ドワーフさんのお買い物
大討伐によって小金持ちになってから2週間。
俺たちはガーノと共にゆっくりと休んだりドッフルカウを狩ったり森でイノシシ狩りをしたりと割と安定した生活を続けていた。
やはりガーノは強い。はっきり言って力は俺より多少弱いもののリーラより速く走り、リーラより速く近ずくものを感知する。まぁ、それが敵なのかそれとも冒険者なのかはわからないようだが。
そりゃ、簡単だったさ。
ガーノが見つけてガーノが一瞬で勝負を決める。俺たちおこぼれ貰う。
黄金の方程式だ。養って貰う感満載だ。
まぁ、俺たちも戦うことが目的じゃないから有難く頂いたのだがな。
ドッフルカウさんだけは俺頑張りました!
というか、上級ギフト持ちの俺とほぼ同じ力とは。お前スピードタイプだろとツッコミたくなる。
どチートだ。いや、魔物を倒しに倒した努力の結果だからチートではないのか?
チートの定義がわからなくなってきたよ。
途中何度か訓練をつけて貰った。
晩の酒を奢ることが条件で、もし俺が一本取れると金貨一枚くれるらしい。
が、結局一本もとれなかった。というより触れることすらできなかった。
試しにリーラと2人で戦ったこともあるが完全に封じこめられた。
タイプが違うので一概には何とも言えないがランク的に見てもザースより強いのだろう。それはもう滅多打ちだ。訓練になったのかすら怪しい。
最後にリーラの尻をペロンと触りボコボコにされてはいたのだが、あれはどちらかというと避ける気がなかっただけだろう。
それはリーラも分かっていたようだ。が、リーラはしっかりと金貨一枚とっていた。きっちりとしていると言えばいいのか悪いのか。
そんなガーノも昨日ファルフィリアを旅だった。元々同じ場所に長いこといることは無いらしい。
何でもガーノぐらいのランクで同じ所に長いこと滞在すると面倒なことも多いらしい。
ギルドはここぞとばかりに溜まっている難易度の高い依頼を押し付けて来るし、街ではガーノに勝って名を上げようとする命知らずが喧嘩売ってくるなどだ。
俺達は門の前まで送り別れの挨拶をすませた。
しかも行き先は俺の村らしい。なんでもザースの酒が気に入ったので俺の村を経由して何処かの街にでも行くのだとか。
ついでなんで、今まで出すのを忘れていた手紙なんぞを託してみる。
酒を安く売ってくれるかもと預ければガーノは喜んで運んでくれるらしい。
内容はCランクになったことと元気にやってることパーティを組んだことなど大した内容ではない。
因みにガーノは金を沢山持っているから割高で売ってくれと書いておいた。こいつ相当持ってるらしいからな。
ともあれこれで手紙は確実にザースやセリーの元まで届くだろう。なにせAランクの配達員だ。いったい依頼で頼むなら幾らかかるのか。
軽く金貨は数枚飛ぶだろう。
いや、魔貨が飛んでしまうかもしれない。
考えないでおこう。
ともあれ、ガーノが旅立ったあとで俺たちも旅立つ準備を進めている。
理由はリーラが、ギルド長に依頼を押し付けだされたらさっさと移動してしまおうと言ったからだ。
俺たちのレベル的にはこの辺の魔物の最上位が適性だから動くのは少し早かったりはするのだが、なにもそういった場所はここだけではないのだから問題はない。
本来なら出来るだけ早く旅立ちたいのだが、何事にも準備というのはある。
俺は特に前の大討伐で装備品がガタガタになっていたから修理や買い直しに時間がかかるのだ。
ぶっちゃけ無事だった防具は籠手と脛当てとブーツだけだったりする。
ブーツはともかく、流石はワイバーンの籠手。あの激戦にも耐え切ったようだ。何気に俺の装備の中で1番性能が高い。
胸あてはやはり修理が必要だったが、それはとっくに直して貰っている。
では、何が必要だったのかといえば、旅に必要な結界石や食料、その他の雑貨などと俺のセカンド武器だ。
「いらっしゃい。……ってお主か、武器は出来とるぞ。」
すっかり馴染みとなってしまった武器屋の店主ナガルが愛想笑いをしようとしたが、相手が俺だと分かり笑顔をひっこめた。
「うぬ。それを引き取りにきたのじゃ。少し触らして貰ってもよいかの?」
「ふむ。これじゃ、裏で振るのじゃぞ。」
渡されたのは大きな鉄の棍棒。先にいくに連れて太くなっている。
欠けることもなく。しっかりと鍛えた棍棒はずっしりとくる重さだ。
「ふむ。中々のもんじゃな。」
「ふん。最高の間違いじゃろうが。」
外で存分に振り回した俺はナガルのおっちゃんの前に戻ってきた。
そう、本職は鍛治師のおっちゃんは鍛治のほうも実に素晴らしい腕だった。
の割に客が少ないのはこいつの接客のせいだろう。違法ではないがなんか詐欺られた気分になるもんな。
「して、もう一つのほうはどうなんじゃ?」
「今、最終の調整をしとる。時間があるなら待っておれ。てか、店番しとれ。」
そう言って中に入っていくナガル。
いきなり店番を任された俺はたまにくる客にあくせく応対しつつ…ということは無く、誰も来ない店でひたすらアクビをかみ殺した。
「ぬっは、会心のできじゃい!ほれどうじゃ?」
自信満々にナガルが持って現れたのは二つのバトルアックス。
しかし、大きさは普通のより少し小さい。
そう。田舎にいたせいで全然考えなかったのだが、この前ガーノに「お前街中で戦闘になったらどうすんだ?そんなデカイ武器振り回せねぇぞ。街中の戦いは戦争でもねぇ限り裏道なんかがほとんどだからな。」と言われて新しく買うことにしたのだ。
幸いにも今回は資金が潤沢の為、このバトルアックスはすべてとはいかないがダマスカス鋼を混ぜ込んでいる。言わばメイン武器のスモール番だ。
「ふむ。やはり少し軽いかの?」
「うぬ。しかし、そのサイズでこれ以上重くするのは無理じゃ。じゃが、その為の2本じゃろ?」
「まぁの。」
そう。とはいっても街中でも振り回せるサイズになると俺には軽すぎるので二刀流にしてみたのだ。いや、正確には二斧流だが。
とはいえ、重さ以外は良い出来である。こちらとしては全く文句はない。しいて言えばナガルのドヤ顔がウザいぐらいだ。
「うぬ。ではこれを貰うのじゃ。して、いくらじゃ?」
あらかじめ、これ位の値段でという話はしたのだが、最終的にはナガルに任せている。こいつは仕事に手は抜かない、だが、それゆえに値段をはっきりと決めると例えあと一ゴル足せば武器としてのランクが上がるとなっても決してしないからだ。
ソースはリーラだ!
今回俺が指定したのはトータルで魔貨一枚。
装備に金を惜しむとロクなことにならなさそうなので大盤振る舞いだ。
「うぬ。120万ゴルじゃ!!」
ナガルが胸を張って応える。
「……ホントは?」
「うぬ。ホントじゃ!今回は嘘抜きに120万じゃ。」
値段は俺の指定を20万ゴルも上回ってきた。
何をしているんだろうこいつは?俺の話を聞いていなかったのかもしれない。
「……契約違反じゃ。返品で。」
「あぁ、待っておくれ!聞いておくれ!実は少しダマスカス鋼が安くての。この際じゃからと思うた善意なんじゃよ!」
「嘘じゃろ?あまり嘘をつくとホントに返品じゃぞ?」
「……ダマスカス鋼の仕入れ量を間違えたのじゃ。じゃからまぁ……のぅ?」
「返品で!」
上目遣いではにかんだナガルにイラっときてバトルアックスの双斧を突き返す。
それを見たナガルは慌てて譲歩しだした。
「待っとくれ。わかったのじゃ、こうしよう。手斧を2本着けるのじゃ!じゃからそんなこと言うでない。」
手斧か。
確かに大討伐で投げたやつも回収出来てないしまだ予備が有るとしても必要になるのは間違いない。
しかし、ナガルの言うがままは何か嫌だ。
こいつには騙された過去がある。ならば足元見てやろうじゃないか。
「3本じゃ、それ以上はまからん。」
俺がそう言い放つと、ナガルは辛そうな顔を浮かべる。
「そんなー。善意じゃったんじゃよ。強い武器をと思うてな……ぬぅ。わかったのじゃ。それでよい。」
こうして俺はナガルから棍棒と双斧、そして3本の手斧を勝ち取った。
結果として俺は大討伐の正式報酬をすべて使い果たしたが手元にはまだ金貨5枚ほどは残ってるし、装備や持ち物の増強は出来たので満足だ。
「それ、恐らく定価だよ。」
「うぬぅぅぅぅぅ!!」
……またもや嵌められたと気づいたのは1時間後にリーラに会った時だった。
数日してリーラも装備を買い換えたらしい。腰には立派なショートソードをさしている。聞くとオールダマスカス鋼らしい。
羨ましい。
リーラはナガルのおっちゃんから値切りに値切ってこれを作って貰ったらしい。どうもダマスカス鋼が安くなっていたのは本当のようで。
と、これで俺たちが出発する準備は整った。結界石などはリーラがチーム資金で買ってきてくれたようだ。すべて俺の魔法袋に入っている。
こうなるとすることはない。
ギルド長に何か言われる前にさっさと街を出てしまおう。
そういうリーラの言葉に従い、街を出ようとするがここで問題が起きた。
どうやら街の外に流れのBランクの魔物が出たらしい。既にCランクチームが幾つか犠牲になっている。
ギルドはBランクパーティーにこの魔物の討伐を依頼。しかし、この街はデカイ。しかもこの魔物は縄張りを持たず街周辺をうろついているらしい。
中々発見は困難だ。
しかし、何故かCランク以下のパーティーはちょくちょく被害がでる。昨日は西門かと思えば今日は東門と言った具合に出現場所も絞れない。かと言って高位冒険者の前には現れない。
相当に頭がきれるようだ。
恐らくたまに出る変異体だとの噂だ。
こうなると俺たちも出発するわけにはいかない。
ギルド長の依頼は面倒だろうが、わざわざ危ない時期に遠出する必要もないからだ。
そんな感じで出発を先延ばしにして細々と依頼を受けていたとき、遂にギルド長からお呼び出しをいただいた。
時期的に非常に嫌な気がする。
「ふむ。よくきてくれたの。どうぞ座ってくれ。」
「失礼しますわ。」
再び訪れたギルド長室では早速リーラとギルド長がにこやかな笑顔の下で火花を散らす。
今回の俺は絶対に喋るなとの厳命をリーラから受けている。
ジオは答えない、ただの石像のようだ。
「ジオもゆっくりして貰ってよいよ。」
ギルド長はそうやって進めてくれるが、今度の俺はびた一文動かない。ただ困ったように頭を下げるだけ。
「ふーむ。どうも警戒されておるようじゃの。…うむ、ならばジオ。お主は出てってもよいぞ。リーラもお主がおると気を使うようじゃしの。」
ギルド長のその発言の後、俺はリーラを見るとリーラも
「えぇ、ならジオ。お言葉に甘えさして貰って。」
との事だったので俺はギルド長室を出て、ギルドの酒場でリーラの帰りを待つ。
約1時間後だろうか?
リーラは少し疲れた顔で俺の向かいの席に座った。
そしてエールを一杯店員に頼むと、おもむろに俺にこう言った。
「ジオ、あんた明日からスラムに潜って貰うから。」
………はい?




