第二十章 蒼の彼方に (4)
澄み渡る青い空の下、琴の音色が響いていた。
王城の中庭で琴を奏でるギョクソウの傍にはリキ。リキは目を閉じて、緑に満ちた木々の葉を揺らす緩やかな風と心地よい香りを感じながら琴の音色に耳を傾けている。
「素敵な曲でしたね、まるで風になって空を舞っているような、心地よい気分になりました」
奏で終えたギョクソウに、リキが微笑みかける。ギョクソウは恥ずかしそうに目を細めて、静かに琴を下ろした。
「喜んでいただけて光栄です。貴女のために作った曲だから」
リキの肩を抱き寄せて告げた声は力強く、体に沁みていく。自分のためだと告げられたせいだろうか、リキが見上げると、目が合ったギョクソウがにこりと微笑む。
「私のために? ありがとうございます、こんな素敵な曲を……嬉しい……」
「私も嬉しいですよ、喜ぶ顔が見たかったから。貴女の笑顔に勝るものはありません。よかったら、この曲に名前を付けていただけませんか。貴女の感じたままに」
「私が? そうですね……」
突然のことに戸惑うリキを落ち着かせるように、ギョクソウの腕がしっかりと抱き締めている。中庭をぐるりと見渡したリキは、ゆっくりと空を見上げた。
「では、『深き蒼の彼方』はいかがですか?」
「『深き蒼の彼方』、いい名前ですね。この目に映る溢れる緑と緑を映した水面、そして晴れ渡った空の深い蒼。曲には勿体ないほどだ」
リキの視線を追い掛けて、ギョクソウは空を見上げた。
二人の目に映る空は曇りなどなく、澄んだ深い蒼い色をしていた。
【完】