力のステータスが減ってます
みずきがトンビ50匹に襲われた次の日、地球の衛星軌道に停泊させたバーサスフレームに付いてるワンルーム(広い宇宙を旅する機体なんで、生活空間がある)で、アリスやリッカと配信をしてた。
私のいつもの光景である。
「あ、ジュースこぼれた」
肘が当たって、ローテーブルからジュースがこけた。
ここは宇宙だけど、バーサスフレームには重力制御装置があるので、1Gに保たれている。
「ティッシュが遠い。〖念動力〗」
私は物を動かすスキルを使って、ティッシュを引き寄せた。
すると、アリスとリッカがため息を吐く。
「スウさん・・・・」
「そんな横着を、また筋力のステータスが下がるぞ」
私は机を拭きながら返した。
「順調に下がってるよ」
「ダメじゃん!」
「ちょっとマジに運動しましょうか!」
みずきとアリスが、私の応答に大慌て。そんなに?
❝草❞
❝これはひどいwww❞
❝期待を裏切らないな(草)❞
おっと、配信中だから、みずきを脳内でもリッカって呼ばないと。
ミスって本名言っちゃう。
いやもうみずきの本名は私たちのファンの間では広がりきってるんだけども――このちびっ娘、生き方が猛将すぎて、本人が普通に配信で本名を口にするから。
「よし、運動に連れ出すぞ」
「総合アミューズ施設行きましょう!」
アリスとリッカが、なんか最悪な相談をはじめてる。
それって、外 + 運動 + おそらく人。私の大嫌いな物てんこ盛りじゃん!
「イヤ、絶対イヤ!」
圧倒的拒否を示す私だったけど、
「トランポリンとかありますよ」
「えっ」
「ボールのプールもあるぞ」
「えっ」
「卓球もありますよ」
「それは要らない」
あのスポーツ難しすぎるんだもん。
なんであんな小さな玉を、小さなテーブルで打ち合うんだよ。
どんな人なら、あんな小難しいスポーツできるんだよ。
「スウさんは原始反射・・・? でしたっけ。熱いヤカンに触れると勝手に体が動くやつ。あの反射を普段から使えるから、人間を超えた反射ができるのに、なぜ卓球ができないんですか?」
「ひとえに体の使い方が下手だから」
昔、原始反射の訓練したらあっさりできるようになっちゃったんだよね。
でもスポーツは苦手。体育祭で私が1位になったら、みんなが感動で泣くレベル。今年のクラスメイト泣いちゃった。
アリスがスマホで反射神経測定アプリを起動して机に置いた。
やれってこと?
「ポチポチポチ・・・」
原始反射を自由に使えないと、訓練場に籠もってやってた〈発狂〉デスロードっていう超難易度訓練はクリアできないから、あれのクリアには、必須スキル。
アリスがドン引きながら口元を押さえて、結果を口にする。
「0.98、0.90、0.54、1.25、0.06。――人間の反射神経って平均0.25とかですよね? そして脳の命令が筋肉に到達するのに0.1秒は掛かるから、0.099以下は、人間じゃない」
人間だよ?
❝人間じゃねぇ❞
❝人間じゃねぇ❞
人間だよ?
するとリッカが赤い紙の容器に入ったポテトを摘みながら言う。
「ていうか、コイツこれでも弱体化してんだぞ――FLの終盤、完全に極まってたからな。人外の反応、人外の操縦の連発だった。なのにFLで戦った経験の大部分を失って」
「それでもゼロ・ゾーン――明鏡止水には入れたけどね」
ゾーンも昔、訓練したんだよね。こっちは原始反射と違って、結構大変だったけど。でもこれも〈発狂〉デスロードに必須。
「わたしが明鏡止水を指導したらあっさりだったな。あれはちょっとビックリした。サード・ゾーンを使って植物人間になりかけた時、よっぽどの経験をしたんだろうなぁ。あの時スウの脳に接続したVRへスキルで調べれば見れるかもしれないな」
「そんなの思い出さなくて良いよ」
「でも、あの極まった頃のパワーは、どこかで取り戻したほうがいいだろうなぁ」
私はポテトを取ろうと、赤い容器に手を伸ばす。
うーんこのシナシナ感。実に美味しそうじゃありませんか。
するとリッカが、私の二の腕を掴んだ。
「とにかく、今はこれだ! プッニプニの筋肉!」
「ほっといて!」
「ちなみに二の腕はおっぱいと同じ柔らかさらしい。プニプニプニー!」
「私の胸の柔らかさを感じてんじゃないよ!」
でも、
「トランポリンはやりたい」
アリスの顔が輝いた。
「じゃあ行きましょっか!」
「うんっ!」
アリスがスマホで、トランポリンのある総合アミューズ施設を調べる。
「一番近いのは、川崎のアミューズ1ですね」
「行かない」
急に行く気が無くなった私は、スンとする。
「な、なんでですか!?」
「だって、遠いんだもん。・・・川崎とか、『宇宙より遠い場所』じゃん。たどり着くまで、何駅あるの・・・何回乗り換えするの」
「明らかに宇宙の方が遠いでしょう!? 毎日銀河の彼方に行ってるのに、川崎くらい――同じ神奈川県ですよ!?」
私はアリスのスマホ画面をチラリと見る。羽田空港近くだし、遠すぎる。
「神奈川県の東の彼方じゃん。ほぼ東京の領地じゃんそこ。江戸じゃん」
「ちゃんと神奈川県ですよ!?」
「川崎ってね、多摩区があるんだよ? 多摩は東京でしょ? はい論破」
「全然、論破された気がしないんですが、それは」
するとリッカだ。
「そもそも川崎が、神奈川県だろ・・・・」
「もう、勝負着いてるから」
忍者がなんか言ってる。ちなみにリッカは、〖水作成〗と〖水操作〗で本当に忍術を使う。水遁忍者。彼女のお家剣術、立花放神捨刀流にも忍術があるらしいし、たまに異名が水影様に変わる変身ヒーローだし。
アリスがスマホで、どこかに電話を掛けだした。
「テコでも動かぬ」
私はあぐらをかいて、ワンルームに根を生やす。
「ほんとかー?」
リッカが私をヒョイと持ち上げた。
「おやめになって!」
「簡単に動くぞー」
リッカが私を持ち上げたまま、くるくる回る。
ちょっと楽しい。メリー・ゴー・ラウンドみたい。――いや、ここは夢じゃないからリアル・ゴー・ラウンドだな。
私とリッカが「きゃっきゃうふふ」してるとアリスが電話を終える。
「はい、よろしくお願いします――」
そしてアリスは、リアル・ゴー・ラウンドする私たちを見て呆れる。
ちなみにメリー・ゴー・ラウンドってランドってよく言われるけど、実はラウンド。
「――なにしてるんですか」
「ゴー・ラウンドしてる」
「くんかくんかしてる」
私とリッカの意見が食い違った。
というか、またれよ。
「私、匂いかがれてたの!?」
「こっそりな」
「汚い、流石忍者、汚い!」
アリスがさらに呆れた表情になり、とんでもないことを言い出す。
「米軍に話を付けました。スウさんはパイロット免許があるので地球でも飛行機に乗れますよね」
「え・・・?」
確かに私は、地球のパイロット免許を取ってある。
以前、ハイジャックに巻き込まれたので、二度とゴメンだと取ったんだ。
「なので、地球でバーサスフレームに乗って、空を飛んでも国に怒られません。しかし私有地や、日本の狭い駐車場にとか、どこでも着陸できる訳ではないので、」
「まさか」
「川崎に近い、米軍基地の横浜ノースドックへの着陸許可を取ろうとしました」
「あんた何やってんの!?」
「『それは・・・・』と、言われました」
「当たり前でしょ!?」
「『どうせなら、川崎港近くに空母がいるので、そちらにどうぞ』と言われました」
「なんでやねん!!」
あり得ない事態に、思わず関西弁になる、私。
「これなら早いですし、問題ないでしょう?」
「なぜ米軍、許可出たし!? というか空母!?」
「着陸許可自体は、二つ返事でしたよ。スウさんはアメリカのSpecial Partnershipですからね。米国の国賓です」
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アリスのスキルです。
一部、涼姫に貰ったので多めです。
■スキル
〖重力操作Ⅳ〗:重力(重力加速度含む)を4分の1~3倍までコントロールできる。アリスのメインウェポン。
〖真空耐性〗:アクティブスキル。酸素が吸えなくても大丈夫(苦しいのは苦しい)。真空での体の膨張、蒸発、ガンマ線、体温低下を無効化。ただし、このスキルを使うと体の熱が放出できなくなり、やがて死に至る。
〖ショートスリーパー〗:3時間の睡眠で十分になる。
〖暗視〗:サーモビジョンのように熱感知して、暗闇が見える。
〖強靭な胃袋〗:食べても、毒や寄生虫の影響を受けない。
〖怪力〗:力が強くなる。
〖飛行〗:空を飛べる(最大時速400キロ)
〖空気砲〗:空気の弾丸を放つ。殺傷力はあまりないが、気絶させるのに丁度いい威力。
〖毒無効〗:毒を無効化する。
〖透視〗:数メートル物体を貫通して見れる。
〖マッピング〗:味方や安全な生き物、モンスターを青点で表示。敵や危険な生き物、モンスターを赤点で表示。有効範囲は直径10キロ
〖超聴覚〗:聴覚強化できる。
〖超音波〗:人間の耳には聴こえない高音を出せる。
〖黄金律〗:すこしだけ印石の出現率アップ
〖自己再生〗:自己再生能力。ただし、再生はゆっくりとしたもの。涼姫の〖再生〗ほどの劇的な効果はない。
〖超怪力〗:力が圧倒的に強くなる。




