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動物街  作者: 焔ゆたか
2/5

強者の狼は……

ニコニコ生放送第4,5回で書き上げました。

 老狸は街の中心部の映画館の前に掲示板を貼り出した。そこには、こう書かれてあった。

一.他の動物を傷つけないこと

二.自分の食料は自分で手に入れること

三.健康を害する生活をしないこと

 以上が初めに獣たちに示された。老狸は映画館前に集まる皆に、説いてまわった。とりわけ、第一の法は強調した。街では、山のようにはいかない、ということを教えたかった。狸は人間らしい生活というものを、まだあまり理解していなかったが、人間を尊敬もしていた。老狸は昔、人間の家に飼われていたのだ。そんな老狸は人間の良さも恐ろしさも良く知っていたのだが、いざ自分たちが人間のように生活することになると、まだわからないことだらけだった。

 法を守らせるために、警察が組織された。狼の群れは全部で五匹。この五匹が警察に決まった。狼たちは老狸と仲は良かったが、人間については無知だった。

「狸。お前は果たして、俺たちが人間になれると思っているのか?俺たちは食料がある限りは一に従う。だが、二にもあるとおり、生きていくためには法を破らなければいけない時が来るかもしれない。その時、俺たちは、どうなるのだろうか」

 狼のリーダーは狸に問いかけた。老狸は古い格言を持ち出した。

「郷に入っては郷に従えと言うではないか。我々はまず、お互いに共存できる術を見つけるべきだ。食料は確かに最優先事項だ。幸い、近くに農場があると、鳩から聞いた。それを使ってみよう」

「待て待て、狸。俺たちは肉が食べたいぞ。今はまだ肉は冷蔵庫にたんまりある。少々、冷たいが、我慢して食べている。そのことを知っていてくれ」

 老狸は、この問題を何とかしなければいけないと考えさせられた。だが、肉は獣からしか奪えない。家畜と獣の区別も、まだ老狸にはなかった。

 しばらく、平穏な日々が続いた。老狸は有志の協力をえて、食料(とりわけ肉)の問題を考えた。狐は悪知恵を働かせて、狼たちを街から放逐しようと主張した。これは老狸にとって、甘い誘惑だった。現に狼たちは、他の獣から嫌われていた。好き放題して、暴れ回っているという苦情も入ってきている。

 ある日、老狸は鷹に命じて、流木を川から持って来てもらった。木を組み上げる役目を多くの獣たちが果たした。有志の獣の数は20匹。たいていはほ乳類である。中には亀もいた。亀は痴呆気味で、物忘れが激しい。うっかり、計画を狼にばらしてしまった。5匹の狼は老狸につめよる。

「亀は少しぼけている。そんな亀の言うことを真に受けるな。私との友情が信じられないか?この木は遠くに住む牛を生け捕りにするためのものだ。大きさを見ろ。狼が入っても広すぎる」

 狼は納得した。そして、牛を食べれるのかと思って喜んだ。狼のリーダーは仲間に言った。

「ほれみろ、狸を信じよう」

 次の日、狼の一匹が警察の仕事に出たきり、戻らなかった。リーダーは、どこかを遊び歩いているのだろうと、心配しなかった。

 そのまた次の日、狼の一匹がまたいなくなった。今度は狐が暴れているという獣たちからの通報を受けての捜査中だった。リーダーは嫌な予感を感じた。

「狐はずる賢い。それだけに、罠があるかもしれない。これからは、3匹まとまって行動しよう」

 そして、しばらくは何も起きなかった。だが、2匹の狼は帰ってこなかった。

 老狸が狼のリーダーのもとにやってきて言った。

「一匹ずつ行動してくれないか?そうしないと、とても治安は守れない。このところ、また争いが増えているようだ」

 狼たちは渋々、仕事を今までどおりすることにした。

 リーダーは鶏の苦情を受けて、狐の家にやってきた。狐は悪びれずに、狼を家に通した。そこは、とても清潔で、まるで生活感を感じない。不審に思った狼は、狐を問いただす。

とうとう、狐は秘密のパイプラインがあると白状し、狼を案内した。人間たちが作った穴で、その先には多くの家畜がいるらしい。狼は肉を食べれるかもしれないと思い。穴に入った。

 ガッシャーン!!穴の入り口を木でできた柵が覆う。狼は穴の先が行き止まりということに気づいた。

「おのれ、騙したな。狐」

 リーダーは怒ったが、後のまつりである。狼は閉じこめられ、もしかすると、これは老狸の仕業ではないか?と疑った。

 狐は呟いた。


「これで、私の天下がやってくる。老狸は本当に、正義感あふれる奴だ。それを利用してやれば、老狸も破滅だ。後ろ盾のない老狸の言うことなど、誰が聞くものか」

 狐は家の鍵を頑丈に閉めて、狼を残して去って行った。警察がいなくなり、獣たちは、一夜のお祭り騒ぎを楽しんだ。


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