大討伐依頼 3
俺とリーラは集団の真ん中らへんを歩いている。作戦については歩きながらリーラが説明してくれた。どうやら俺の知らない間にチームリーダー会議があったようだ。干し肉をかじっている所を見ると朝ご飯を食えなかったのだろう。
毎度迷惑かけております。
しかし、なんだろ?皆集団の端の方に寄ってる気がする。まぁ、お陰でゆったり歩けていいのだが。
内容というとそう難しいものでもない。食料などは何時も通りに自己負担だし、今日一日進軍して幾つかのグループに別れてオークの村を囲むように野営する。
そして、朝から集落を奇襲して乱戦に持ち込む。これは向こうにもメイジがいるからだ。そこからは各チームで好き勝手にという作戦だ。
ざっくりしているようだが、俺たちは冒険者だ。決して軍隊ではないので集団戦と言ってもチームワークなんてないしそれが1番理に叶っているのかもしれない。
あとは野営に火は禁止とか、声は極力出さないとか細々した決まりごとだけだった。
野営場所も斥候部隊が目星をつけるらしい。
そして、オークの村に着くまでにでる魔物はきっちりと査定に入るらしい。
道理で皆端に寄るわけだよ。
俺も勇んで倒しに行こうとしたのだが、リーラに止められた。
なんでも、こんな些細なことで体力を使うことはないらしい。万が一怪我でもすると阿呆らしいし、本命でしっかり稼ぐとのこと。
そして、俺たちの作戦は俺が主に戦闘でリーラが俺が戦いやすいように補助してくれるとのこと。また、俺が怪我を負って戦えなくなるとリーラが担いで戦線を離脱してくれるらしい。
リスク管理まできっちりと、流石リーラさんです。
よっ!この中間管理職!
リーラから説明を受けていると隣から大きな豹柄模様が視界を覆う。
かなり大きな豹の魔物だ。
「うお!」
思わず研ぎたてのバトルアックスを構える。
なんだこの魔物は?見ただけでわかるメチャクチャ強い。リーラを逃がさなければ。今の俺では勝てないだろうが時間ぐらいは稼げるだろう。
てか、なんだよ。こんなのがいるなんてオークの前に討伐隊が消耗しすぎるぞ。
混乱しながらも警戒するようにバトルアックスを構えていると上から声がかかる。
「ハハハッ、悪ぃーな。驚かせちまったか?こいつは俺の騎獣でガリオってんだ。大丈夫だから安心してくれ。」
上を見上げるとそこにはイタズラが成功したように笑うガーノがいた。
「うぬ。心臓に悪いのじゃ。して、この魔物はなんじゃ?」
高位の冒険者は自分専用の騎獣を持つと聞く。これは単純に魔物を負かせて調伏するのではなく魔物によって調伏の仕方が違うのだとか。
「あぁ、こいつはタビルルバ密林の奥に住むリスムって魔物だ。強かったぜー。調伏すんのに1週間もかかっちまった。」
Aランクのガーノが調伏に1週間もかかるってどんな強さだよ。
てか、オークの村なんてガーノとガリオで潰せるんじゃね?
「あら、皆歩きだっていうのにいいご身分ね。」
リーラは呆れたように皮肉を返す。
「まぁ、怒るなよ。俺はこれでもAランクだからな。特権ってやつさ。」
ガーノも肩を竦めて返事を返す。キザったいポーズではあるがガーノがやると様になるから腹がたつ。
「で、そのAランク様はなんのようなのかしら?」
「冷てぇこというなよ。一緒に飯くったなかじゃねぇか。驚かせたことは謝るよ。いやな、ガリオが嬢ちゃんの干し肉に興味深々のようでな。暇だから話がてら寄ったんだ。それなんの干し肉だ?」
ガーノがガリオから飛び降りて俺の隣を歩きながら質問する。それに少しキョトンとした様子でリーラは答えた。
「これ?これはドッフルカウの干し肉よ。それがどうかしたの?」
「おぉ、やっぱりそうか。こいつドッフルカウが大好きでな。でも、ドッフルカウは保存が難しいだろ?だから、今持ってねぇんだ。良かったらちょっと分けてくれねぇか?」
「いやよ。」
「!?」
リーラのあまりの即答にガーノが驚く。いや、俺も驚いた。別にいいじゃんちょっとぐらい分けてあげても。
「ん?いや、そういう意味じゃないのよ。私保存食として必要分しか持ってないから分けてあげれないのよ。」
驚く俺たちをみてリーラは慌てて情報を付け足す。
「あぁ、そういうことか。冒険者だし当たり前か。俺は魔法袋持ってるからそういうの忘れてきてるんだよな。…ならどうだ?俺の保存食と交換しねぇか?ドッフルカウよりは高級な肉だぜ。」
「それならいいわよ。」
そういいながらリーラは背蓑から干し肉をとりだす。
「ありがとよ。そら食え!…えっと、どこに閉まったんだっけな?」
貰った干し肉をガリオに放り投げてガーノは魔法袋を漁りだした。
これでもないあれでもないと漁るガーノ。
コイツ中身整理してないな。
魔法袋を持つ俺だから分かることを思いながらガーノが取り出してはしまうアイテムを見ているとチラッとあるものが見えた。
見た自分を疑った。あれとこんな所でであおうとは。震える声でやっと見つけた干し肉をリーラに渡しているガーノに尋ねる。
「の、のう。ガーノさんや。先程チラッと取り出したアレは何かのう?」
「あん?あれって………?」
訳のわからないという風な顔を浮かべたガーノはしばらく考えてニヤッと顔に笑みを浮かべた。
「これのことか?」
「お、おお!それじゃ!」
おもむろに取り出したのは「清竜」と書かれたラベルが貼られる一升瓶。
「気になるだろう?これは東の方の国の主食の米って穀物から作られる酒だ。こっちで買おうと思ったらかなりの値段がするだろな。最もコイツは流通が少ねぇからコッチでは買えねぇけどな。俺も酒は好きだからよ。行った時に買いだめしたんだ。」
そう。それはザースが持っていた「世界銘酒100選」にも掲載されている酒で前世でいう日本酒に分類されるものだ。
米の存在は知ってはいたがこんな所でこの銘酒を拝むことになろうとは想像もしてなかった。
「の、のう。それを譲ってくれんかのぅ。ワシもドッフルカウの干し肉ならもっとる。それもリーラよりもっと多くじゃ。」
リーラと違い俺は貰った干し肉を魔法袋にいれて持ち歩いている。あんな宿には置いて置けないしな。
干し肉をまとめて取り出すとリーラは俺が魔法袋を持ってるのを見て「なっ!?」と声を出すが今は気にしてられない。
ガーノは多くの干し肉を見て少し考えたが悪い顔を浮かべて答える。
「いや、コイツは中々譲れねぇな。俺もあと2瓶しか持ってねぇんだ。買いにいこうにもガリオの足でも3ヶ月は掛かっちまうからな。」
うぬぬ。足元みおってからに。
横で「お前魔法袋持ってるんなら早く言えよ!私だけ荷物持ってんのバカみてぇじゃねぇか!」とリーラが言葉使いを忘れて言ってきてるがそんなのは関係ない。
しかし、どうしよう。諦めることはできない。でも、俺は今手放せるような高価なものは持って無いしガーノも俺が持つようなもので欲しいのはないだろう。
そう悩んでいるとガーノから声がかかる。
「まぁ、変わりの美味い酒と干し肉なら考え無くもないんだけどな。」
つまりザースの酒を寄越せと言っているらしい。しかし、アレはザースが俺に託した逸品。皆で飲むなら未だしも交換の道具として使うのは憚られる。
「これすげーんだよな。癖が無いっていうかスルリと喉を通るような飲み口で魚とかあっさりしたものから肉なんかにもあう酒でよ。」
ガーノが続けざまにそう言った。
…………。
………。
「おっ?毎度ありー!」
気づくとザースの酒を1瓶渡していた。
いいよね?まだ樽にはいっぱいあるし。無くなりゃ帰ればいいんだもんね。
俺が清竜に頬ずりしているとリーラが俺の頭を殴る。
「ジオ!これも魔法袋に入れといて。中のやつは戦闘で使わないものばかりだから。あと他に何か隠してることは?」
「うぬ!ありませんじゃ!」
リーラからの背蓑を魔法袋に入れて敬礼をする勢いで返事を返す。
「ならよし。そういうものは隠さず有効活用しないと意味ないでしょ。」
ふーむ。そういう物なのか、確かにいくら高価だからとひた隠しにしてもちゃんと使えなければ持ってる意味はない。隠してると戦闘中にも取り出せないしね。俺の場合は物置と化していたもんな。
リーラに謝ったあと清竜も魔法袋に入れてリーラと並んで歩きだす。
「あと、その酒私にも今度飲ませろよな。」
リーラがボソっと囁いた。
「いやじゃ。」
「えっ?」
真顔で返すとリーラは驚くようにこちらを見返す。
「絶対にいやじゃ!」
「いいじゃん!それだけ有るんだから一杯くらい飲んでもいいじゃん!」
「やじゃー!これはワシんじゃー!」
「ケチくさいこと言うなよ。私魚好きだから興味あるんだよ。今度飯奢るからさ。」
「いらんのじゃー。ワシのったらワシのじゃー!」
「ガキか!?」
「なんと言われてもいやなんじゃー!」
「そんなこと言うなよ。今度良いことしてやっから。なっ?」
「う、うぬ?そ、それなら。」
「反応してんじゃねぇよ。このエロガキがっ。」
「!?」
うぬぬ。俺の純情を持て遊びおって。絶対に分けてやらんぞ。
隣では再びガリオの上に乗ったガーノが大声で笑っている。
こんな所で騒いでいいのかと思わんでもないがオークの集落はまだ遠いし魔物は周りの皆さんが狩ってくれるから安心だろう。
夜には斥候部隊が準備した野営場所についた。
すいません。本来なら今回でオークとの対決まで入る予定だったのですが、無駄な会話が入っためもう一話続きます。
次話は文字数が多くなると思いますので明後日か明々後日になると思います。




