第38話 天使の羽?
部室に入ってきたほむらと湊の二人が、家探しを始めた。
なんだなんだ!?
何をやってるんだ!?
「ひぃー、ぶ、部室を荒らさないでくだされ~」
恵美奈がパタパタ走っていって、ほむらに後ろからしがみついた。
「ちょ、ちょっとー! 魔導書を持ってない私を羽交い締めにするなんて、うおおお動けない~! どこで、変身前は非力という私の弱点を知ったのよー!」
「いや、普通に部室を漁られるのが嫌なだけだろ。あった」
湊が何かを見つけたようだ。
「何を見つけたの?」
あたしが後ろから覗き込むと、それは透明なケースに入った白い石だった。
表面に、翼のような模様が刻み込まれている。
「あー、それは卒業した先輩がくれたやつですな。卒業旅行したカリフォルニアで拾ってきたらしいですぞ」
「そうなのか? とんでもないものを拾ってきたな……」
湊は部室の机の上に、白い石を置いた。
「こいつが元凶だ。今も魔力を発している。ほむらが戦闘バカだから、俺はこいつをフォローするために探知魔法なんかを修めてるんだ」
「戦闘バカとは何よー! 最大火力をぶっ放して、スカッとするのが一番いいんじゃない!」
「……な?」
「納得」
あたしは頷いた。
なんかこう……ほむらが他人じゃないような気がしてくる……。
「今の上鳴くんによく似てますな!」
「やっぱそうかあ……」
同類だったかあ。
……ってことは、湊はなんだろう?
明タイプ?
いやいや、最近すっかり、ゆるふわ女子になりつつあるあいつとは明らかに違う。
「こいつは、天使の羽だ。ダンジョンに存在した場合、そこにいるモンスターやデーモンを強化する性質がある。いわゆる呪物ってやつだな」
……とパパが言ってた、と続ける湊。
パパっ子め。
というか、この二人のパパって何者なんだ……!?
「俺もほむらも、何度かこの天使の羽で強化されたモンスターと戦った。この後者の場合は悪霊だったわけだ。倒したとは思ったが……羽の力で生き残っていたとはな」
「悪霊だから死んでるけどねー。ていうか、あんま強くなかったんだけど、もしかして羽は、悪霊が復活できる方向に強化してたってこと?」
「だろうな」
姉弟でポンポン話を進めてくれる。
分かりやすいなあ。
「サンダー。この羽は、世界中にばらまかれている。それによって、最近のダンジョンは以前よりも危険な場所に変わってきている」
「そうだったのか……。全然知らんかった」
「俺達の業界だけにしか知られていない情報だからな。だが、お前に伝えた。これがどういう意味か分かるか?」
「手を貸せってことでしょ?」
「分かったみたいだな。頭の回転はいいらしい」
「湊、なんでチラッと私を見たー! お前ーッ、ここで決着つけてもいいんだぞーっ」
「部室で暴れるのはやめてくだされ~!」
「ぐわあああ柔らかいものが私を捉えて離さない~!!」
生身のほむらは本当にパワーが無いらしく、恵美奈にガッチリ抑え込まれてるな……。
というか、恵美奈は色々大きいんだからそういう事をすると、大きな物が自己主張するだろうが。
湊はそれをしばらく凝視してから、意志の力を総動員したようにぷいっとそっぽを向いた。
「で、では俺は帰る。話は伝えたからなサンダー。これから、ほむらを通じて情報を流すことがある。天使の羽の件の協力を頼むぞ」
湊は足早に部室から出ていってしまったのだった。
なんだあいつ、いきなり早口になって出て行って。
「あいつ、胸が大きい女が好きなの! ほらー! あんたが私を抑えててわちゃわちゃ絡み合ってるから、恥ずかしくなって帰っちゃったじゃん!」
部室の外から、
「言うなよーっ!!」と湊の怒声が聞こえてきた。
クールぶってるけどガキではないか!
ええい、あいつ、明とそっくりかも知れない!
恵美奈から解放されたほむらは、天使の羽を手にして、
「んじゃ、これもらってくから。ここにあったら、また悪霊を引き寄せてダンジョン化するわよ? 危ないでしょ」
「まあそれはそうなんですが……本物のオカルトアイテムだと分かった今、手放すのがとても惜しいですなあ……」
悲しげな恵美奈。
「しゃあない! 恵美奈、今日は帰りに甘いものでも食べてパーッと気晴らししようう! お金はこう言うときに使うもんなのよ!」
「おお! そうですな! 上鳴くん行きましょうぞー!」
途端に彼女が盛り上がった。
部室の鍵を締めて、さあ、帰り道にスイーツを食べに……。
「……ついてっていい?」
ほむらも来るのかよ!
「まあいいけど」
こうして三人で、駅にあるコーヒーショップに入り、クリームたっぷりで数百キロカロリーあるアレンジコーヒーなんだかスイーツなんだか分からないものを楽しんだのだった。
男の体だから、いくら飲み食いしてもセーフ!
燃費の悪い体って素晴らしいな!
「お、多い……!!」
ほむらがギブアップした。
「しゃあないなあ。あたしが飲んでやるよ」
「あ、ちょっと! それ間接キス……!」
「女同士なんだから気にすんな!」
「あんた、体は男でしょー! んもー! 恥ずかしいんだけどー!」
「わ、私のはあげませんからな!」
「別に恵美奈のは取らないってば」
「そうですか……それはそれで、うーん」
こんなやり取りをしているあたしたち。
通りかかった男子学生たちが、
「女二人連れてハーレムかよ」「くそっ、なんでモテ男のとこに複数の女が」「エネルギー保存の法則に反してるだろ」
とか言っているのだった。
残念ながら、これは女子会だぞ。
「……女子会だよね?」
「さあ……?」
恵美奈が何故か笑うのだった。
そんなあたしたちの眼の前、壁面のガラスの向こうを、緑色のAフォンがピュンと飛んでいった。
風神号!?
ってことは、明が配信してんの?
パタパタ走ってくる、ドレス姿のキュートな女の子。
明だーっ。
「なんかやってるわね。見てこ」
あたしはほむらの残りのドリンクを、ズゾゾッと飲みきったのだった。
ええいほむら、何を自分の唇のあたりを触っているのか。
女同士なんだからノーカン!!
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