第37話 アーカイブを見た!
「改めて……。上鳴明! ……いいえ、花咲里明日奈!」
ほむらがあたしに指を突きつけた。
「人のことを指差すのはどうかと思いますぞ」
恵美奈があたしの腕を抱いたまま抗議したが、スルーされる。
むしろ、なんでこいつ抱きついてんのくらいの目でじろっと睨まれた気がする。
「……その呼び名をするってことは、もしかして……。見た? アーカイブ」
「見た。アーカイブ……! あんた……中身入れ替わってるんじゃないわよ!! 私ずーっと、花咲里明日奈といっしょに戦ってたんじゃん!! 騙された! だーまーさーれーた!!」
「騙してない騙してない!! 普通言ったって信じないでしょ。それに何故かアーカイブはずっと置いてあるんだから、誰でも確認できるって」
「そこが信じらんない……。あんなん、すっごいスクープでしょ。なんでずっと置いてあるわけ?」
「……再生数が多いし、事情を説明しなくて済むし……」
「なんで男に入れ替わったかざりが、今人気急上昇中なわけ?」
「さあ……」
あたしにも全く分からん。
ただ、グッズ作ってもらえたのはいいなー、と思うばかりだ。
あたしもグッズを作ってほしい。
この明の体のままでもいいから、グッズを!
「俺も登録してる」
「湊!? 何してんのよ!」
「そうか……男だったのか……。道理でほむらに感じる嫌な女オーラを感じないはずだ……。全てを理解した」
メガネの男、湊がうんうん頷いている。
こいつもこいつで変な奴かもしれない。
もしかしてアクスタまで買ってあるかも知れない。
「そんなことより! あたしをここに呼んだ本題を話せ!」
「あ、忘れるとこだった! それね。上鳴ってさ……いや、花咲里明日奈……? どっちだ……?」
ほむらがまた本題からずれ始めたので、あたしはやつの額を小突いた。
「ウグワーッ! おまっ、女子の額を指で強く突くな!」
「あたしも心は女子だ。迷ったならサンダーでいいから」
「なるほど……サンダーマスクね。それなら迷わない。いい、サンダー? あんた、私達が退治した悪霊をもう一回退治したでしょ。あれってどういうこと? 確かに私達は、あいつをやっつけたはずだった。ねえ湊?」
「ああ。サンダーマスクのアーカイブにあったものよりも強大だったが、間違いなく滅ぼした。それが縮小されて再び出現したのは謎だな。俺は別にこだわりは無いが、やった仕事が不完全なのは気に入らない」
二人が、どういうこと? と首を傾げている。
あたしもあの時の状況を思い起こした。
「なんか……倒したあと、羽みたいなのが出てきた気が……。フケイだかフソンだか言ってたので、法具でジュワッと蒸発させたかも」
「喋る羽……?」
「ほむら。パパが昔、アメリカでそういうのと会ったって言っていたぞ。天使の姿をしてたそうだ」
「あー、パパの話に出てきたあれ? もしかしてあれと同じってこと? でも今になってなんでそんなのが出てきてるのよ」
姉弟だけが分かる話題で話し合ってるな……。
一体何なんだ。
「お二人の父上も配信者だったんですな。そう言えばかつて、リトルウィッチ・デュオを名乗る魔法少女チームがもう一組いたそうですぞ」
「あ、聞いたことはあるかも。あの魔法少女の子供だったりして」
あたしのぶつぶつが聞こえたらしく、湊がこっちを向いた。
「そうだ。俺が魔法少女アクアだ」
「うーん……!! 改めて言われると、あのクールな美少女がクール系メガネ男子だったことに納得感はある……」
唸るあたし。
なるほど、こいつが明のチャンネルを登録してるのは、同類だからだったか……。
だが、同類ではなさそうな一般リスナーが、大量に明のチャンネルを登録しているのは謎だ……。
なぜ受ける……?
あたしが考え込んでいる間に、ほむらと恵美奈の間で話が進んでいた。
「あんたオカ研の部員だったの? ちょうどいいじゃん。鍵開けてよ」
「それは職員室に取りに行かねばですな」
「じゃあ取りに行くわよ。中身を検分しないと始まらないわ」
おっと、腕から圧迫感が取れる。
恵美奈がほむらに連れられて、一階の職員室に向かったところだった。
あたしは湊と二人、オカ研前の廊下に残される。
ここはつい最近までオカルトスポット化していたため、他の部室は一切入っておらず、誰も通りかかることはない。
「……」
「……」
き、気まずい……。
湊はスマホをずっといじっていて、全く口を開かない。
よく見たら、片耳にイヤホンしてるじゃん。
あたしを前にして動画でも見てるのか?
失礼なやつめ!
「……絵面が地味だな」
それだけボソッと言って、じろりとあたしを見る。
「うおっ、急に喋るじゃん」
「あんたのアーカイブ見てたんだよ。あんた、戦い方は面白いし、退魔師って連中を相手に戦ってるシチュエーションも面白い。伸びると思う。だけど地味だ」
「地味ぃ……!?」
「普段着にマスクしてるだけだろ。アバター被った方が良い。エフェクトも派手にした方がいい。今は料理してない素材を、そのまま出してるだけだ」
「うっ、痛いところを……。だけど予算が……」
「きら星かざりが稼いでるだろ。ちょっと予算使わせてもらったらいい」
「あ、あ、あたしが明の稼いだお金を……!? うぐぐぐぐぐ……うーん……うーん」
「苦しんでる……?」
「プライドが……。アイドルやって来たプライドが……」
「そういうのは捨てような? 意味ないからな?」
こ、こ、こいつーっ!
ほむらが冷笑してくるって言った意味が分かった!
こいつ嫌いかもーっ!!
なるほど、こういう態度の男が変身する魔法少女だから、アクアはクール系魔法少女だったわけだ。
憧れが……音を立てて崩れていく~!
知らなくていい現実なんていくらでもあるものなのだ。
でも、アバターに関するアドバイスは間違いないと思う。
明に……頭を下げるか……。
いや、正確には社長にお願いすることになるんだけど。
あたしが、より上に行くためだ。
それに同接が増えると、また退魔師連中とやり合うことになっても有利に戦えるでしょ。
「おっ、帰ってきた。お喋りはここで終わりだな」
湊がスマホをポケットに仕舞った。
ほむらと恵美奈が戻ってきたのだ。
「お待たせー。んじゃ、開けるわよ」
「そこは部員の私が……」
「誰が開けたって同じじゃないー」
あんたら、何、鍵を取り合ってわちゃわちゃしてるんだ。
あたしはこれを見かねて、ガツッと鍵を奪った。
「あっ」
「あー」
「あたしが開ける。誰がやっても同じならあたしがやってもいいでしょ」
ガチャリと鍵が開き、オカ研の部室が開放された。
リトルウィッチデュオは、ここで何かに気付いたりするんだろうか?
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