第36話 なんだなんだ!?
「最近の上鳴くん、配信始めてからちょっとよくない?」「分かる。なんかクールな感じになってていいよね」「しかも強くてかっこいいし!」「何故か恵美奈と一緒にいるけど、あの二人付き合ってるの?」「いやー、ないっしょ」「だったらあたしらがアタックしてもいんじゃね?」
色々聞こえてくるな……。
あたしがいかにして、明に水を開けられた状態を巻き返すか考えているのに。
ぐぎぎ、どう考えても差をつけられるばかりで追いつけない……!
あの男、化け物か。
男から見た可愛い女の子をやる才能に満ち溢れすぎてる。
胸のサイズが2つ上がった話を聞いて、危うくあたしはあたしの体を敵認定するところだった。
そんな増えることある!?
「どうしたのですかな上鳴くん。不倶戴天の敵に手も足も出ないみたいな顔をして」
「半分くらい的確だぞ、その物言い……うおーっ」
机に突っ伏していたから、眼の前にデカいものが突き出されて衝撃を受けてしまった!
ええい、2サイズどころじゃないものを男の顔に近づけるんじゃない。
いや、あたしは女か……。
くそーっ、恵美奈がいいやつじゃなかったら敵なんだが。
この一ヶ月ばかりともに過ごして、乳と尻以外は割と好ましいタイプだって分かってしまったからな……。
ああ、フレアが……。
七咲ほむらが恋しい。
持たざる者が近くにいて欲しい。
だが、あたしの体……上鳴明は恵美奈のことが好きらしく。
精神も肉体もおっぱい星人とはな……!
「いいか恵美奈。俺の相方がついにアクスタを出した。それも一万も生産して売り切れたんだ……! 俺はどんどん差をつけられて……うおお、アイドルとしても……」
「不可思議な悩みですな」
「ああやって悩んでる上鳴くんかっこよくない?」「なんか強さが滲み出る男の苦悩って感じだよね」「彼に何があったんだろー」「やーん守りたくなる」
何か言ってるぞ。
「上鳴くんはあれですな。難聴系主人公の才能に満ちてますな」
「なんだそりゃ」
「悩みがあれば私が何でも聞きますぞってことです。その代わり、名誉オカ研部員として私と一緒に行動してくだされば」
「へいへい、お互い持ちつ持たれつってことな」
あたしは恵美奈と、いかにしてチャンネル登録者を伸ばすかを話し合う。
この間の配信で、登録者数はついに四桁に届いている。
これは凄まじい成果だ。
間違いなく、あたしはこの体と能力を使いこなし、元の姿であった頃よりも活躍できている!
……という事実がまた凹むわけだ。
あ、アイドルの才能は無かったのか……!?
持っていたのが退魔師としての才能だとぉ……!?
その後、休み時間ごとにあたしの机に女子が集団で来て話しかけてくる。
恵美奈がなんか言おうとしたら、女子たちに尻で弾かれて「ウグワーッ」とか言っていた。
なんだなんだ。
男たちからは、棘のある目で見られているぞ。
あたしが何をしたって言うんだ!
そんな昼休み。
明に作ってもらった弁当を食べようとしたら、恵美奈が席を寄せてきた。
集まる女子たちからの視線。
恵美奈が見つめ返す。
なんだなんだ?
あたしには彼女らの間に飛び散る火花が見える……!
「ラノベの主人公かよ!」「突然上鳴がモテ始めた……!」「これは我々も面白くない」「しかも難聴系主人公だ」「あいつモテてる事に気付いてないぞ!!」
なんだなんだ!?
男どもも何言ってんの!?
混乱しながらも、ガツガツと弁当を食べ終えた。
弁当箱も大きいし、肉類と煮物がぎっしりで、その汁がお米に染みてて美味しいし。
満足感あるお弁当だった。
……待て。
同じものを明持っていったよな?
あいつ、あたしの体でこの弁当を毎日食べてるの!?
そ、そ、そりゃあムチムチになるわ……!!
おのれーっ、節制というものを教えてやらなきゃ……!
ごちそうさましながら、わなわな震えるあたし。
そんなあたしのすぐ近くにある、扉が開いた。
メガネを掛けた長身の男子がいる。
「上鳴明って人、いる?」
「あた……俺だけど」
「あんたか」
その男子は、あたしをじろりと見下ろした。
「ちょっと顔貸してくれないか?」
「構わないが?」
お、喧嘩か?
あたしはふっかけられた喧嘩は全部買うぞ?
立ち上がるあたし。
女子たちがざわつく。
男子がどよめく。
「上鳴くんが喧嘩!?」「配信でも腕っぷし凄かったもんね!」「絶対かっこいいって!」「見に行こ見に行こ!」
「上鳴が喧嘩!?」「野郎、どこまでラノベなんだ……」「昔の時代のマンガみたいじゃね?」「話によるとあいつ、配信しててそこでも喧嘩してるらしい」
「当然、私はついていきますぞ」
恵美奈がくっついてきた。
メガネの男子はちょっと嫌そうな顔をした。
「どうしてだ? 付き合っているのかあんたたち?」
「いや全然?」
「似たようなものですぞ」
あっ、あたしの腕を抱くな恵美奈!
ぐわーっ!
圧倒的ボリュームに包みこまれる腕!
敵ーっ!
「まあいい。ついて来てくれ」
メガネが先に行った。
あたしも、恵美奈を引きずりながらついていく。
到着したのは、なんとオカ研の部室前。
そこに、見覚えのある女がいた。
恵美奈と同じ制服を着た、七咲ほむら。
「ちゃんと連れてきたわね、湊。今回は冷笑せずにお使いできて、姉は嬉しいわ」
「双子なんだから同い年だろ。それに、俺は魔法少女なんかやりたくないんだ。それを言うとマリンナがさめざめ泣くから仕方なく……おっと」
メガネの男子が、指をぱちんと鳴らした。
一瞬だけ、彼のシルエットが小柄な水色の女の子のものになる。
そうしたら……後ろについてきていた野次馬が一斉に帰っていった。
なんだなんだ……!?
状況が!
すごい速度で進んでいく!
あたしだけが!
一人、状況についていけてないぞ!!
何が……一体何が起こってるんだーっ!!
「明、改めて自己紹介するわね。私が七咲ほむら。そしてこっちが弟の、七咲湊」
「ふん」
メガネの男子……湊がそっぽを向いた。
「私たちが、リトルウィッチ・デュオよ」
「な、なんだってーっ!!」
同じ学校に、リトルウィッチ・デュオが!?
その片割れが男!?
あたしの腕にくっついて離さない恵美奈が!?
何が……何が起こっているんだーっ!!
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