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ガニラ

 暑い夏だった。

 ブリーフ環礁の水爆実験により生まれた怪獣ガニラが目を覚まそうとしていた。

 放射能を浴びてカニが巨大化、狂暴化した怪獣ガニラは、長い眠りについていた。そのガニラが海水温の上昇により、目を覚まそうとしていた。ガニラが目を覚ませば、街が破壊され、森は炎に包まれ、世界は大混乱に陥ってしまうだろう。

 ガニラが東京湾に迫っていた。

「ガニラを東京に近づけてはならない!」

 アキバ総理は自衛隊に緊急出動を命じた。

 緊急発進した自衛隊は戦艦と戦闘機から、雨あられと銃弾、爆弾をガニラに浴びせたが、ガニラの固い甲羅に傷、ひとつつけることが出来なかった。

 ガニラは口から泡を吹きながら、東京湾に近づいていた。

「住民の避難を急がせろ!」

 アキバ総理が側近に命じた。首都では住民の避難が始まった。

「何としても東京湾の入り口でガニラの侵入を防ぐのだ!」

 アキバ総理は自衛隊のワタヌキ統合幕僚長を呼びつけると、ガニラのように口から泡を飛ばしながら厳命した。

「はっ! 東京湾の入り口に防衛線を張って、ガニラの侵入を防ぎます!」

 自衛隊は千葉県館山市の洲埼灯台と神奈川県三浦市の剣埼灯台の間の海上に戦艦を並べ第一防衛線とした。更に、三浦半島の観音崎と房総半島の富津岬を結ぶ海上を第二防衛線として、陸地に迎撃部隊を配置した。

 ガニラが姿を現す。

 第一防衛線はガニラの巨大なハサミにより戦艦が破壊され、突破された。

 残すは第二防衛線のみだ。ここに戦力を集中させた。第二防衛線で、ガニラは自衛隊の集中砲火を受け、動きが鈍った。だが、半日の激戦を経て、ついに第二防衛線が突破された。

 ついにガニラは東京湾の内湾へと侵入した。

「最早、これまでなのか⁉」

 アキバ総理は頭を抱えた。

 海中よりガニラがその姿を現し始めた。

 デカい。縦は五十メートル、横幅は胴体部分だけで百メートルを超えているだろう。長い足や巨大なハサミを加えると、更に大きい。

 照りつける陽光に反射して、ガニラが上げる水しぶきがキラキラと反射した。

 ガニラの上陸が始まった。沿海部に建てられたビルが倒壊し、道路が寸断した。あちこちから火炎が立ち上り、地獄絵図が始まってしまった。


――神よ!


 多くの人が祈ったことだろう。すると、ガニラの動きが鈍った。上陸を目前にして、ガニラの動きが緩慢になったのだ。

 ここぞとばかりに自衛隊が空から爆弾を浴びせかける。

 ガニラはピクリとも動かなかった。自衛隊の爆撃をじっと耐え続けた。

 やがて、爆弾が尽き、もうもうと立ち込めた黒煙が風に流されると、そこには無傷のガニラがいた。だが、ガニラは動かなかった。


――死んだのではないか?


 ガニラが動かないので、そう言い出すものがいた。

 生物学者が自衛隊に守られながら、ガニラに近づいた。


――ガニラは死にました。


 生物学者はそう結論付けた。

 死因について、こう説明した。


――カニは28度以上の高温に弱いので、高い水温と外気温の中、上陸したことにより酸欠状態に陥って死んだものと思われます。


 ガニラの死後、その亡骸は蟹肉と蟹味噌となり、蟹の価格が大暴落した。

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