは……っ」



 マジカルナックルを強い重圧が襲った。物理的なものではない。精神にかかる強い負荷。


 マジカルナックルの脳裏に、これまで経験した痛苦の記憶がフラッシュバックしていく。


 初めて魔法少女になった日。言葉をしゃべる可愛らしい小動物にマジカルジュエルを託されて。そして目の前でヒスイをかばって亡くなった。


 ボロボロになって。変身して。魔法が使えなくて拳で叩いても全く効かない初めての敵。


 助けられなかった人の声。


 一人では倒しきれない強敵を相手に戦い続けた恐怖と絶望。


 守ろうとした相手からかけられた心無い言葉。


 魔法少女になってから、いや、なる前のものも含めて、暗い感情が呼び起こされるような記憶が津波のように押し寄せる。



「うるさいな!」



 これは、魔力だ。アンデッドの魔力とも方向性が違う。

 アンデッドを構成する魔力は生と死を反転させたような魔力のために、奪取することでこちらの命に危険が及んだ。

 この魔力を感じたことでその差がわかる。


 この黒い魔力は、心の力だ。

 魔法少女が扱う愛と勇気、夢と希望を力に変える。


 それとは逆方向。

 負の感情。絶望、悲しみ、そんなものから生み出された魔力。


 これは魔法少女が戦う敵が使う力と近い。


 マジカルナックルの経験にある。

 直近では、この世界に来る前の戦いで受けた絶望の闇の攻撃。





「魔法少女は絶望に負けない。マジカル・奪取!」





 関係者に現役と呼ばれる一年間を戦い抜いた魔法少女なら、この程度の精神負荷に負けることはない。

 つらい。苦しい。悲しい。憎い。


 それがどうした?


 そんなものが、今を、明日を、仲間を、自分を、諦める理由になりはしない!


 そう言って戦い抜いた実績と、共に戦った仲間にかけて。


 あえてこの程度と言い表そう。


 この程度の苦しみは、とっくに通り過ぎている。



 マジカルナックルは、黒い魔力の帯をすべて魔力奪取するつもりでマジカル・奪取を仕掛けた。


 つらく苦しい記憶が呼び起こされる。


 しかし。


 それはマジカルナックルの初心を見直すことになる。


 守りたいという愛と、立ち上がる勇気。

 諦めずに生き残った。何度も命を落としかけた。

 それでもと拳を握り、魔力を振り絞って打ち放ってきた魔力打撃マジカルパンチ


 その結果助けられた人もいる。仲間もできた。濃密な一年間。そしてその後の九年間も。




「従うことはできないし、死ぬこともお断り」




 まとわりついてくる黒い魔力の帯。

 副長は動かず、魔力だけが形を作り、マジカルナックルを包み込み、取り込もうと襲い掛かってくる。


 それを殴り、打ち払う。

 体に巻き付かれてもその場所から魔力奪取を仕掛ける。


 そのたびに押し寄せる暗い感情。


 繰り返していると何となく、二つあることが感じ取れた。


 ひとつはただただ、死を恐れる強烈な妄執。


 もうひとつはもっと複雑で、前者と比べれば弱いけれど、覚えがあるような心だ。

 嫉妬。無力感。苛立ち。理不尽への怒り。悲しみ。

 人間関係から生まれる当たり前の反応。

 その中の暗い部分だけを絞り出したような。


 前者が不死帝で、後者が副長のものだと考えればつじつまが合う。



 もしかすると間に合うかもしれない。



 黒い魔力の核のような部分を取り除ければ。つまり魔法少女のマジカルジュエルを破壊するようなものだ。

 魔法少女なら変身が解けて力を失うだろう。


 問題は核がどこか。


 目星は付いている。

 不死帝と副長の両方から力を引き出しているのであれば、その両方と接する場所にあるはずだ。



「そこを全部叩く!」

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