第44話 感傷に浸る暇がない!
拠点の施設をバタバタ走る僕。
『十万人記念グッズ、この機会に宣伝して! 今同接三万人いるから! リーシュさんが宣伝用の資料速攻で作ってくれたから!』
「ええーっ! 僕今、配信しながら追いかけられてるんですけどーっ! あと、一応感傷に浸ったりとかしたいんですけどーっ!」
『そんな暇ないよー! 今すっごいチャンスなんだからー!』
「ひーん」
※『配信中だぞw』『かざりんと社長の生々しいやりとり!』モチョチョ『十万人記念グッズ!?』今川『なんでおじゃ!?』
「えーとえーと、風神号、資料出してー! はい、これでーす! うわーっ! 説明する前に襲ってこないでー!」
「こ、こいつ! エコバッグから1/4カットキャベツまで!」「法具による攻撃をカット白菜とカットキャベツで次々に受け止める……!?」「この動き、退魔師としての正式な訓練を受けた人間の動きだぞ!」「いや、だが……遥かに強いっウグワーッ!!」
金堂さんごめーん!!
ちょっと宣伝するからね!
「えーと! 今日事務所に帰ってから、10万人突破記念の特別ボイスを収録します! なな、なんとー! このボイスのシチュエーションをこれから募集していきまーす! ……って、ええーっ!? 戦いながらやらないといけないのこれ!? むちゃくちゃだよー!!」
「ウグワーッ!?」「法具を弾かれたと思ったら、眼の前にキャベツが! ウグワーッ!!」「身のこなしが早い!」「隙がない……!!」「白菜とキャベツの二刀流で、我らが完封される……ウグワーッ!!」
※『かざりんの動きがキレッキレだ!!』『このコこんなに動けるのか!?』『受けたと思ったら攻撃に移って、攻撃が終わった瞬間受けの体勢になってたぞ!』もんじゃ『恐らくは以前の肉体だった時に、法術の弱さを補うために体術を極限まで鍛え上げたのが、今になって猛烈なバフになって返ってきているんだろう』回転『なるほど、鍛え抜いた体術が同接を受けて今花開いた……!』
最後の一人が吹っ飛んで壁に叩きつけられ、気絶した。
ほんと、みんなごめんなさい!
忙しいので先行きます!!
壁の向こうから、大音量の音楽と打撃音と「おらららららっ!!」という声が聞こえてくる。
花咲里さんだ!
元気にやってるなあ。
向こうにもたくさんの退魔師が集まってると思うけど、あっちはクラスメイトのファノリーさんが一族のみんなと一緒にバックアップしてるからね。
葉月ママ繋がりで、僕のことも応援してくれるらしい。
きっと、配信者の後援団体みたいなものなんだと思う。
応援助かるなー。
「えっと、モデレーターさんが安価で皆さんのコメントから拾い上げるのでー! ちょっと僕、御本尊まで走りますねー!」
※回転『かざりん、この施設の内部構造にとても詳しい』『迷いない足取りだ』モデレーター『15:30分の三番目に表示されたコメントのシチュエーションを採用します』『なにぃ!』『うおおお初恋ボイス初恋ボイス』『チャットで寝落ちもちもちボイス! 寝落ちもちもちボイス!』
「み、みんな楽しんでるなー! あっ、御本尊への道を塞いでる人が二人いますけど、あの人達は上席に続く実力者で、金剛力士をモデルとした法術を会得している凄いエリートです!」
「わ、我らの概要がペラペラと配信で!」「やめろー!! 全世界に公開するなー!」
慌ててお二人が襲いかかってきた!
一人の武器は大きな棍棒に棘がついたもの。
もう一人の武器は錫杖だ。
本来、僕なら手も足も出ないほどの強さなんだけど……。
「あちょーっ!」
叩きつけられる棍棒を、カット白菜で弾く!
カットキャベツは錫杖をガッチリ受け止める!
「なにぃーっ!?」「何だこの野菜は!!」「ええい、わけの分からぬ力を使う娘だ!」「我らの法術で撃破するぞ!」「「喝ーッ!!」」
二人の姿が、筋骨隆々のものに変わる。
ふわふわひらめく布が出現し、手にした武器が金剛杵という、両端が尖った手槍みたいなものに変わる。
そこからバリバリ光を放ちながら、僕を両側から攻撃してくるのだ!
ひええ、関東支部最強と言われるコンビネーション!
ぼ、僕程度でこんなのを受けるのはーっ!
※『うおおおかざりん頑張れー!!』『無事に帰って記念ボイスを収録してくれー!!』『二人きりの秘密でプレゼントをくれる部活の同級生マネージャーボイスを買わせてくれーっ!!』『かざりーん!!』葉月『がんばえー!!』
「何そのボイス~!? さっき決まったの!? えーっ! どういう内容なのーっ!!」
混乱する僕だけど、物凄いパワーが流れ込んできて、かざしたカット白菜が光り輝いた!
白菜から伸びた輝く刃が、金剛杵の攻撃を次々に弾く。
『なにっ!?』『あらゆる魔を祓う我らが金剛杵を!?』『ま、まさかこの娘の力……我らと同根の……!』『もっと強い、光の力……!!』
「お二人とも、ごめんなさーい! なんか拮抗してる場面が長いと放送事故みたいになるっぽいって社長が言ってるのでー! 押し通りまーす!! あちょーっ!」
キャベツをかざすと、そこからも光が溢れ出た。
キャベツの葉状の光がびゅんびゅんと飛び、これが金剛力士化した二人に次々ぶち当たる!
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
吹っ飛ぶ二人!
本尊への道の両側の壁に叩きつけられ、壁面が粉砕された。
『む……無念……!!』『我らは、力を向ける相手を間違っていたのか……!?』
「通りまーす! すみませーん!」
僕はペコペコしながらその場を通過した。
※『カット白菜とカットキャベツつえー』『今夜のかざりんの食卓はなんなんだろうな……』『鍋物じゃないか?』『つまりこれはかざりんにとって、晩飯前ということだね!』『だれうま』
僕が走るのに必死なので、チャット欄の人達がお喋りを始めてしまった。
ちょっと笑いそうになる。
面白いこと言うなあ……。
……とか思ってたら!
御本尊前に到着!
ものすごく広い、お寺の本堂という感じ。
畳がどこまでも続いていて、何本もの柱が立ち並ぶ。
大日如来をベースに改造されたオリジナルの仏像がそこにあって、これが退魔師の信仰の中心ということになっている。
「この御本尊が特異点になって、退魔師は法術という力を得るんです。全員が法術を持ってますけど、それがどんなものかはわからないんです。中には一子相伝の法術もあるんですけど……」
「ええい! 千年秘されてきた門外不出の話をペラペラ話す者は誰だ!? お前かあ!!」
関東支部の長が登場!
僕なんかでは、本来目通りもできないほど高位の退魔師だ!
豪華な袈裟を着たお坊さんの姿をしている人で、百年以上生きているらしい。
既に、傍らにはぐるぐると渦巻く真っ黒な煙を従えている。
いつでも結界を展開して、僕相手にとっておきの妖怪をぶつけられる状態だ。
「あの! なんか世の中は退魔師が隠れている間にずっと進んでるんで、そろそろ退魔師も表に出てきて世の中に協力しないといけないそうです!」
「な、な、なんだとーっ!? 知ったふうな口を……!! ここで何も言えぬようにしてくれるわーっ!!」
その発言まで全部、全国に流れちゃってるんだけどなあ……!
「結界発動! 灼熱地獄日和坊!」
長が結界を使うと、お堂が結界に書き換わっていく……!
僕も知らない結界だー!
「えーと皆さん! ここから先は僕も未知なので、色々推測して教えてくださーい! これからはみんなと作っていく配信になります!」
※『うおおおお!』『見破ったる!』回転『日和坊とか言ってたな。調べてみる……』
関東支部での決戦、ラストマッチかも知れない!
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