第87話 事務所契約成立!
そこからは話がトントン拍子に進んだ。
何かって、事務所の契約の話。
事故物件のもとになっていたものを排除したけど、悪い噂は残る。
そこに、事故物件を解消した事務所が入ってくれると言うので、管理会社が大喜びしたわけだ。
家賃は安いままを約束してくれた。
そのうち交渉で、段階的に戻していきたいらしいから、そこは社長や鳥乃さんの交渉力次第かなあ。
事務所の前に軽トラがやって来て、そこに荷物を詰め込んでいる。
えっ!?
事務所の全荷物でも、軽トラ一台なの!?
「あまり物を買う余裕も無かったからね……。そして急拡大してからは、物を買う暇が無かった……」
半分が社長の私物であるベッドと衣装ケース、趣味のものが入った段ボール。
あとはPCにロッカーに掃除用具と折りたたみ机、パイプ椅子。
「あれしかないと、事務所に運び込まれてもスカスカなんじゃ……」
「だろうなあ……。予算はあるから、鳥乃くんに色々見繕ってもらうつもりだ」
「お任せください!!」
鳥乃さんが腕まくりしてみせた。
背中の羽根がバッサバッサ羽ばたいている。
こうして軽トラでぐるっと回って駅向こうの新事務所に行き……。
業者さんの手を借りることもなく、社長とリーシュさんが二人で全部運び込んでしまった。
いや、僕も段ボールを運ぶ手伝いをしたんだけど、往復回数が全然少なくて済んだからね。
「悪いね明くん。アイドルにこんな力仕事させちゃって」
「いやあ、本来なら僕って男なので、力仕事は任せてもらいたいくらいなんですけど」
かなり腕力も、男の時のパワーに近づいてきた。
毎日鍛えてる成果かな。
なお、これは花咲里さん的に言うと「あたしの二の腕がまた太くなってる!!」という案件なんだそうで。
彼女は明日帰ってくる予定。
ご両親との水入らずの生活は楽しめたかなあ……。
「あっ、大きい魚を釣ってる!! 保存できるように加工して持ってくるって」
「さっすがー」
僕がスマホを見てたら、横からリーシュさんもやって来た。
謎の巨大川魚を釣った花咲里さんだけど、その魚はモンスターじゃない?
拳で撃破したりしなかった?
色々思うところはある……。
僕らが花咲里さんの休暇について想像を働かせている間に、社長はまた出ていってしまった。
新居が決まるまでの間、ウィークリーマンションで暮らすらしい。
その諸々の準備だとか。
新事務所は明らかに生活できない作りだもんね。
なお、社長のベッドは一時的にここに置いてある。
「さあさあ、ここから忙しくなりますよー! 本日これから到着するように、私が人数分のPCを注文していますから!」
「あっ、はーい!」
「もうひと頑張りしよー!」
すぐに配達業者の人たちがやって来て、大量の荷物を置いていった。
これを三人で荷解き!
「まさか新事務所準備を、女三人でやるとはねー。あ、少ししたら一休みしよ! 私、お茶とお菓子用意してきてある」
「ありがたいです~! 肉体疲労と頭脳の疲労に、お菓子は効きますねー」
「あのー、一応僕は男で」
僕の主張は、二人にニコニコと聞き流された。
僕と花咲里さんを入れて、五人分の机を組み立て終わる。
それから椅子も。
その間にリーシュさんは配線を終えて、PCのセッティングに取り掛かる。
大忙しだ。
「かざりちゃん仕事が早い!」
「全部同じ設計ですから! 一回覚えたら早いです!」
あとはPCを机に設置。
中身の設定は五台分、全部リーシュさんがやる。
「今日は泊まりだなこりゃー」
やる気満々。
明日をオフにしているので、今日はできるところまでやるつもりらしい。
そして僕は、折りたたみテーブルと折りたたみ椅子を展開して会議室っぽいのを準備。
到着してるパーテーションを立てて、部屋っぽい感じにしてみた。
「うーん、本格的……」
「かざりちゃん、実はこういう部屋を作っていく系の作業好きですよね」
「かも知れないです」
段ボールを片っ端から潰していた鳥乃さんが戻ってきて、僕の横に並んだ。
うーん、いい仕事したなあ。
なお、これだけ物を広げても、まだ事務所は半分以上空きスペース。
広い、広すぎる……!
「着替えスペースも作らなきゃですね! 私の見立てでは、ファイヤー・アンド・ウインドはこれからどんどん大きくなっていく会社ですし。新たなスタートは私たち五人から! ここからどんどん成長して、業界で存在感を見せつけてやりましょう!!」
「おー!」
「おー!」
僕とリーシュさんで拳を突き上げるのだった。
なんだろう。
楽しいー!
その後、戻ってきた社長を交えてお菓子を食べたりなどし、今後について話し合った。
「ちなみに明くんの踊ってみたショートが三日で100万再生を突破した」
「ええーっ!!」
これには僕も含めてみんなびっくり。
なんでそんなことに……。
「コメントに『このショートを流したら家の霊障が止まりました!』『肩が軽くなりました!』とか色々おかしな感想が流れてきてて、どうもこの動画が除霊とかお祓いに使われてるらしいんだよね」
「なんでですかー!?」
「ほら、一昨日の配信で、明くんエコバッグを数珠代わりにしてここにいた家鳴りを祓ったでしょ」
「祓いましたねー」
「なんか術とか魔法とか奇跡とか、そういうのじゃなく、明くんは様式とか型の力で効果を発揮するタイプなのかも知れないね。何ていうんだろう……。世界がお約束を覚えこんで再現するみたいな……」
「謎ですねー。なんなんだろうそれは……。術とか全部使えなくなってから、初めて退魔の才能が開花したみたいな腑に落ちなさを感じる……!」
そんな悩みを覚えつつも、リーシュさんが持ってきたチョコケーキやパウンドケーキはとっても美味しいのだった。
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