巨人
異世界に転生すると、巨人になっていた。
まだビルなどの高層建築の無い時代のようで高さが分かりにくかったが、ちょっとした小山より大きい巨人だ。
原始人のような住人がいた。
僕の姿を見かけると、悲鳴を上げながら逃げ去って行った。彼らを簡単に踏みつぶすことができる大きさだ。怪獣になった気分だった。
のしのしと歩き回った。
山に生い茂る木々より大きい。試しに一本、木を引き抜いてみた。感単に木を引き抜くことができた。
岩をつかんで投げてみた。遙かかなたまで飛んで行った。
――僕はこの世のキングだ~!
そう叫んでみた。
大音響に山の鳥たちが飛び立った。
この世界の大地を歩き回った。緑の大地が延々と広がっており、動物たちがわが物顔で暮らしていた。人間はまだ、発展途上にあるようで、集落を営んではいたが、木や土で作った簡素なものだった。
人口も多くないようだ。
暫く歩くと海に行き当たった。
そう言えばお腹が空いてきた。海に入って、魚でも捕まえようと思った。海水を手ですくうと、面白いように魚が取れたが、どれも小さ過ぎる。しかも、生では食べたくない。
山に入って果物を探した。
いっぱい実っていたが、どれも小さ過ぎる。いや、自分が大き過ぎるのだ。食べても、食べてもお腹がいっぱいにならなかった。
野生のシカやイノシシがいたが、捕まえても生では食べられない。
困った。ここでは、僕の食料になるようなものが無い。
僕は飢えていた。
火を起そうとしたのだが、上手く行かなかった。山の木を引き抜いてこすり合わせても、僕の力が強すぎるのか、ぼろぼろになるだけで火が起きなかった。
魚も肉も生で食べることができない。
僕が食べることが出来るものなど、たかが知れていた。
しかも、あっても量が足りない。
僕の体が大きすぎるのだ。
空腹でふらふらしていた。
しかも、季節は冬に向かっているようで、どんどん寒くなる。
僕は南を目指して歩き続けた。少しでも、暖かいところに行きたかった。
だが、それも限界だった。これ以上、歩き続ける気力が残っていなかった。
どうと倒れ込む。
磯の香りがした。
気力を振り絞って起き上がる。
歩き続けると、海岸に出た。ついに、陸地が尽きてしまったようだ。これ以上、南に行きたいのであれば、この海を泳いで行くしかない。
僕は海に足を踏み入れた。
そして泳ぎ始めた。
そして、力尽きた。




