第26話 戦場は廃校舎だ
とある廃校舎。
あたしが生まれた頃に廃校になり、何度もダンジョン化しているという曰く付きの物件。
あのきら星はづきも、黒胡椒スパイスという伝説的な配信者とともにコラボで攻略したことがあるらしい。
そんな場所に、どうしてあたしが?
「うーん、何度もダンジョン化するような場所は、やはり風格があるねえ」
隣で楽しげに笑うのは、スーツ姿のスラッとした男の人。
陰陽師の宇宙さん。
「ここを戦場にして、君を囮にして退魔師たちをおびき寄せる。これをリアルタイムで配信しちゃおうという方針だ」
「なるほどー! それならあいつらは一方的に殴りかかってくる敵だし、目線で隠したりしなくてもいいですもんね!」
「うんうん、そうなる。いやあ、君は戦闘的だなあ!」
別に戦闘的ではないと思う……!
理不尽には全身全霊で抗うだけだ!
「ひいー、上鳴くん、体を大事にね……。ほんと、いつもヒヤヒヤしてるんだから」
「大丈夫だって社長! 任せといてよ!」
この場にいるのは、宇宙さんと社長、そしてあたし。
なお、今頃明はサバイバルゲームの配信をした後、チームの仲間と打ち上げしていると思う。
あいつとあたしで、天国と地獄みたいな違いなのだ!
「ああ、ちなみに……。ここはとある魔女が狩り場にしてて、スナック感覚で悪霊を狩るためにやって来るよ。運がいいと出会えるかもね」
「なんですかそれ!?」
運がいいのか悪いのか。
まあいい。
あたしは事前に、この廃校舎で配信するとツブヤキックスで公言していた。
きっと、退魔師連中はそれを見たことだろう。
さあ来るがいい。
「それからこれ。うちの事務所から非公式だけどAフォンを貸与するよ。退魔師たちに一泡吹かせるためだ。特別サービスをしちゃうぞ」
「あっ! どうもありがとうございます!! 明だけAフォン持ってて羨ましかったんだよねー」
色は黒で可愛くないけど、雷マークのシールを貼ってデコればいいか!
「じゃ、いってきまーす!」
「いってらっしゃい! ほんと、ほんとに気を付けてね……!!」
社長は心配性だなあ。
二人が去っていったのを見送ったら、その後に不審な車が何台も来た。
退魔師だ!
あいつら、本気であたしを狩る気だなあ?
このダンジョン時代に人間同士でやり合いするなんて、ほんとに無駄。
でも、これが撮れ高になるならやる価値あるでしょ。
実際、この間の襲撃動画は大いに受けたし。
車のナンバーの情報も寄せられて、色々大きい話にもなりかけた。
謎のパワーでもみ消されたけど。
「配信スタート! どーもー! サンダーマスクです! あ、マスク忘れてた。付けました。えー、前回の動画で大騒ぎになったんですが、権利者からのなんかが来て動画が削除されたんで、今回は動画じゃなくてリアルタイム配信でやっていこうと思います! こういう騒動が好きなお前ら、見てるかー!? 行くぞー!」
※『うおおおおお』『リアルタイムで戦うのマジか』『あれ、本当の殴り合いだったのか?』『嘘か本当かは今回分かる!』『楽しみにしてるぞ!』
集まってるリスナーは、ほぼほぼあたしのファンじゃない。
あの動画を見て、なんか凄いことが起こってるって知って、さらに動画が削除されたことにあたしがリベンジすると宣言したので集まった、野次馬だ。
こいつらをファンにする!
退魔師のヤバさを暴く!
この二本柱でやっていくぞ!
あたしはリュックから今回の武器を取り出す。
腰に、コンサートで使う大型ペンライト。色はイエロー。
拳にナックルダスター。
相手が刃物を持ち出してきた時、これなら受け止めても安全だからね。
つま先に金属の補強。
音ゲー、多分全身に判定があると思うんだよね。
使える部分は増やしておいて損はない。
「以上、今回のラインナップ! 俺は手にしたものが一定以上の評価でヒットすると、その回数に応じてパワーアップする法術を使うんだ。後は、校舎の中に落ちてるものでやっていくぞ。みんな楽しんでくれよな!」
※『思ったよりもエンタメっぽいぞ!』『そういう謎のルールがあるんか』『ヤラセじゃないのか?』『現代魔法の儀式魔法だと、こういうゲーミング魔法結構あるぞ』
ほうほう、そうなんだ?
現代魔法はまだ触れたことないなあ。
第一あれ、Aフォンかアバターが必要だって言うじゃない。
……Aフォン、あるな……。
今度宇宙さんにでも教えてもらおう。
生徒昇降口をくぐる。
その途端、周りの空気が変わった。
明らかにこの世のものじゃない。
つまり……ダンジョンに突入したってわけ。
何回攻略されても、また発生するダンジョン。
それがこの廃校舎だ。
「ヒャッハー!! 上鳴明ァ!! 好き勝手やってくれたようだなあーっ!!」
まず一人、ダンジョン入口をぶち破って飛び込んできた!
金色の髪の毛が逆立った男で、パンクな格好をしてる。
で、武器はチェーン。
いいじゃんいいじゃん。
※『すげーやられ役っぽい!』『マジでダンジョン内で人間同士が戦うの!?』『やれー! やっちまえサンダーマスク!』
「はぁ!? 俺がやられ役だぁ!? てめえ、空間に文字が浮かんでるってことは、配信してんのか!!」
「へー、退魔師にも配信知ってる奴がいんのね」
俺は笑った。
「てめー! 笑うんじゃねえええええ!! いけ! 呪縛鉄鎖!!」
チェーンが伸びてくる!
ヘビみたいに、鎌首をもたげ……。
「うし、音ゲーモード!」
あたしは身構えた!
鎖が音を立ててあたしの周りを動いたと思ったら……飛びかかってくる!
「ここっ!」
Good!
補強されたつま先で蹴り上げる!
「なにっ!?」
鎖の戻りが遅い!
あたしは間合いを詰めて、鎖を拳でぶん殴る!
Excellent!
殴る殴る殴る!!
Excellent! Excellent! Excellent!
※『本当に音ゲーだ!!』『ご機嫌な音楽が流れ始めたぞ!』『Hitの評価が見えるの楽しいなこれ!』『サンダーマスクの拳とつま先が光り始めた!』
「アンコモンだ! オララララララララァーッ!!」
拳と蹴りを連発で叩き込む!
鎖にヒビが入り……。
パキィーンッ!と砕け散った。
「ヒギィ、お、俺の呪縛鉄鎖がぁーっ!!」
「後はお前だ、オラララララッ!!」
「ウグワワワーッ!!」
パンク男をボッコボコにしてやったのだ!
奴が白目を剥いてぶっ倒れる。
この間、大体30秒。
外からニヤニヤこれを見ていた退魔師たちが、血相を変えて飛び込んでくる。
多勢に無勢!
あたしは一旦、ダンジョンの奥に退散だ!
「ってことで! こんなノリで次々戦っていくからよろしく! ポップコーンとか食べながら楽しく見てくれよな!」
※『思いの外面白いぞこの配信!』『こんな治安の悪い世界がまだあったんだ……!』『ちょっとコーラ持ってくる!』
この配信中に、こいつらをファンに変えるぞ!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




