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Mr.ドワーフ!  作者: はには
商業都市ファルフィリア
29/29

ドワーフさんはドブネズミ

まず今回の依頼は最近街に出る盗人を捕まえて欲しいとのことだ。


「なんじゃ、最近噂の魔物の討伐かと思ったわい。」


俺がホッと一息つくとリーラがすかさずツッコンできた。


「Bランクの魔物だよ?Cランクのそれも2人のパーティーの私達に声がかかるはずないだろ。それは既にBチームが複数動いてるよ。」

「それはそうなんじゃがな。」


どうも無茶振りされると身構え過ぎたらしい。


「んで?何故盗人を追いかけるはめになったんじゃ?」

「あぁ、それはね……。」



リーラの話をまとめると最近巷で噂の泥棒がいるのだとか、そいつはとても足が速くスリなどの被害や窃盗が相次いでいるらしい。

そして、豪商の館から宝石を盗んだりと被害が徐々に大きくなってきているので捕まえて欲しいとのこと。


うん、大変だね。

この世界は個人の力が強いからね。中々捕まえることが出来ない盗人とかもいるのだろう。


「じゃが、何故ワシらなんじゃ?こんなもの衛兵の仕事じゃろうに。」


そうなのだ。この街がいくら半独立の商業都市とは言え、一応は国に属している以上治安を守る衛兵は存在する。ならば街の問題は基本的に衛兵が片付けるものだ。


「うん。そうなんだけどね。今回の依頼はギルド長からのものだ。つまり依頼人がってことね。…聞いたところによると知り合いの豪商達からせっつかれているとのことなんだけど、まぁ、なんか考えてんだろね。」



ふーん。


まぁ、考えてもしかたねぇな。どうせ教えてくれないだろうし、下手に探ってヤブヘビはごめんだ。


「ふぬ。なるほどのぅ。しかし、何故ワシがスラムに潜るんじゃ?」

「うん?盗人が1番潜伏しやすい所なんてスラムしかないじゃん。てか、スラムの住人が盗人の可能性濃厚だしね。」


ですよね。

この街は人口約5万人のファルフィリア。この世界の当然と言えばいいのか、でかいスラムが存在する。

広過ぎるこの街で現行犯逮捕は非常に難しいためどうしても潜入する必要はあるのかもしれない。


ただ。


ただ、一つ言いたいことがある。


「何故ワシなんじゃ?リーラでもよかろう。と言うよりリーラの方が向いておろう。」


そう。一般人ならともかくこの世界は魔物を狩れば身体能力はあがる。つまり冒険者に男女差別など全くと言っていいほどない。

倫理っていうより身体能力的にだ。


しかも、リーラはシーフだ。隠密、陽動、混乱、罠設置などを得意とする職業だ。


方や俺は、どう考えても力自慢の戦士タイプだ。魔物と正面切って戦うのは得意だが、はっきり言って前世の記憶のお陰で知識戦にはそこそこ自信はあるが、知能戦には全くと言ってない。


しかし、リーラのことだ。何か考えがあるはずだ。


すると、リーラは手に持ったエールを飲み、ゆっくりと口を開いた。


「だって、私女の子だよ?スラムに潜るなんて男の子のジオの分担に決まってんじゃん?」


………。



ず、ずりーー!


こんな時だけ女の子だしてくるんだ。

普段はあれだけ平等とか気にする癖にこんな時だけ!


しかも、この目笑ってるけど絶対譲りません!って目だよ。マジな目してるもん。


「まぁ、それは冗談としてね。真剣な話私がスラムに行くと…ほら、女でしょ?色々面倒に巻き込まれやすいのよ。それにほら!スラムに潜りこむなら装備とか持ってけないだろ?となると、万が一の戦力的にもジオの方がいいってね。」


と、胸を強調しながら言われた。


うぅむ。確かにその胸なら巻き込まれたい。


じゃなくて、確かに装備を持てないなら俺の方が安心だろう。

スラムの奴らは一般人と言っても、魔物や動物を外で狩ったりする奴もいると聞く。

リーラでも、遅れはほぼ取らないだろうが、万が一もあるし……。


「ね?それに盗人は冒険者って線もあるから私はそっちを探らないといけないし、ジオじゃ出来ないでしょ?……だからジオにはスラムで聞き込みをやって貰おうかなと…。」

「……なるほどの。確かに一理あるの。」

「そうでしょ。じゃ、決定ね。明日から始めるわよ。」

「うむ。」


そうだな。まぁ、俺としてもスラムで情報集めぐらいでビビるほどではない。

丸め込まれた気もするが今回はそれでもいいだろう。


「よし!じゃあジオ。明日に魔法袋預かるね。あと武器とか持ち物一式袋に入れて。明日はこれに着替えて朝に私の宿裏に集合よ。わかった?」

「うぬ。ではまた明日じゃな。」


そう言ってリーラと別れた。

その後いつもの飯屋で夕飯を取り。ひとしきり新しいバトルアックスを愛でて今日はガーノと交換した「清竜」を飲んでゆっくりと寝た。さっぱりスッキリした味はやはり魚を中心とした和食に合わせる味で無性に日本を彷彿とさせるものだった。



---リーラ視点---


うーん、流石に少し罪悪感がある。


ジオに言ったことは嘘じゃない。普通能力値に差が無くとも女がスラムに行くとやはり絡まれる率は高い。となると面倒事も多くなる。そもそも戦闘力など一目で測れるやつなどそう居ないのだから。


そして、今回の犯人は冒険者か、一般人でも敏捷性に補正のあるギフト持ちか、もしくはその両方かだろう。


ジオには冒険者や万が一の為に通常の一般人を調べるなんてことは出来ないだろう。なんせこの街は相当な人数がいるからね。これは私が適役なんだと思う。


しかし、スラムで厄介事に巻き込まれ易いっていうのは普通の女の冒険者の場合なんだよね。


私は「敵感知」というギフトを持っている。このギフトは私に敵意があるか。もしくは私が敵だと認識している相手にのみ発揮されるギフトなのだが、このギフトを使えば私にちょっかいをかけようとしている人なんてすぐに分かるしそれを避けることも撃退することも容易い便利なギフトだ。


これは交渉にも非常に役立っている。


つまり今回私がスラムに行かないのは、はっきり言って私が行きたくないからだ。

こんな喋りかただし、女だからと言って舐められたくはないがこれでも私は女だ。

ジオにはまだ言って居ないが潜伏中は最低でも1週間完全にスラムに染まって貰う必要がある。

当然宿には帰れないし、風呂も入れない、食糧なんかも現地調達だ。

当然服はボロボロのものだし、其れ相応に薄汚い格好になってもらわないとダメだ。

衣食住が全てスラムの中で行われる。


そんなのは嫌だ。断固拒否だ。

私は乙女なのだ。


ジオが騙され易いことを利用したが、止む無しというものだろう。


だって、私女の子だもん。


しかし、少しジオの丸め込まれ易さは心配になってくるほどだな。



---ジオ視点---



今、俺はスラムのど真ん中にたっている。

身に付けているのはボロボロの服と靴と耳まで隠すニット帽、そして身体の至るところに合計で銅貨10枚ほど仕込んでいる。ついでに銀貨も二枚ほど。


どうやら俺は一週間サバイバルINスラムらしい。銅貨はまぁ、飯代だ。スラムにも経済活動というものはある。当然危険は一杯だが。


そして、銀貨は万が一スラムの情報屋を見つけた場合の交渉用だ。


が、はっきりとこれは期待されていない。

そもそも情報屋なんてものは客を選ぶし、隠れている。見つけるだけでも一苦労だ。


ここはスラム。

情報屋に接触して情報を貰うつもりが逆に情報屋に変なヤツが色々嗅ぎ回ってると情報を流される恐れもある。

そういうのは当然スラムを仕切ってるような奴らの所に行くわけで、眼をつけられたくはない。


そのへんのゴロツキならどうとでもなるが、仕切ってるやつらが俺より弱いという保証などない。というよりその可能性は低い。


前も話したがこの世界は個人の力が非常に強い。Sランクにもなれば正面切って軍隊を滅ぼすやつもいる位だ。

当然、国も強い冒険者などは軍に引き入れたりはするから一概には言えないが。


となると、自身の強さゆえに犯罪を犯してしまうものはいる訳で、そう言うやつは盗賊とかになっちゃったりする。


話が少しそれたが、ともかくそんな世界だ。荒くれ者達を従えるのは古今東西力ずくと言うものだが、この世界ではより顕著だと言えるだろう。


そんな世界のスラムの上層部が弱いわけがない。下手するとBランクの元冒険者とかの可能性だってあるわけだ。


そんな中での一週間、身の危険は満載だ。

俺だって色々リーラに言おうと今日の朝口を開いたが、突然リーラが頬に口づけをして可愛いらしく「頑張って!」などと言うもので思わず二つ返事で「おう!」とか言っちゃって出てきたのだ。


猛烈に後悔はしている。


後悔はしているのだが、もう一度同じシュチュエーションになれば断ることは出来ないと断言出来る童○な俺が悔しい。


女って卑怯だ。





しかし、今更自分の愚かさを愚痴ってもしかたがない。

ここは一つ頑張ってみよう。

そう考えた俺はバチっと頬を叩き気合いを入れた。



んで?俺これからどうすんだ?


そうだよ。スラムで噂を集めろったって俺ここに知り合いなんていないよ?

誰かに話かけようにもなんかみんな道端でうなだれたり忙しそうにしたり、怖い人がいたりとどうすれば怪しくないんだ?


どうしよかとトボトボとスラムを歩き回った俺は結果としてスラムの路地に入り座りこんだ。


いや、ホントどうしよ?

考えろ考えるんだジオ。お前は前世の知識がある。いわば知識チート保持者だ。


こんな場合前世では………。


ねぇよ!

日本人がスラムでの生活の知恵なんて持ってる筈ねぇだろが!

てか、日本にスラムなんてねぇよ。


アメリカのハレムに行ってりゃ良かったってか!なんの準備も無しに日本人がいったら身ぐるみ剥がされて人生終わってまうわ!


当然俺にはそんなアンダーグラウンドな知識はない。

精々が学校でならった程度だ。それも別に成績優秀者ってわけでもない。

使えるものといったら理科と数学ぐらいかな?ってか、この世界って地球と同じ法則性とかなのだろうか?

違う臭いな。魔法とかあるしね。質量保存の法則とか何処いったんだってな。


うーん、どうすっかなー。


マンガやアニメなどではどうだったっけ。確か都合よくスラムの中でも優しい人に話かけられて、生き方教わって、仕切ってるグループのBOSSに挨拶して……ってそうだよ!

BOSSに挨拶すりゃいいんだ。


これから宜しくねって。

お金ちゃんと渡すからねって。

スラムのガキが払う金額なら手持ちで一週間ぐらいならなんとでもなるだろう。


そうと決まればBOSSを探さねば!


そう決めた俺は路地に突っ立ってる優しそうなお兄さんに話かけた。


「あのー、この辺仕切ってるBOSSって何処にいらっしゃいますかね?新参者なんで挨拶したいんですが。」


ちなみに俺は気持ち悪いのを我慢してドワーフの口調を消している。これで帽子で耳を隠せば俺はドワーフには見えない。

猿の獣人の子供にしか見えないだろう。


ドワーフ的ブサイクだからな!


「うん?君今日スラムに入ったのかい?」

「はい。」


お兄さんはいきなり話かけられて戸惑ったようだがすぐに優しく笑いかけながら答えてくれた。

男前ではないが、素朴で何処となく安心出来る顔立ちだな。


「そっか、なら挨拶しとかないとね。ついておいでこっちだよ。」


と、お兄さんは俺を更に暗い路地の方まで連れていき一つの建物に入った。


途中お兄さんは柔かに俺の種族や出身を聞いてきた。お兄さんの名前はフースと言って最近ここのスラムに入ったらしい。


俺は種族を猿の獣人といって、出身は適当に誤魔化せないでいると、少し寂しそうに「色々言いたくないこともあるよね。」と言って笑ってくれた。

少し罪悪感を覚える。



俺もフースさんに続くとしばらくして地下に続く階段があった。その近くにはナイフやショートソードを持った男達が幾人かいる。


「怯えなくていいよ。警備の人だから。BOSSはこの下にいる。そして一応の確認なんだけど君の持ち物検査をさせて貰うよ?何も持ち込めないことになってるんだ。」


気まずそうにそう確認してくるフースさん。

ここで、下手に抗ってもしかたないだろう。

幸い。持っているのは銅貨数枚だけだ。

銀貨と残りの銅貨は靴底に隠してある。

バレるかもしれないがこれから保護下に入ろうとするヤツの身ぐるみは剥がさないだろう。


「はい。どうぞ。」


そう言って無抵抗にするとフースさんは俺の身体をあさり銅貨を数枚とりだす。

靴は調べられなかった。


「これは預かっとくね。出てくるときにちゃんと返すから心配しないでね。さて、最後に後ろで手を組んで貰えるかな?君の歳で魔法は使えないとは思うんだけど規則なんだよ。」


そう言って俺の手を後ろに回さして木の板に穴が2つ空いたようなもので固定した。

昔の手錠みたいなやつだ。


それでやっとフースさんは階段の下に連れて行ってくれた。

途中で「大丈夫?足元は見みえる?」と声をかけてくれながら。


うん。スラムにも人情ってあるんだな。

ホントに優しい人だ。


階段を降りきるとそこには厚めの木で作られた扉がある。

フースさんはその扉を開けて俺に中に入るように促した。


中は光がさしており、強面のお兄さん達がたくさんいるようにみえる。


と、いきなり後ろから案内してくれたフースさんが俺を蹴り飛ばした。


フースさんは素早く扉を閉めると、先ほどまでとはまったく違う下卑たる笑顔を貼り付けて回りの強面たちにつげる。


「商品の買取お願いしまーす。」









え?






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