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イマココ

「今日のこの良き日を迎えた新郎、新婦。本日はごく親しい人ばかりの席ですので、…」


 結局、白無垢で神前式を挙げ、色打掛で披露宴。

 打掛だって着るつもりなかったけど、私よりも母親が興奮して押し切られた。お色直しなんて4回もせずとも、ウェディングドレスに着替える1回で十分だったし、呼んだのは親族と数人の友人だった。

 職場の人間?呼ぶわけないでしょ。祝うんじゃなくて呪いそうな奴が約一名いるし。


「おめでとう、美佳子。」

「Congratulation, Mika. 」

 由希はAlexと来てくれた。

 見るからにガイジーンなAlexに晴斗は横で固まってたけど、

「いやあ、ほんまにきれいやなあ、馬子にも衣裳っちゅうやつ?」

と、Alexが流暢な大阪弁をしゃべり始めた途端、なんでやねん!と間髪入れずに突っ込んでた。

「日本に来て最初に滞在したのが大阪だったの。」

「しかも半年もいたらしいよ。で、お笑いの番組ばかり見てたら、こうなったんだって。」

 由希と私で解説する。

「普通の日本語も話せます。」

 胸を張るが、「話せます」のイントネーションが大阪弁だったことには突っ込まないでおこう。


 涙ぐみながら祝ってくれる由希。

「清沢君、美佳子のこと大事にしてね。」

 いっつも、心配かけてごめんね。

 そして、ありがとう。

「こんなげらげら笑う人間だけど、メンタルの外側がちょーっと丈夫なだけで内側は豆腐もびっくりなよわよわメンタルだから。」

 っておい!何その例え?

 的確すぎて何も言い返せないのが悔しい。


「でもまあ、Mikaが10も若いboyfriend見つけたっつーのは意外やったわ。てっきり、年上やと思うてたからなあ。」

「ホント、本人が一番驚いてるよ。」

「ね、ね、そう言えばちゃんと馴れ染め聞いてないよね?」

 そりゃあもう興味津々な由希とAlex。にやにやして見てくる表情がやっぱりそっくりだった。

 思わず晴斗と顔を見合わせ、答えなさいよ、と目で睨みつけ……もとい、念を送れば、相変わらずどもりながらもごまかして答えた。

「いやあ、なんて言うか。道で見かけて、そのぅ、押しに押したと言うか、押しに押されたと言うか。」

「えー、恥ずかしがり屋さんだなあ。で、美佳子、なんて言ってプロポーズされたわけ?」

 由希の矛先が今度は私に向く。突然の攻撃に、私までどもりながら答えた。あれ?もしかして似てきた?

「いやあ、なんて言うか、まあ、月並みだけど、残りの人生を一緒に歩みましょう、みたいな?」

 大分、曲解してるけど。

 まさか、今すぐ死ぬか結婚するか選べ、って言って「脅迫プロポーズ」「した」とは言えない。


 追撃の手を緩める様子がない由希の横から、司会さんがマイクを持ってやって来た。ナイスタイミング。

「ところで、皆さま。御新婦様から一言コメントがあるようですが……美佳子さんどうぞ。」

 え?何?と晴斗ですらきょとんとしてる。そりゃ、そうだろう。知らせてないもん。

「えっと。実はですね。」

 いざマイクを握ると、何て切り出すか分からなくなってしまって。もごもごしていると、私のコピー元が先にしびれを切らす。

「何なの、美佳子。何かあるならはっきり言いなさい。」

 流石、私の母親。気が短いところが一番似ている。

 えーとか、あーとか漏らすと、さらに睨みつけてきた。もう、だって言葉が出ないんだもん。

 ええい、仕方ない。

 お腹をぽんと叩いた。

「入ってます。」

 狭い会場に沈黙が満ちる。

「え?」

 ぽかんとこちらを見てくる晴斗。言葉の意味を考えて、思いついた様な顔をしつつ、確信を得られずにもう一度考え、ぱあっとした笑顔になった。同じタイミングで列席者からも歓声と拍手があがる。

 正直、自分の年齢を考えると、こんなにすぐおめでたになるとは思わなかった。実際、課長の時は一度だけミスしたことがあって焦ったけど、安全日だったからか妊娠することはなかった。

 やっぱり、若いと活きが違うのかなあ、なんて。


 もう親族一同、狂喜乱舞。

 私の両親は、これで御先祖の墓に入っても追い返されずに済むとか訳のわからない喜び方をするし、あちらの家では初孫だとお義母さんに手を握ったまま拝み倒されてしまった。

 うちの息子を傷物にして!とか言われたらどうしよう、なんて構えてたから拍子抜け。え?ちょっと、ひねくれすぎじゃないかって?

 Alexと由希は何かをにやにやしながら囁き合っていて、どうせロクでもないことか下世話ななにかを喋っている様子。

 そして、ありがとう、まだ父親の自覚ないけど頑張る!と嬉しそうにする晴斗。

 自覚ないとか言っちゃうあたりやっぱり頼りないなあとは思いつつ、本当に嬉しそうな顔にこちらまで幸せになる。

 が。

 晴斗を手招きして、耳打ちした。

「早くなれそめをごまかす筋書き考えないと。」



 だって、

『お父さんとお母さんはどうして結婚したの?』

って子どもに聞かれて、まさかこんな風には答えられないでしょ?


「実はね……。」


ご覧いただき有難うございました。


軽いノリで書き始めたにも関わらず、沢山の方に読んで頂いて小躍りしてました。

過去最速で伸びるアクセスに、ビビる青田です。


さて、裏テーマというほどではないのですが、今回のお話のコンセプトは

「夫は内、妻は外もアリだよね?」です。


ニュースなどで「女性活用」がよく叫ばれているのを耳にする度に、微かに違和感を覚えておりました。

あるいは、「夫は外、妻が内」の「どちら?」という質問しかり。

別にどちらが良いとか、悪いとかいう問題ではなく、何でその二択なんだろうな~。っていう疑問が今回の作品の大元です。


美佳子の焦り≒青田の焦りでもあるので、青田の叫びを代弁した作品でもあるのですが(笑)


何はともあれ、ドタバタ&下ネタ多目のこの作品を最後までご覧いただきありがとうございました。

他の作品とは雰囲気の違うお話でしたので、ちょっとこういう話は苦手、という方も、こういう雰囲気が好きという方も、他の作品も色々ご覧いただければ幸いです。

ちまちま、他のお話も書いておりますので、また次に投稿した際にはご覧ください。


ちなみに、作中に出てくる小物は青田の欲しい物です。残念ながら、美佳子のようにバリバリは稼げないので。


青田

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