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転生したら最強すぎた件について   作者: ミリア
プロローグ〜第一章
6/37

名を呼ばない理由

◆ 精霊界/中層・調律の庭


(精霊視点)


精霊界において、“異変”という言葉はほとんど使われない。


秩序が崩れれば、即座に破綻として扱われる。

崩れないものは、すべて「流れの中」に分類される。


だが――

今回の件は、そのどちらでもなかった。


「境界は、安定している」


「歪みはない」


「だが、応じた」


調律の庭に集まった精霊たちは、同じ記録を何度も確認していた。


人界・王国アステル。

特定の個体に対し、境界が“拒絶を行わなかった”。


これは、極めて稀な事象。


「精霊契約ではない」


「加護でもない」


「干渉もしていない」


それでも、世界は整った。


それが問題だった。



◆ 精霊界/上層手前


(上位精霊)


「女王へ、報告すべきか」


その問いに、即答はなかった。


精霊女王は、秩序の象徴。

安易な報告は、世界を揺らす。


「まだだ」


「名を呼ぶ段階ではない」


観測対象は、力を行使していない。

意図的な介入も確認されていない。


ただ、“在る”だけ。


「……在り方が、秩序に近すぎる」


誰かが、そう漏らした。


近い。

だが、同一ではない。


それが、精霊たちを迷わせていた。



◆ 記録層


(精霊)


観測記録は、慎重に分類された。


危険:なし

干渉:なし

影響:なし


だが、備考欄には短い一文が追加される。


――境界が、調律を要さなかった。


それは、本来あり得ない評価だった。



◆ 精霊界/静域


(精霊)


精霊界は、結論を急がない。


急ぐ必要がないからだ。


精神体である彼らに、期限は存在しない。

世界が続く限り、観測は続く。


「見守る」


「触れない」


「名を呼ばない」


それが、今回の合意だった。



◆ 人界/王国アステル・同時刻


(遠景)


人界では、何も起きていない。


王都は平和で、

冒険者ギルドも、

教会も、

いつも通り。


観測対象――ミリアもまた、

その日を“普通”として過ごしている。



◆ 精霊界/最終判断


「もし、再び境界が応じたなら」


「その時は?」


「……女王へ」


精霊たちは、それ以上を語らなかった。


まだ、呼ばれていない。

だが、忘れられてもいない。


精霊界は、

静かに“注意”を向けたまま、

再び沈黙へ戻る。


――名を呼ばぬまま。

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