キャプテン・アサヒマチ/サマー・ソルジャー
「キャプテン・アサヒマチ」の新作です。
キャプテン・アサヒマチに強力なライバルが現れた。
その名はサマー・ソルジャー。正体は不明――ではなく、ラーメン屋のヒロさんだ。
――アサヒマチを守るスーパーヒーローの座をキャップから奪ってみせる!
とヒロさんはSNSで宣言した。そして、ヒロさんはヒデさんの蕎麦屋に現れると、「正々堂々、勝負しましょう」と握手を求めた。
ヒデさんだって負けてはいられない。「分かりました。もし、あなたに負けるようなことがあれば、今後、二度とキャプテン・アサヒマチに変身することはないでしょう」と売られた喧嘩を買った。
こうして二人の勝負が始まった。
アサヒマチの住人の支持を多く集めた方が勝ちだ。
ヒロさんはサマー・ソルジャーとして活動を始めた。特注で制作したという、ぴっかぴかのソルジャー・スーツを身にまとい、スーパーパンチを繰り出すことができるスーパーアーマーを左手に装着している。
ヒロさんはサマー・ソルジャーとして町の巡回を始めた。
「サマー・ソルジャーだ! 恰好良いなあ~」
サマー・ソルジャーに出会った子供たちは大喜びだ。サマー・ソルジャーも愛想よく、子供たちの求めに応じてポーズを取り、写真に納まった。
サマー・ソルジャーの人気はうなぎ上りだった。
その上、ヒロさんは自らが経営するラーメン屋で「サマー・ソルジャー・お披露目キャンペーン」を実施した。
――アサヒマチにはサマー・ソルジャー!
と合言葉を言えば一杯、八百円のラーメンが、一杯、五百円になるのだ。しかも、お店でサイン会まで開催する始末だった。そして、困ったことがある人がいれば、親身になって相談に乗り、時に一緒になって涙まで流した。
ラーメン屋に人が押し寄せ、連日、行列が出来る繁盛振りだった。
(このままではアサヒマチのスーパーヒーローの座をサマー・ソルジャーに奪われてしまう)
ヒデさんは危機感を抱いた。
「うちは、かけ蕎麦一杯、百円にするぞ!」と言うと、「あんた! 店を潰すつもりなの」と細君に怒鳴られた。
「このままじゃあ、アサヒマチのスーパーヒーローの座をサマー・ソルジャーに奪われてしまうかもしれない」
「あんたが変な恰好を止めて、お店に専念してくれれば、私も嬉しい。是非、負けてちょうだい」
「な、なんてことを言うんだ!」
「とにかく、値引きは許しません!」
「せめて特注でコスチュームを新調したいんだけど・・・」
「そんなお金が何処にあるのよ!」
また怒鳴られた。八方ふさがりだ。このままではマズいと、悶々とする日が続いた。
そんなある日、ヒデさんのスーパーセンスが子供の声を聞いた。キャプテン・アサヒマチには、スーパーセンスがあり、町の人間が助けを求めている声が聞こえるのだ。
――助けて!
と言っていた。ヒデさんはキャプテン・アサヒマチに変身すると店を飛び出した。愛車のスーパーカブに乗って、町の中心を流れるアサヒ川までやって来た。子供が川を流れていた。
水遊びをしていて、深みにはまったのだ。
水流が早くて、大人たちは見守ることしかできない。
「キャップ! 子供が流されている」
「昨日の雨で水嵩が増している。危険だ」
キャプテン・アサヒマチはスーパーカブを乗り捨てると、「真心百万馬力~!」と叫んで川に飛び込んだ。
真心百万馬力はフットネスクラブ「ザクザク」で伝説のトレイナーから伝授されたキャプテン・アサヒマチの必殺技だ。
キャプテン・アサヒマチはもの凄い勢いで手足を回転させると、水面を滑るように泳いで行った。そして、あっという間に子供に追いついた。
「私につかまりなさい」と子供を背負うと、また、もの凄い勢いで岸まで泳いで行った。
こうしてキャプテン・アサヒマチは子供を救った。
――やっぱりキャップだ!
と町の人々はキャプテン・アサヒマチを讃えた。
ヒデさんの蕎麦屋をヒロさんが訪れて言った。
――アサヒマチにはキャプテン・アサヒマチが必要だ。私の負けだ。
キャプテン・アサヒマチは今日も町の平和を守るために、スーパーカブに乗って走り回っている。




