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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
『森の学舎(まなびや)と古(いにしえ)の遺跡 ——九歳からの留学記、世界設計図の断片——』〜戦争が引き裂く故郷と、エルフ領域に眠る世界の核心〜
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【第5章 第12話】 戦術魔法の壁

九歳。故郷への帰還まで残り85日。

戦火の影響で乱れるマナ濃度と、遅々として進まない「戦術魔法」の習得。

理論は完璧でも体が追いつかないもどかしさの中、レイは「完璧」を求めすぎるあまり自らを追い詰めていく。

焦燥に駆られる少年に、アリエルとガルムが語りかけた成長の極意とは。

【エルフ領域・演習場・朝】


マナ濃度計が——跳ねた。


1.83。


昨日より0.01上昇。


(西の戦場から、まだ影響が)


体が重い。


筋肉痛。


でも——時間がない。


残り85日


カレンダーの赤い×印。


「おはよう、レイ」


アリエルが待ってる。


「おはようございます」


声を出す。気合いを入れる。


「今日は戦術魔法」


彼女が杖を一振り。


空中に光の魔法陣が浮かぶ。


三重の円。幾何学的に美しい。


「見て」


中心から光が放たれる——


三方向へ。同時に。


光球が的に命中。正確に。


「三目標同時攻撃。これが基本」


魔法陣が消える。


「やってみて」


「はい」


深呼吸。


マナを集める。


魔法陣を描く——


線が、歪む。


(複雑すぎる)


「落ち着いて。一つずつ」


「まず外円」


言われた通りに。


外円——成功。青い光の輪。


「次、中円」


描く——


マナが乱れる。


線が途切れる。


「くっ」


魔法陣が霧散する。


「もう一度」


何度も。


何度も。


でも——中円と内円を同時に維持できない。


「休憩」


アリエルの声。


「理論は理解してる。でも体が追いつかない」


「そう。だから——練習が必要」


ベンチに座る。


手が震えてる。マナ消費が激しい。


「焦らないで」


「一ヶ月で習得できれば十分よ」


でも——


(85日しかない)


【マナ流観測所・昼】


昼食後、観測所に来た。


気分転換。


画面を見る。


西の空——黒い雲。


でも数値は安定。


```

Density: 1.83 (↑0.01)

Stability: 64% (↑2%)

Cascade Risk: 11% (↓1%)

```


(少し改善してる)


「見てるのね」


アリエルが来た。


「はい。戦争は——」


「膠着状態よ。どちらも決定打がない」


画面を操作する。


別のデータが表示される。


「187人——死んでる」


「そう」


彼女の表情が曇る。


「だから、あなたが学ぶ意味がある」


「システムを理解して、こういう無駄を減らす」


拳を握る。


「でも、僕一人じゃ——」


「一人じゃない」


彼女が僕の肩に手を置く。


「エドワードがいる。ダリウスたちがいる」


「ガルムがいる。そして——私がいる」


胸が温かくなる。


「ありがとうございます」


「さあ、午後の練習。今度は実戦形式よ」


【演習場・午後】


的が動いてる。


ランダムに。速く。


「動く目標への攻撃」


アリエルが説明する。


「予測して、タイミングを合わせる」


「はい」


マナを集める。


光球を放つ——


外れる。


「もう一度」


集中。的の動きを読む——


放つ。掠める。


でも当たらない。


「くっ」


何度も。何度も。


一発も当たらない。


「休憩しなさい」


「まだ——」


「休憩」


アリエルの声が厳しい。


「無理は逆効果よ」


ベンチに座る。


悔しい。


手が震える——疲労じゃない。


苛立ち。


(なんで、できないんだ)


「レイ」


ガルムが水筒を渡す。


「ありがとう」


飲む。


「坊ちゃんは、完璧を求めすぎです」


「え?」


「一日で習得しようとしてる」


「でも、時間が——」


「あります」


彼が優しく言う。


「85日。十分な時間です」


「昨日、十発防げるようになった」


「それだけでも、すごい成長です」


胸が締め付けられる。


(そうだ。焦りすぎてた)


深呼吸。落ち着く。


「もう一度——やってみます」


【演習場・夕方】


的が動く。


でも——今度は違う。


(予測するんじゃない)


(反応するんだ)


的が左へ。


同時に——


光球を放つ。


当たる!


「いいわ!」アリエルの声。


「そのまま!」


次の的。右へ動く——


反応。放つ。当たる。


「やった!」


三つ目。複雑な軌道——


でも。


(見える)


光球を放つ。当たる!


「三連続!」


興奮する。


でも——次の的で外す。


「惜しい」


アリエルが笑う。


「でもいい感覚ね。コツを掴んだ」


頷く。


(予測じゃなく反応。頭じゃなく体)


「今日はここまで」


「え——」


「疲れてるわ。明日また」


「焦らない」


彼女が僕を見る。


「成長は段階的よ」


【レイの部屋・夜】


ベッドに座る。


ノートを開く。


```

Today's Progress:

- 戦術魔法:×(未達成)

- 動的目標攻撃:◯(コツ掴む)


発見:

- 予測より反応

- 完璧より改善

- 焦りより集中


課題:

- 複雑な魔法陣の維持

- マナ消費の最適化

```


窓の外。月が見える。


同じ月が——ルミナスも照らしてる。


手紙を書く。


```

お父さん、お母さんへ


今日も訓練しました。

少しずつ——強くなってます。


そっちは大丈夫ですか?

戦争——心配です。


でも信じてます。

家族が無事だって。


必ず帰ります。


レイより

```


封をする。


ベッドに横になる。


体が痛い。でも——心は少し軽い。


(85日。一日ずつ。確実に)


【同時刻・ルミナス港】


父が書斎で手紙を読む。


レイからの手紙。短い。でも——温かい。


「大丈夫そうね」


母が覗き込む。


「ああ。でも——心配してるな」


地図を見る。


アルタニアとの国境。赤い印。戦闘地域。


「明日、評議会がある」


「和平交渉の提案を議論する」


「通ると思う?」


「わからない」


父が溜息をつく。


「でも、試す価値はある」


「このままじゃ、どちらも消耗するだけだ」


母が父の手を握る。


「レイが帰る前に——終わらせましょう」


「ああ。必ず」


【デモン中枢】


```

Update: Day 85

LEI: 0.0551 (↑0.0003/day)

War_Duration: 47 days

Casualties: 187 → 203


Target: Ray_Albright

Training_Progress: 68%

Magical_Depth: 0.28 → 0.30


Special_Note:

- Stress management: improving

- Adaptive learning: confirmed

- Ethical framework: stable


Probability:

Stabilizing_Factor: 73%

```


アルゴリズムが動く。


感情なく。公平に。


【翌朝・演習場】


体は少し楽。


昨日より動ける。


「おはよう」


アリエルが待ってる。


「今日は昨日の続き」


「動的目標攻撃。でも——今度は複数」


的が五つ。全部動いてる。


「全部当てて。制限時間——三十秒」


「!?」


「始め」


的が動き出す。


慌てる——でも。


(落ち着け。一つずつ)


最初の的。反応。放つ——当たる。


二つ目。反応——当たる。


三つ目——軌道が複雑。


(読めない)


でも——直感で放つ。


当たる!


「いいわ!」


四つ目——左右に激しく動く——


(タイミングを——)


放つ。外れる。


「くっ」


五つ目——時間が迫る。


焦る——深呼吸。


(集中)


的が止まった瞬間——放つ。


当たる!


「時間切れ。四つ」


アリエルが言う。


「昨日から——大きな進歩よ」


息が荒い。でも——嬉しい。


「次は戦術魔法に戻るわ」


「はい」


【演習場・午前後半】


魔法陣を描く。


外円——成功。


中円——成功。


(ここからだ)


内円を描く——


マナが乱れる。


でも——


(諦めない)


制御する。調整する。


線が繋がる——完成!


三重の魔法陣。


「やった!」


でも——維持が難しい。


すぐに崩れる。


「惜しい。でも——完成させた」


「次は維持よ」


もう一度。


今度は維持を意識して。


外円。中円。内円。


完成——維持。


五秒。十秒。


「いいわ!」


十五秒——崩れる。


「くっ」


「十分よ」


「最初は三秒だった。十五秒まで伸びた」


「それだけでも素晴らしい進歩」


頷く。


(確かに。成長してる)


ベンチに座る。水を飲む。


「午後は実戦形式」


「動く目標に戦術魔法で攻撃」


「!?」


「大丈夫」


彼女が微笑む。


「あなたなら——できる」


【演習場・午後】


的が五つ。全部動いてる。速い。


「三重魔法陣を展開して」


「三つ以上当てて」


深呼吸。


マナを集める。


魔法陣を描く——


外円。中円。内円。


完成。維持——


でも。


(攻撃に集中できない)


魔法陣の維持で頭がいっぱい。


光球を放つ——


コントロールできない。


明後日の方向へ。


魔法陣が崩れる。


「もう一度」


何度も。何度も。


でも——うまくいかない。


維持と攻撃。両立できない。


「休憩」


アリエルが言う。


ベンチに座る。悔しい。


「なんで——できないんだ」


「当然よ」


彼女が隣に座る。


「二つのことを同時にやってる」


「普通は数ヶ月かかる」


「でも、あなたは三日でここまで来た」


「それがどれだけすごいか、わかってる?」


顔を上げる。


彼女が微笑んでる。


「レイ。完璧じゃなくていい」


「成長してればいい」


「昨日より今日。今日より明日」


「それだけで十分よ」


胸が熱くなる。


「ありがとうございます」


「さあ——もう一回だけ。今日の最後」


立ち上がる。


的を見る。


(最後。全力で)


マナを集める。


魔法陣を描く——


外円。中円。内円。


完成。維持——


そして。


(考えるな。感じろ)


的を見る。


一つ目——反応。


光球を放つ。当たる!


魔法陣が揺れる——でも維持。


二つ目——反応。放つ。当たる!


三つ目——複雑な動き——


でも。


(見える)


放つ。当たる!


「三つ!」


アリエルが叫ぶ。


「そのまま!」


四つ目——


マナが底をつきそう——


でも。


(諦めない)


放つ——当たる!


魔法陣が崩れる。


膝をつく。息が——できない。


でも——


「四つ——当てた」


「素晴らしい」


アリエルが僕を支える。


「十分よ。今日はここまで」


【レイの部屋・夕方】


ベッドに倒れ込む。


体中が痛い。でも——心は満たされてる。


(四つ当てた。維持しながら)


ノックの音。


「入って」


ガルムが入ってくる。食事を持って。


「坊ちゃん。夕食です」


「ありがとう」


起き上がる。体が重い。


「すごかったです」


「見てたの?」


「はい。最後の——あれは見事でした」


彼が微笑む。


「家族に胸を張って報告できます」


胸が温かくなる。


食事を始める。


美味しい。エルフの料理。野菜中心。


でも——エネルギーが満ちる。


「ガルムは、ここでの生活、慣れた?」


「はい」


「獣人への偏見は少ないです」


「エルフたちは長命だから」


「広い視野を持ってます」


「よかった」


食事を続ける。


「坊ちゃんは——帰りたいですか?」


突然の質問。


「え?」


「ホームシック——してませんか?」


考える。


「してる」


正直に答える。


「家族に会いたい」


「でも、ここでしかできないことがある」


「だから——今は我慢」


ガルムが頷く。


「私も同じです」


「家族に会いたい。でも——」


「坊ちゃんを守ることが私の役目」


「ありがとう」


「いえ。当然のことです」


食事を終える。


窓の外。星が見える。


「あと——84日」


「はい。一緒に頑張りましょう」


頷く。


「うん」


【観察者の拠点・夜】


白い部屋。モニターが並ぶ。


「順調ね」


観察者がデータを見る。


```

Ray_Albright_Progress:

Day_85:

- Combat_Magic: 72% (+18%)

- Tactical_Thinking: 68% (+12%)

- Mana_Control: 75% (+8%)

- Stress_Management: 81% (+15%)


Overall: EXCELLENT

Growth_Rate: Above_Expected

Ethical_Framework: STABLE

```


「問題なし」


彼女が微笑む。


「でも——」


別の画面を見る。戦場の様子。


「まだ終わらない」


「でも——悪化もしてない」


もう一つの画面。デモンシステム。


「ギリギリね」


彼女が呟く。


「でも——きっと大丈夫」


「人間は学ぶ生き物だから」


【エルフ評議会・深夜】


長老たちが集まる。


議題——レイ・オールブライト。


「あの人間の子は順調に学んでいる」


一人の長老が言う。


「アリエルの報告では予想以上の成長率」


「だが——」


別の長老が反論する。


「短命種の焦り。危険だ」


「急ぎすぎると事故が起きる」


議論が続く。


「彼は世界を変えるかもしれない」


若い評議員が言う。


「それとも——壊すかもしれない」


「どちらにせよ——」


最古参の長老が口を開く。


「我々は見守るしかない」


「短命種の時間で彼は成長する」


「止められない」


沈黙。


「ならば——導くべきだ」


「アリエルに任せる」


「彼女なら正しく導ける」


評議会が終わる。


でも——不安は残る。


この人間の子が、何をもたらすのか。


エンディング:壁の向こう側


【翌朝・演習場】


体が軽い。


昨日の疲労が——ほとんどない。


「おはよう、レイ」


アリエルが待ってる。


「おはようございます」


「今日は新しいことを教えるわ」


「はい」


彼女が魔法陣を描く。


でも——今までと違う。


四重の円。


「!?」


「これは発展形」


「三重ができたなら——次は四重」


「でも——焦らなくていい」


「時間をかけて」


魔法陣が光る。


四方向に光が放たれる。


的が四つ——全部に当たる。


同時に。正確に。


「すごい——」


「いつか、あなたもできる」


「信じてる」


胸が熱くなる。


(いつか。必ず)


「じゃあ——始めましょう」


マナを集める。


新しい挑戦。新しい壁。


でも——


(乗り越えてみせる)


一日ずつ。確実に。


```

帰郷まで——84日

戦争まで——推定50日

和平確率——22%


壁を越えるたびに——

新しい壁が現れる


でもレイは——

歩みを止めない


一日ずつ

確実に

強くなっていく


限界を——超え続けろ

-----

第5章 第12話 完

-----

「予測」ではなく「反応」で的を射抜き、三重の魔法陣を維持しながらの同時攻撃を成功させたレイ。

一歩ずつ、だが確実に壁を乗り越えていく少年の前には、さらなる高みである「四重魔法陣」という新たな試練が待ち構えていた。


最適化された選択は、次にどんな形で世界から返ってくるのか。


よろしければ、

ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。

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