第42話 具体的な包囲網
「うおーい明日奈~!」
「ファノリーさん! ……と後ろの人達、誰?」
「うちの一族」
クラスメイトの、健康的な日焼け女子。
土田ファノリーさんが、一族? の方と一緒にやって来た。
ここは宇宙明さんの事務所の地下。
妙にスペースがあるところなんだなあ……。
絶対、陰陽術の儀式とか行うところでしょ。
「やあどうもどうも、土の眷属の皆さん、お越し頂き感謝の極み」
「まだ成長途中の二代目を狙いやがった奴は許せませんぜ! 手を貸しやす!」
一族のいかつい人が、宇宙明さんと握手しているのだ……。
「ファノリーさんの一族って……なんかこう、あまり表に出てこれない系?」
「あー、確かにそうね! 歴史の表舞台には立ちづらいポジションかも! でも、世界には広く浸透してるから頼りになると思うよー! 頼って! うち、明日奈とのつなぎ役を任命されたから」
「は、はあ……。なんか分かんないけどよろしくお願いします」
「当たり障りがない感じで私が説明しようか?」
「あっ、宇宙明さんお願いします!」
「伝説の配信者きら星はづきには、数々の協力者がいたんだよ。その中で、異世界からやって来た魔王の眷属の一団がいた。彼らは魔王を裏切り、きら星はづき側に寝返ってかつての魔王大戦をサポートしたのだよ。彼らはその一団だと思ってくれていい。そして今回、新たなきら星を支持する人々が君の味方についたわけだ」
「これからはうちの一族が護衛するからね! 安心してね!」
「ほえー。ありがとうファノリーさん! 宇宙明さんもご説明ありがとうございますー」
とんでもないことになってきた。
なお、この説明を横で聞いてた花咲里さん本人が、僕の体のままでポカーンとしているのだ。
「あ、あ、あたしの学園生活、隣に魔族がいたんだ……!? 知らなかった~! ってか、あの学校入れるくらいだから、あの面接と身辺調査をくぐり抜けた魔族ってことだよね……」
魔族ということは……つまり妖怪の一種?
ファノリーさんを見ていると、全然そういうの分からないなあ。
「ほれほれ」
ファノリーさんが頭を指差すと、そこにコウモリみたいな大きな耳がぴょんと飛び出した。
「うわーっ! フサフサの耳だーっ」
「むふふー」
得意げに笑うファノリーさん。
一族の人達は僕の反応を見てニコニコしている。
「二代目は初々しくていいね」「早く有名になってオリジナル曲だしてほしいね」「我々歌でノリノリになるからね」
期待をかけられている……!
なお、この間のアクスタがすごい速度で売り切れた理由は、一族の人達も争奪戦に参加したかららしい。
そしてファノリーさんの一族の一割くらいが僕のリスナーだとか。
ひいー、生リスナーとの遭遇!
そしてこの様子を遠目で眺めて、なんだか僕の両親が嬉しそうなのだ。
「明にも友達が……」
「良かったですねえ……」
歓談する雰囲気になってたところで、宇宙明さんがパン!と手を叩いた。
「はい、皆さん注目! 今回集まっていただいたのは他でもない! 東京にある退魔師拠点を襲撃し、破壊します!」
「ええーっ!?」
僕は飛び跳ねるくらい驚いた!
そ、そんなことするんですかーっ!?
一族の人達は、おおーっとどよめくだけ。
むしろニヤニヤしているのでやる気だ!
「頑張ろうね、花咲里さん!! うちら、二代目をチョー応援してるから!!」
作戦が!
始まってしまった!
決行は一週間後。
宇宙明さん曰く……。
「退魔師たちの本拠地は京都なんだ。だが、支部の中でも最大のものは東京にある。そこが先日、上鳴明くんと戦い……かざりくんを襲ったというわけだ」
花咲里さんと、次に僕を見る。
うんうん、そこまでは理解しています。
「本来なら上鳴明くんが、次々と襲い来る退魔師を撃破し、退魔師の存在を世の中に知らしめ、じわじわとその力を削ぎ落としていくつもりだった。だが彼らはよりによって、今世間が注目しているきら星かざりに手を出してしまった! これは実に幸運……いや、向こうにとっては致命的な失敗だった! 退魔師はきら星かざりに敵対する……悪。そう世の中が認識したということだ。しかも、結界術によって霊郭……ダンジョンを作り出す技まで見せてしまったからね」
宇宙明さんがパン、と手を打ち合わせたら、空中に映像が浮かび上がった。
陰陽術!?
「科学技術だよ。ここに私が作ったプレゼン資料がある。要は、かざりくんがここから配信予定を発表。その中で、モンスターやデーモンの集まる新しいダンジョンに突入しますと言ってもらえればいい。上位の退魔師たちは、妖怪を飼い慣らし使役する。これらは間違いなく、人に仇をなすデーモンだからね。大義名分を掲げて叩ける。全て上鳴くんが配信してくれたお陰だよ」
「いやあー。あたしもまさか妖怪が出てくるとは思わなかったですけど……。ってか、退魔師なのに妖怪連れてるとかありなんですねえ」
「あっちは法術によって調伏した妖怪を従えるスタイルがよくあるからねえ」
花咲里さん、ナチュラルに上鳴って呼ばれて反応してない?
馴染んできてる~!
いや、僕もすっかり女子の体に慣れたんだけど。
当初は様々な生理現象に悩まされたものでした。
というか、月々の生理現象が定期的にやってくるようになったような……。
やっぱり、過剰な減量はよくないのでは……!?
「ってことで明日奈! うちら一族が正式にバックアップするよーってことで、その記念にご飯食べいこ! いこいこー!」
「あっはい! いこー!」
「ま、また食べに行くの!? ちゃんと量をコントロールするのよーっ!!」
なんか花咲里さんが、母親みたいな事を言うのだった。
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