第25話 解散前の貴重なお話
「どうもー、お疲れ様でーす。今日はみんな頑張った! かざりんちゃん、どうだった? 緊張した? 疲れた?」
「あっ、は、はい。他の方と配信するの、かざ……サンダーマスク以外とは初めてだったんですけど……みんな親切でありがたかったです!」
この場にいる他の三人が、「初々しーい」とほっこりする。
みんな大人の人だけど、いい人たちで良かったなあ。
こんなに優しい世界があるんだ。
時間は戻って……。
これはサバイバルゲームが終わった後のお疲れ様会。
葉月さんが、大人数の打ち上げはちょっと……と言ったので、二世さんとクジョーさんと僕の四人で個室居酒屋でやることになったのだった。
「僕、未成年なんですけどいいんですか……?」
「お酒を頼まなければ大丈夫だよ。ソフトドリンクも充実してるからね」
注文用のパネルを見せてくれる二世さん。
マスクを取った彼は、ちょっと野性的な感じのかっこいい男の人だった。
「二世さん、なんでマスクをしているんですか? そのままでも人気が出そうなのに」
「ああ、それはね。俺の尊敬する伯父さんがマスクマンで配信してたからね。だから俺だって二世って名前だろ? こだわりがあってマスクしてるわけ。それに配信業界はキャラが立ってる方が受けるのよ」
「へえー」
「そうそう。俺なんか地味だからね……。魅せるために工夫しなくちゃで大変!」
「クジョーはお前、大半がゲーム配信でダンジョンはたまにじゃねえか」
「グルメレポートもしてるぞ!」
「クジョーさんのグルメレポート助かってますよー。主に夕飯のメニューとか、食べ歩きの指標に!」
葉月さんがニコニコした。
ニコニコしながら、パネルで大量のお料理を頼んでいるんですけど!
そこで気づく。
あれ?
葉月さんの左手、薬指に指輪が……。
結婚してる人だったんだ!
ちなみに僕がじーっと見ても、全く気付かない葉月さんなのだった。
こんな凄い人と結婚した男の人って、どんな人なんだろうなあ……。
ということで、ドリンクが運ばれてきて、葉月さんが音頭を取ってお疲れ様の乾杯となったわけ。
僕はアイス緑茶にした。
「ポテトフライとやみつきキャベツとオニオンリングです」
「来た来た!」
葉月さんが大喜びする。
彼女はグラスのビールをごくごく飲み干すと、ポテトフライをもりもり食べ始めた。
うおー、すごい速度でポテトフライが減っていく!
クジョーさんが彼女のグラスに、ピッチャーからビールを注いでいる。
「ささ、どうぞどうぞ」
「ありがとう~」
「いやー、しかしあの葉月さんと同じチームでやれるとは思わなかったな! くじ引きバンザイ! お陰でうちの同接凄かったですよ」
二世さんがハイボールとかいう飲み物を飲みながらご機嫌だ。
「ほんとほんと。まあ、戦力的には特に戦力にならなかったというか、葉月さんの人間シールドで俺がすぐやられたんだけど」
「ごめんねクジョーさーん」
「ああ、いいんですいいんです。レジェンドの肉盾やれたのは美味しいですよ。ハハハ、その後、速攻で葉月さんもやられてましたけど」
「だ、だ、だってBB弾って明らかに危なくないから、危険回避本能が働かないのでー!! サバゲーって難しすぎます!」
「だからって武器投げたらダメですからね! デーモン相手なら百発百中の葉月さんだから許されますけど、基本的にダメです!」
「はぁーい。と、年下の男子に叱られてしまったぁ」
男子二人がドッと笑った。
僕はこの場の雰囲気がなんだか居心地良くて、オニオンリングを食べながらずっと笑っていた。
「それでかざりさん、改めて聞くけどどうだった? 大変なことも多い業界だけど、やっていけそう? 身の危険もある仕事だからね。厳しいなって思ったらやらない選択肢もある」
二世さんの言葉に、僕は頷いた。
「なんとかやってけそうです……! まだ、僕の強みとかあんま分かんないんですけど。でも、こうやって先輩方と一緒に配信したらとても楽しかったですし」
「そうかー。良かった! 何かあったらいつでも相談してくれな」
「それとも、同性の方がいい? 俺の知り合いの女性配信者とか紹介するけど」
「二世さんありがとうございます! あの、えっと、クジョーさん、女の人相手だと僕、緊張するので……」
兄貴分みたいなお二人の方がありがたいです!
葉月さんと二人きりだと、どうしたらいいか困るし。
「ちなみにかざりさんの強みだけど……。君は多分、一生懸命頑張るほど絵面が面白くなる」
「ほえ?」
二世さんが真剣な顔で不思議なことを仰った。
「ど……どういうことです?」
「つまりね、君は朧車と戦う時に、手にしているのがエアガンだと分かっていても、あるものでやらなきゃ! と真面目に立ち向かったわけだ。そうしたらそれにエアガンが応えた。BB弾が光り輝くとか、俺は見たこと無いからね。普段は同接のパワーで、BB弾そのものが威力を持って相手にぶち当たる。だが君のはBB弾に不思議な力が宿ったように見えた。そういうことじゃないかな」
「そ、そういうことですか?」
「かざりんちゃんはいっつも真面目で真剣だから、大丈夫だと思うよー」
既にピッチャーを半分くらい空けた葉月さんが、ご機嫌で保証してくれた。
うーん……!?
「かざりさんはなんでも、真面目に頑張るのでいいってことだよ。今は肩の力を抜かず、頑張りすぎるくらいでちょうどいい。そのうち要領が分かってくるから。俺もクジョーもいつでも相談に乗るからね。ただし、二人きりで会わないこと。男女で二人きりだと色々問題が……」
「ああ、コンプラ的にヤバい……」
男性二人が厳しい顔をしたのだった。
た……大変だなあ……。
僕も心は男なんだけどなあ……。
「お待たせしましたー。ダブル刺し身盛り合わせと唐揚げマウンテンですー」
なんか凄いの来た!
「葉月さん手加減しないで注文したでしょ!?」
「うおお、食いきれるかなこれ……」
「大丈夫大丈夫、私が食べちゃうから」
「あ、じゃ、じゃあ僕もたくさんいただきます!」
難しいことを考えていたら、僕のお腹がぐうっと鳴った。
食べるぞーっ!
……そう言えば、花咲里さんはどうしたっけ。
確か今頃、夜の特別な配信があるって言ってた気がしたけど……。
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