第59話 楽しさを感じる
うぉっちさんが焚き火を起こしておいてくれたので、ここで魚を焼いて食べる……。
「なんか長尺の配信になっちゃってるけど、みんなこんなダラダラ配信で大丈夫?」
※『作業しながら見てるからセーフ』『こういうのんびりしたのもいいよ』『サンダーの配信の良さは消えてないからな』
「そう思ってくれると嬉しい。あ、魚が焼けた……。どれどれ……」
「使うかい?」
二世さんが醤油をくれた。
「ありがとうございます! どれどれ……? おいしーい!!」
串に刺さった焼き立ての川魚、あまりにも美味しすぎないか?
ガツガツ食べる様が配信されて、チャットがびゅんびゅん流れていく。
※『魚うまそう』『若い子がもりもり食べてるのはニコニコしちゃうわね』『たくさん食べるんだぞ……』
親目線のリスナーがいるなあ。
こうして釣りはそれなりの釣果で終わった。
ボウズ……何も釣れないこと……で終わることも多いらしいから、今回は運が良かったそうだ。
「サンダーが運を持ってきてくれたかな?」
「次回も参加してくれよー。俺ちょいちょいボウズになるんだ」
クジョーさんからお願いされてしまった。
そりゃあもう、ぜひ参加させてほしい!
配信は終わり、その後。
二世さんの車で、打ち上げの会場に向かう。
「なんかこう……。すげえ楽しかったんですけど」
「そりゃ結構だ」
二世さんが答える。
「配信っていうのはリスナーを楽しませるものだからね。配信者自身も楽しんでたほうが、よりそういう感情が伝わりやすいもんだよ」
うぉっちさん、含蓄のあることをおっしゃる。
「そうなんですね。俺、今までなんかプロっぽい事をしなくちゃって必死で、楽しもうって気持ちが全然無かった気がするんですよねえ。でも今日は楽しくて、それでもリスナーは喜んでくれてて、あれ? これって俺の楽しいとリスナーの楽しいが直結してないかって思って」
「そうだなあ。例えば、プロに徹しなきゃいけない時はもちろんある。案件配信や、エンタメとしてのコラボはそうだ。だが、その中でも俺達プロは楽しさを見つけていかなくちゃいけない」
二世さんに続いて、クジョーさんが口を開く。
「楽しいってのはさ、個人的なものなのよ。んで、定量化されてない。俺等の仕事はそれを目に見えるようにやって見せて、それで言語化すること。目で見て、耳で聞いて、リスナーにその場にいるような楽しさを感じてもらうってことだな。もちろんルールはあるし、リスナーに踏み越えてもらっては困る一線もある。だけどその上で、俺らは自分が感じる楽しいを、エンタメとしてリスナーにも感じさせるわけだ」
「な……なるほどー!!」
目からウロコだ。
あたし、ひたすら努力努力努力で、自分の楽しいを余剰だと思って切り捨ててきていた気がする。
楽しんでいいんだ……!
「ってことで、打ち上げ前にだ」
クジョーさんからの提案。
「サンダー、次は俺がバーチャル空間を案内してやる。メット買うぞ、バーチャルメット」
「バーチャルメット!?」
うぉっちさんが後で説明してくれたんだけど、バーチャル空間は専用のヘルメット型ディスプレイとリストバンドで操作する、体験型のゲーム世界みたいなものなんだと。
コンタクトレンズ型ディスプレイも開発されたけど、目の中に入れるって言うんで国の認可とか、眼科医との連携とか色々あって、使用には面倒な手続きが必要になる。
その点、バーチャルメットは被るだけだからすぐ使える。
目に直接映像を送り込むから、視力も関係無し。
「昔は高かったんだけどね、今は五万円まで値下がりした」
「そ、それでも高い……! いや、社長にお願いすれば買ってくれるかな……?」
SNSで連絡したら、すぐにOKサインが出た。
『フリーサイズの買って! 俺も遊ぶから!』だそうだ。
社長と同じメット被るのは抵抗があるなあ!
ま、お金を出してくれるんだし、いいか……。
男四人(あたしは魂が女だが)で電気量販店に寄り、PCアクセサリのコーナーでバーチャルメットを買う。
でかい……。
なお、最新型は普通に三桁万円くらいする。
買ったのは世代が二つ前のタイプだ。
「配信で本格的にバーチャルやってくなら、いいのがいいけどな。まずは入門用だし、こいつで十分! おら二世、トランクに詰め込むぞ」
「クーラーボックスとか入ってるんだぞ? 入るかなあ……」
大きな段ボールを抱え、立体駐車場へ。
荷物の配置をみんなで、ああでもない、こうでもないと首をひねりながらいじり、どうにか収まった。
……なんか、買い物して荷物しまってるこの瞬間も楽しい。
なんだ……? なんだ今日は……?
何をやっても楽しくて仕方ない。
「おっ、サンダー、ずっと笑ってるぞ。いいじゃないの。楽しいってのはいいことだからな!」
「いやー、なんかずっと楽しいんですよ」
「おうおう、おじさんたちが、もっともっと楽しいことを教えてあげるからな……」
「言い方があぶなーい!!」
ゲラゲラ笑う俺達なのだった。
男同士で遊ぶの、楽しすぎる!!
お、女に戻れなくなるぅ~。
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