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20話 ドラゴン式訓練・1

 強くなるためにはどうすればいいか?

 答えは、いくつかある。

 強い武具を装備する。戦いの経験を積む。新しい特技、魔法を覚える。

 方法、手段は様々だ。


 最も基本的な方法は、レベルを上げることだ。


 レベルというのは、強さを数値化したもの。

 高ければ高いほど強く、逆に、低ければ低いほど弱い。

 実に簡単な話だ。


 レベルを上げる方法はいくつかある。

 魔物を倒して魔力を奪う。剣の稽古などをして経験を積む……などなど。

 レベルが上昇すると身体能力も強化されて、自然と強くなる。

 故に、一般的に、強くなるためにはレベルを上げることが一番とされている。


 強くなりたいというイノリ。

 ならば、イノリのレベルを上げるべきか?

 答えは、上げるべきであり、上げるべきではない。


 少し、話がややこしくなってしまった。


 俺が言いたいことは……

 レベルを上げる前にしておかなくてはいけないことがある、ということだ。




――――――――――




 イノリを連れて家の外に出る。

 そのまま、村の外に移動した。


 これからすることは、なるべくならば村の人間に見られたくない。

 いや。

 できることならば、人間そのものに見られたくない。

 答えは簡単。

 俺が人間でないことが露見してしまうからだ。


「ねーねー、おとーさん。こんなところでなにをするの?」

「イノリは、強くなりたいんだろう?」

「うんっ、なりたい!」

「強くなるための訓練を、ここでする。人目があるとできないんだ」

「そーなの?」

「少し、変わったことをするからな。イノリ、離れてろ」

「あいあいさー」


 だから、その返事はどこで覚えた?


 問いただしたくなる気持ちに駆られるが、ぐっと我慢した。

 今は、イノリの訓練を優先しなければ。


 イノリが離れたことを確認して、俺は人間に変身する魔法を解除した。

 本来の姿……ドラゴンに戻る。


「おー……やっぱり、おとーさんおっきい♪」


 イノリは俺を見上げて、怯えるどころかうれしそうに笑った。

 やはり不思議な子だ。

 普通ならば、俺の姿に恐れおののくというのに。


「イノリよ。これからすることは、楽な行為ではない。苦しく、辛いことだ。泣いてしまうかもしれない。それでも……やるか?」

「うんっ、やるよ!」

「即答か……」

「イノリ、強くなるの! それで、おとーさんの力になるの! だから、どんなことでもがんばれるよっ」


 そう言うイノリの瞳は、強い決意が見えた。

 幼いながらも、確固たる意思を抱いているのがわかる。


 ……すでに何度も尋ねてきたことだ。

 この場で、改めて確認するのは、失礼なことだったかもしれないな。


「わかった。では、始めるぞ」

「おー!」


 がんばるというようにイノリは手を突き上げて、それから、小首を傾げる。


「私、なにをすればいいの?」

「最初は何もしないでいい」

「そーなの?」

「そこで、じっとしててくれ。少々苦しいかもしれないが……我慢するんだ」

「うんっ、わかった!」


 イノリが頷いた。

 それを合図にして、俺はブレスを吐いた。

 ブレスといっても、攻撃用のものではない。

 相手に状態異常を与えるものだ。


 まずは、パラライブレス。

 ダメージを与えられないが、代わりに対象を麻痺状態にするブレスだ。


「おっ、おおおぉ?」


 なんの耐性もないイノリは、一瞬で麻痺状態に陥った。

 思うように体が動かないらしく、コテン、と転んでしまう。


「イノリ、大丈夫か?

「だ、だいじょーぶぶぶ……ふぁ……か、からだ、うまくうごかないの」

「麻痺状態にしたからな。だが、これで終わりじゃない。これからイノリが動けるようになるまで、何度も何度もブレスをかける。辛いだろうが、耐えろ」

「う、うん……がががんばる」


 痺れながらも、健気に頷いてみせるイノリ。

 心が痛むが……これもイノリのためだ。

 俺は心を鬼にして、再びパラライブレスを吐いた。

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