第63話 VSドラゴン級
『来るぞ! 迎え撃てッ!!』
ビルに挟まれたアスファルトを疾走する車列は、戦闘陣を形成しながらレーヴァテイン大隊の持てる火力を、上空より接近するドラゴン級へ投射していた。
「ガアアアアアアアアァァァァァァァァァッッ!!!!!!!」
スコープ越しに見える異形は神話にも出てくるそれ、俺は対空射撃も可能な12.7ミリ重機関銃を撃ち込むが、ワイバーン級と違い、怯みすらしてくれない。
『攻撃ヘリ部隊に応援を要請した!! それまで食い止めるぞ! 絶対に近づけるな!!』
偵察警戒車の25ミリ機関砲も火を吹くが、それすら弾き返されてしまう。
悪い夢でも見ているようだ、対空火器の通じない航空戦力にどうやって勝てと?
『驚いたな! 久しぶりに見たがまるで空飛ぶ戦車だ、機関砲はおろか対空ミサイルさえも通じないとはね』
『笑いごとじゃないですよ大隊長! このままでは時間稼ぎすら困難です!』
この状況においても陽気な少佐に、ナスタチウム中尉が無線で叫ぶ。
『後方!! 敵ドラゴン級にブレスの兆候あり!! 直撃コースです!』
くっそどうする? 重機関銃も機関砲も効かない! このままでは上空からのブレスで車列ごと吹き飛ばされる。
万事休すか......!
『大隊諸君、帝国国民の血税だが仕方あるまい、総員降車だ! 装備を持って飛び降り、魔装化戦闘へ移行せよ!!』
下された決断は車両の放棄、このまま丸焼きになるくらいなら、十分合理的だった。
全員が魔導ブーストを発動、俺もハッチから飛び降りた瞬間、豪炎が走った。
「ゴアアアアアアアアァァァァァァァァッッ!!!!!」
無人となった車列を巨大な火球が直撃、まるで装甲など初めから無かったかのように軍用車が吹き飛んだ。
爆発した車の部品が飛び散る中、地面に着地した俺はすぐさま周囲を見渡す。
火球を放ったドラゴン級は、近くのマンションの屋上を踏みつぶし、再びこちらへ攻撃を向けようとしていた。
道路の真ん中では、後ろだろうが横だろうが避けきれない。
なら――――――――
「突撃にぃ――前ぇッ!!!」
魔導ブースト全開で前方へ待避、掠めるように真上を通った火球の爆発を背に、大隊はビル上のドラゴン級へ一斉に接近する形で回避した。
「はああッッッ!!!!」
右腕に魔力を込めたラインメタル少佐が、キマイラ級すら一撃で屠る渾身の右ストレートを、ドラゴン級の顔面へ叩きつける。
「ゴアアアアアアッッ!!!!」
砲弾のような一撃に、ドラゴン級はまたも上空へ飛び上がった。
「こちらレーヴァテイン01、目標が上昇、ありったけ撃ち込んでやれ」
『デスコール1了解、発射用意――――発射ッ!!』
1キロ先のビルに身を潜めていた攻撃ヘリ数機が、一斉にガトリング砲を発射。
装甲車もズタズタにする20ミリ徹甲弾が、ドラゴン級の翼を穿った。
「ガギャアアアアアアアアッッ!!!!!!」
高度を落としたドラゴン級は、ガトリング砲を逃れるためか超低空飛行を開始。
なんと高層ビル群の間を縫うようにして滑空を始めた。
ふざけた装甲と火力、機動力を兼ね備えた強敵には辟易するが、ヤツの放置は許されない。
だからこそレーヴァテイン大隊は、降車時に持って降りた110ミリ対戦車ロケット砲を、アサルトライフルも捨てて担ぐのだ。
「追撃だ!! 攻撃ヘリ部隊と共にケツを追い、ヤツを地に落とすぞ!!」
「「「了解!!」」」