第30話 揺れる前夜
今日はいつも以上に眠りたくて、8時ごろに一度起きたものの、二度寝をして起きた頃にはすでに12時を過ぎていた。
バイトは15時からなので焦る必要はないのだが、起きた瞬間からどこか調子が悪かった。風邪をひいたような、身体が遠のくような感覚。念のため市販の風邪薬を飲む。
寝癖を整え、支度が完了したのは14時前。
まだ早いが、家にいても落ち着かない気がしたので出ることにした。
14:40にはバイト先に着いた。
作業はいつも通り。
だが、胸を押しつぶすような圧迫感、喉元にせり上がるような吐き気、浅くなる呼吸——その不安は今日も消えることはなかった。
仕事を終えて退勤したのは17時。
家に着いたのは18時。
ご飯を作って食べ、湯を張って風呂に入る。
気づけば20時を過ぎていた。
風呂上がり、ぼんやりと考え事をする。
今日、研究も勉強もしていない。
自分の輪郭を確かめなかった日だ。
俺と僕が混じり合うどころか、どちらもはっきりしない。
自我が獲得できなかったような、そんな空虚さがあった。
明日の授業に出るかどうか迷っていた。
無理なく過ごすなら休むのも一つだが、今日大学に向かったとき、彼女の特徴的なバイクを見つけてしまった。
どこかで探していたのだろう。
見つけたことが嬉しいのか、胸が苦しいのか、自分でも判然としない。
明日授業に出れば、また彼女に会うことになる。
会いたい。
でも会いたくない。
あの矛盾がまた頭を締め付ける。
既読無視をされてから一週間が経った。
連絡をする気力もなかったし、必要性も感じられなかった。
ただ、沈黙は沈黙で重くのしかかる。
昨日のような億劫さが今日の自分にもある。
きっと、明日の授業そのものが億劫なのだと思いたい。
明日が怖いのではなく、未来が怖いのでもなく、
“起きるかもしれない出来事”が怖いだけだと信じたい。
明日は朝起きて、水槽の掃除をして、
授業に行けたら行こう。
明日になったら「行きたい」と思えるかもしれない。
そう信じて、今日はもう眠りたい。
眠れない予感はする。
でも、それでも眠りたい。
この夜を飛ばしてしまいたい。




