第24話 このイベント、ラスボスがいるんだ!?
気を取り直して、葉月さんを加えて挑む第二戦目。
霊郭を舞台にしたサバゲーだから、同じところにいるはずなのに毎回風景が変わっていく。
※回転『ダンジョン攻略の仕組みをハックしたイベントなんだ。ステージをクリアする目安は出現する大型モンスターを倒した時点。そこで生き残ってるチームがポイントを獲得するってわけだ。クリアした時点でそのダンジョンは踏破されたとみなされ、ダンジョンそのものが新しい階層に切り替わる』
「なるほど、そうなんですねえ……!」
僕がコメントを読み上げると、他のカザトモも『ほえー』『そうやったんや』と感心した。
なるほど、つまりこれってダンジョン攻略も一緒にやってるわけだから、ゲームが進むごとに攻略も進むんだ。
「中ボスがさっきの鵺だったってことだな。本来、かなり強力なデーモンだ。妙にあっさり退治できたが、まあまだ戦力が残ってる時に出てきてくれたから助かったぜ」
「ボスモンスターが出てきても、ヒット判定してたら戦いに参加できないからなあ。今回イージーだったのは、葉月さんがいたバフかも知れねえな」
わははと笑う二世さんとクジョーさん。
「やっぱり現実のほうが単純だからやりやすいですよねー」
あははと笑う葉月さん。
彼女に、二世さんとクジョーさんが「葉月さんはもっと慎重に動いて!」「ゲームは現実と違って遊び感覚でいけないんですよ!」とか言っている。
「あれえ……? 何かおかしい」
あひー、と悲鳴を上げる葉月さんの横で、僕は首を傾げるのだった。
※『かざりんのその感覚は正しい!』『でもこの人の場合、その表現で合ってるんだw』『世の中色々いるからね!』
「そ、そうなんだ……! 世の中広いなあ……。僕の知らないことがたくさんある。教えてくれてありがとうー! あ、じゃあ第二戦が始まるみたいなんで……行ってきます! みんな僕達のこと応援してね!」
※モチョチョ『イエス! ボクっ娘!』『いやあー、本当にいいものですな』『あまりにもかわいい』『Aフォンのカメラアングルがずっと後ろから映してるから、お尻のラインが常に見えてですね』『ふう……』
なんだか妙に評判だぞ。
同時接続者数も増えてきた気がする……。
なんでだろう。
あっ、向こうから射撃が始まった。
僕達は物陰に潜んで、機会を伺う。
葉月さんはフリーにさせておくとすぐゲームオーバーになるので、クジョーさんが担当するみたい。
僕の引率は二世さん。
「よし、行くぞ。向こうも同じ場所でずっと射ってるわけじゃなく、こっちを牽制してから移動するからね。そのタイミングに合わせてこちらも移動するんだ。有利な場所を取り合うことになるぞ」
「は、はい! なんか本当の戦場って感じで緊張しますね……。当たっても死なないけど」
「そうだなあ。当たっても死なないから、何回でも学べるんだ。それでみんな、戦い方を覚える。サバゲーは楽しいぞー」
マスクの奥で、二世さんがニカッと笑った。
ということで、二人でこそこそーっと動く。
二世さん、体が大きいのに動きが機敏だ!
「伯父さんは豪快なタイプだったけど、俺はこういうエアガンを使ったミリタリータイプなんだよな。配信も色々なスタイルがあるわけよ」
「ほええ、そうなんですねえ……。僕はまだ、どうするか定まってなくて……」
「これからだろうなー。なんなら、リスナーからアンケート取ってそれを使うってのも楽しいぜ」
「えー、面白そうです!」
話を聞きながら、僕は遮蔽から向こうを伺う。
あっ、茂みの向こうから誰かが顔を出した。
僕は素早く射撃した。
「ウグワーッ! ヒット!」
その人が手を上げて宣言し、倒れた。
「やった!」
「いいぞかざりさん! 君、飲み込みが早いな。何気に勝負度胸もある」
※『ナイスー!』『ナイシュー!』『かざりん上手いよー!』
「ありがとうございまーす! みんなが褒めてくれるから、僕ますます頑張れます!」
配信画面に向かって、僕は小さくガッツポーズをした。
興奮のあまり、むふーっと鼻息が出る。
※モチョチョ『ああ~^』回転『あまりに可愛い』今川『キュンキュン来るでおじゃ』
「あ、弾切れだ」
「ほい、かざりさん。弾には限りがあるから、無駄撃ちは避けてな」
二世さんから受け取ったBB弾ボトルで、弾を補充する。
なお、このBB弾は特別に調整されていて、今回のイベント公式のタグを持った相手にはただのBB弾。
霊郭に現れる妖物相手には、同接の乗った弾として機能するようになっているみたい。
これ、陰陽術だなあ?
弾の一つ一つにそういう性能を与えるなんて、どれだけ手間ひまかけてるんだろう。
それとも、一気に機能を与えるような術が開発されてたりするのかな。
考えながら移動してたら、向こうから「あちょー」っていう気の抜けた声が響いた。
「おっ、葉月さんが気勢をあげているぞ」
「あれ葉月さんなんですか!? なんかのどかな声に聞こえました」
「彼女は現役時代、あの気の抜けたサイダーみたいな怪鳥音とともに数々の強大なモンスターやデーモンを血祭りに上げてきたんだぞ。そうかそうか、もうそれが歴史になっちゃう時代だもんな」
二世さんがしみじみした。
彼と僕だと、年が十歳くらい違うから、見てきたものもぜんぜん違うのかも知れない。
というか、僕は全く配信とか見てこなかったし。
「話をしてたら……今回のイベントのボスが登場だぞ! このダンジョンは本当にたちが悪くてな。攻略しても攻略しても再生して、こうやってボスモンスターを生み出してくる。今回のは……」
ガラガラと車輪が回る音。
頭上を、大きな車が走っていった。
頭上!?
空の上だぞ!?
それは、古い型の大型トラックの全面に、鬼みたいな恐ろしい顔がくっついた妖物だった。
な、なんだあれ!
「朧車だ! モンスターも進化しているんだよ! 物品と組み合わさるタイプは、明らかに現代の物に近い形をしてるんだ。しかし今回のは……デカい! 今までに無いぞ!」
「そ、そうなんですね!」
ここで運営からアナウンスが入る。
『ラスボスが出現しました! ここからはレイドモードです! 皆さんのパワーでラスボス、朧車を倒しましょう!』
あちこちの茂み、高台から、一斉にみんな立ち上がる。
ヒットで倒れていた人まで立ち上がった。
総勢50人近い配信者が、ワーッと朧車に射撃を浴びせる。
『グガガガガガガガーッ!!』
空中でスピンする朧車。
車輪が火花を散らし、それが炎の塊になって降り注いだ。
「わ、わーっ!」
僕は慌てて、アサルトライフルでこれを払った。
炎の塊が、ボフッと言う音とともに消える。
「おおーっ……! かざりさん、やるじゃないか! 君、登録者数や同接以上に力を発揮するタイプだな……!?」
「そ、そうなんですか!? 僕、よく分かんないんですけど……。でも、みんないつも褒めてくれます。こんな暖かい場所、僕初めてなんで、いつも楽しいです!」
アサルトライフルを構えて、ばりばり撃つ。
弾がもう空っぽになりそう!
「いっけー! あちょー!」
葉月さんの掛け声を真似して、気合を入れた!
そうしたらBB弾が、緑色に光るんだけど!
これが朧車にばりばり炸裂して『ウグワーッ!?』と巨体が傾いだ。
そこに、「あちょっ!」と言う声とともに投げつけられた二丁拳銃が、ガツーンと当たる!
『ウグワワーッ!!』
朧車が絶叫すると、その体は煙になって消えてしまった。
後には一瞬だけ、白い羽根みたいなものが舞い散ったけど……。
僕が撃ちっ放していた光るBB弾に当たり、全部消えてしまった。
『……モンスターの消滅を……確認!! ブラボー! ダンジョン踏破です! 今回のゲームは、ボスの登場が速かったためにダンジョンクリアという形で終了になりました! 後で皆さん、参加賞を取りに来て下さい!』
「や……やった……!」
大きな事をやり遂げた気持ちになって、放心する僕。
そんな僕の肩を、二世さんがポンポンっと叩いて笑うのだった。
「ナイスファイト! どうだ? サバゲーは……配信は楽しいだろ!」
「はい!」
※今川『ピピーッ! ボディタッチでおじゃる! 羨ましい!!』
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