最弱の敵と戦います
やってきました3層。
なんか海に水没した街みたいになっとる。
廃墟みたいなビルに、サンゴや海藻が生えてたりしてる。
でも、水はない。
「またぞろ妙な光景だなぁ」
「ああ」
マイルズが、ARの私が初期装備に選んだのと同じ拳銃M1911を構えながら歩いてる。
流石軍人、構えが完璧。
私は買い替えたショットガン。
2人、外骨格ロボみたいな姿でちょっと浮きながら奥へ奥へ。
「この層のザコ・モンスターはなんじゃろな――毎回1種類なんだよね」
「あれじゃないか?」
マイルズが指さした先には――2匹のマンボウ。
「おー、世界最弱の生き物」
「なんだそれは」
「日本のネットミーム」
名前が頭上に出てて◤マーニー◢となってるからあれがこの層のモンスターかな?
そんなのがフワーっと浮いて――えっ!?
なんか急加速して、ベイパーコーンだしてるんだけど!? 傘みたいな水蒸気に覆われるマンボウ。――音速を出そうとしてるんだけど!? 私は奴らに指導を入れる。
「貴様、なんでそんなに強そうなんだ!! 自分のアイデンティティはどうした!? 弱いのがお前のアイデンティティだろ!? ――変形! 痛ーーーい!」
私なんか、変形する度、こうしてアイデンティティを確認させられているのに!
「空中戦になるか、変形!」
私とマイルズは飛行形態になって、水中っぽい空中へ。
マンボウが急降下し、タラコ唇から機関銃っぽいのを撃ってきた。
「ちゃんとダイブ&ズームしてくるし!」
ダイブ&ズームっていうのは上空から急降下しながら攻撃して、相手に反撃される前に上空に逃げちゃう作戦。
これをされると、非常に厄介。
「ドッグファイトに持ち込むぞ! ――スウ、エレメントだ! ボクがリードで、お前がウィングマンだ!」
エレメントというのは戦闘機の小隊や分隊で戦う作戦のこと。
1人が囮になって、もう1人が撃墜する。
ただ、囮作戦をやろうとしても、まずドッグファイトに持ち込まないといけない。
ダイブ&ズームを止めさせないと。
私とマイルズは、まずは逃げながら、ガンガン加速して速度を溜めていく。
空中戦では、速度と高度が大事。これで圧倒的に負けると、あのダイブ&ズームが発動して負ける。
だからそうさせないために、速度と高度で拮抗しないとドッグファイトに持ち込めない。
マンボウが弾丸を放ってくるけど、こっちに到達するまで0.18秒ほど掛かってる。この到達時間なら、私とマイルズなら見てから回避余裕。
2人で弾丸を回避しながら――
「マイルズ、そろそろいける!?」
「頃合いだな、行くぞ!」
「うん!」
2人で左右に散開。
「まずはサークルファイト!!」
ドッグファイトの基本、円で追い合う。
こうしていると、いずれ速い方が相手の後ろに付くことになる。
だから、低速でも勝てるように、色んな空中戦機動という物がある。
もちろん、他の意味の空中戦機動もあるけど。
「マンボウ、私を舐めるな。そんなのに当たらない」
私は、半円のバレルロールを左右に繰り返す。
すると、山型のレレレ(FPS用語で、左右に歩く動き)みたいになる。これを空中でされると、弾丸が非常に当てにくい。
「それに、そうして、いつまでも弾丸を撃ってると・・・」
弾丸は、相手の機首より先を撃たないと当たらない――偏差があるから。
で、相手の機首より先に自分の機首を向けていると、いずれ追い抜かしてしまう(これを追い越しと言う)。そうしたら攻守交代だ。
ただ、もちろん追い越しを防ぐ機動もある。というかこれが一番、数が多い。
「そろそろ苦しいでしょ、追い抜いちゃうよ?」
相手に機動の気配。
私は背面飛行に移行。
相手が機首を上げた。
ハイ・ヨーヨーという、追い越しを防ぐための機動に入った!
機首を上へ向けた――この瞬間、相手は、こちらを撃てない状態になる。
だから私は、背面飛行のまま、Uターンするように降下。
そうして相手の後ろ側に飛んで、
「前に誰もいませんよ?」
相手の後ろについた。
私が空戦FPSで編み出した必殺技〝†ラスト・ロンド†〟だ。
名前は・・・・編み出したのが中学2年生の時だったんだ。深くは追求しないで。
元々、ネーミングセンスが全く無いのもあるし。
後ろを取った私は、マンボウに向かって、私のぶら下げてるハイパーカノンを発射。
ハイパーカノンはマンボウの薄っぺらい体を、真っ二つにしましたとさ。
「よし、マイルズの援護に!」
私はマイルズを追いかけているマンボウを、後ろから機関銃で撃ちまくる。
するとなんか、マイルズが驚いた。
「スウ――!? 待て、お前を追いかけていたマンボウはどうした!?」
「えっ、倒したよ?」
「お前、なんで1人で倒してるんだ!? 普通、ドッグファイトは2人で相互支援しながら撃墜するものであってだな!?」
「そんなこと言われても、倒したもんは、倒したんだもん」
「くっ、ソロプレイ最強のお前に言っても無駄か・・・空戦の座学が、こいつだけには、本当に通じない」
人生ソロプレイ期間ながかったからね!
遮蔽物もなんにもない空中では、数の差は決定的な戦力の差。やがてマイルズを追いかけていたマンボウも、爆散しました。




