最終話 魔王退治だよ! 全員集合!
コンゼン視点です。
魔王退治を命じられたコンゼンです。
今日は、魔王討伐に向かう仲間たちとの初顔合わせになります。
恐れ多くも、国王様自らが紹介して下さるようです。
「コンゼンよ、神託により、そなたと共に魔王を討伐する仲間を紹介しよう」
「はい、国王様、よろしくお願いします」
「まずは、シュヴァイン男爵家の五男にして新たに準男爵に任ぜられし、ゴノー・シュヴァイン準男爵だ」
国王様がそう紹介すると、鎧を着た少年が前に進み出ました。
顔つきはやや幼く、年のころは15歳ぐらいでしょうか? 成長途中でまだ背は低いのですが、がっしりとした体つきをしています。一見肥満体形のように見えますが、重い全身鎧に身を包んでも軽々と動いているところを見ると、かなり鍛えているようです。盾役の重戦士でしょうか?
「初めまして、勇者コンゼン殿。北方のシュヴァイン男爵家五男にして準男爵の、ゴノー・シュヴァインです。料理や商人との交渉、索敵などはお任せください。後方から万全の支援をいたします」
ん? 重戦士ではなく、シーフのようなサポーター系なのでしょうか?
「この者は、男爵家の五男という立場にもかかわらず、古今東西の知識に通じる大賢者でもある。新しき作物を育てて民の飢えを救い、様々な美味なる料理を作っては庶民の食を改善し、時には我が舌までも驚かせ、国を富ませ強き兵を養いし賢者である。先日の勇者任命式の晩餐会で料理を作ったのもこの者である。その功績は多岐に及び、八度以上の叙勲に至り、国法に則り準男爵に任じた我が国の期待の新人である」
八回を超える叙勲を受けるとは、外見からは想像もつかない賢人のようですね。晩餐会の料理から推測すると、この方も転生者なのかもしれません。
「シュヴァイン準男爵様、よろしくお願いします」
「どうぞ私のことはゴノーとお呼びください」
「はい、ゴノー様」
「次は、転生者の子孫である五条騎士爵家に先日婿入りした、騎士のサー・ケンレン・五条だ」
次の方は二十代前半ぐらいの男性で、スケイルメイルに身を包んだ騎士。ちょっと細マッチョのイケメンです。その美貌で騎士爵家のお嬢様を射止めたのでしょうか?
んん? なぜか背中に甲羅を背負っています。よく見ると、手甲には水かきが、足鎧には足ヒレが、わきに抱えた兜にはクチバシが付いています。腰には剣の代わりに、火縄銃のようなものをぶら下げ、なぜかベルトにはキュウリが数本ぶら下がっています。非常食でしょうか?
「ケンレンやで。騎士と言っても、婿入りして先月騎士に任命されたばかりや。ほぼ平民とかわらんで。まあ、あんじょうよろしく頼むで」
「この者は、先日、盗賊に誘拐された五条騎士爵の当主を救い、その縁で当主の一人娘と結婚して、五条家に婿入りした者だ。なかなか腕が立つらしいぞ」
騎士爵家に婿入りとは、なかなかうまくやりましたね。こんな変な格好をしているのに、婿入りできるとか、人生とはよくわからないものです。
「サー・ゴジョウ様、よろしくお願いします」
「そないなけったいな名前で呼ばんといてや。ケンレンでええで」
「わかりました、ケンレン様」
「三人目は、先日全裸で道を歩いていたので、捕縛して牢に入れていたのだが、神託により魔王討伐の仲間となった男だ。全身毛むくじゃらなので猿の獣人と思われていたが、朝になるとツルツルの人間になるので、とりあえずワーモンキーであると推測されておる。名前は……なんと申したかな?」
んんん? 全裸の獣人で投獄されててツルツルのワーモンキー……、意味が分かりません。
「国王様、あの者は、かの有名なビコーオでございます。自身の全裸の彫刻しか作らないナルシスト芸術家として、一部の業界で熱烈なファンのいる彫刻家でございます」
宰相らしき方が、国王様に耳打ちしています。
両手を縛られたまま連れてこられた男は、全身毛むくじゃらの猿のような姿をしていました。服も腰ミノしか身につてけおらず、ほぼ全裸です。毛の下には、鍛え上げられた筋肉が盛り上がり、猿というよりはゴリラのようです。
見た目は蛮族のようですが、本当に彫刻家なのでしょうか?
「勇者コンゼン殿、吾輩はビコーオと申すのである。特技は空間魔法の大魔導士なのである。よろしく頼むのである」
そう言うとビコーオさんは、一瞬姿を消し、私の目の前に現れて、握手を求めました。瞬間移動ですか!? 筋肉から戦士かと思いましたが、どうやら空の理を悟った大魔導士のようです。
「初めまして、大魔導士ビコーオ様。よろしくお願いします」
「吾輩もビコーオでいいのである」
「はい。ビコーオ様」
呑気にそんな挨拶をしていると、ビコーオ様を連れてきた衛兵が、慌ててビコーオ様を捕まえました。
「こら! 逃亡するな! 奴隷の首輪を絞めるぞ!」
そう言うと、衛兵が何かをつぶやきます。するとなんと、ビコーオ様の首に巻かれた首輪が、ギリギリと締まっていくではないですか!
「その首輪は、奴隷専用のマジックアイテムだ! 死にたくなかったら言うことを聞け!」
このままではビコーオ様が死んでしまい……、全然平気そうですね?
「この程度の締め付けでは、くすぐったいのである。噴破!」
ビコーオ様が気合を入れると、首輪が筋肉の膨張に負けて弾け飛びました。意味が分かりません。
「吾輩の筋肉の前に、この程度の締め付けは意味がないのである!」
この人、大魔導士と名乗っていましたが、もう蛮族で良いんじゃないでしょうか?
おや、国王様が部下に命じて、何か金属の輪のようなものを持ってこさせました。
「猥褻物陳列罪とはいえ、犯罪者を野放しにするわけにもいかぬ。この金属製の奴隷の首輪をつけるように」
「はっはっは、金属に変えたところで、吾輩の鍛え上げた胸鎖乳突筋の前には無力なのである!」
「では、筋肉のない頭に着けるとしよう。マジックアイテムなので、取れることはないぞ?」
ビコーオ様の頭に、金属の輪が嵌められました。早速衛兵が締め付けると、頭蓋骨が締め上げられて痛むのか、ビコーオ様が苦痛に転げまわっています。
「い、痛いのである! 筋肉の無い場所を攻めるとは、卑怯なのである!」
このままではいけません、止めないと。
「国王様、どうかお許しを。今後は、王国の定めに従うように、私が責任をもって監督いたしますので、なにとぞご寛恕を」
「そうであるか。衛兵、止めよ。では、勇者コンゼンよ、呪文を教えるので、きちんと犯罪者を管理するようにな」
「承知いたしました」
「さて、少々手間取ったが、最後に旅の足として、馬を一頭授ける。なぜかわからぬが、神託により、とある牧場で種馬をしていた白馬が指名されておる。あとで衛兵に案内させるので受け取るようにな」
「承知いたしました。様々なご配慮ありがとうございます」
馬までいただけるとは、ありがたい限りです。
「しかれば、勇者コンゼンとその仲間たちよ。魔王討伐、しかと命じる。魔王は遥か西の果てにいると言われておる! 命に代えても成し遂げよ!」
かくして、私こと勇者コンゼンは、三人の仲間と一頭の馬と共に、魔王討伐の旅に旅立ったのです。
三つの蔵を持つ聖人勇者の私、コンゼン爺。
猿のような姿をし、如意棒を持ち雲に乗って空を飛び、頭に金属の輪をはめ、悟った空を操る大魔導士ビコーオ様。
河童のような姿をした騎士のサー・ゴジョウ、ケンレン様。
ブタのような体形の超八回叙勲の準男爵、ゴノー様。
実はリュウという名前の転生者だった白馬。
そして、天使カノンに導かれ、遥か西方を目指して旅をする一行…………、どこかで聞いたような話ですね。
『カノン様、カノン様、ちょっとお聞きしたい事が有るのですが?』
『はい、こちらナーロッバ転生者コールセンター、担当のカノンです』
以上で完結となります。
お読みいただきありがとうございました。
<補足>
西遊記の登場人物
①三蔵法師
名は玄奘、前世の名は金蝉子。観音菩薩から、遥か西方にある天竺から経典をとってくるように命じられる。その際、唐の太宗皇帝(諱は世民)と義兄弟になる。
②孫悟空
岩から生まれた猿の妖怪。美猴王と名乗る。その後、仙術の師匠に、猢猻から孫という名字を、空を悟るようにと悟空という名をもらった。不老長寿を得て、天界で暴れまわり、捕まった。仏の命令で三蔵法師の旅に付き合うことになる。その際、緊箍児という鉄の輪で頭を締め付けることで、暴走を制御されるようになる。
如意棒という棒状の武器を持ち、觔斗雲という雲に乗って空を飛び、毛から分身を作って戦う。
なお、アッフェとは、ドイツ語でサルのことである。
③猪八戒
天界で罪を犯し、下界に転生する際にメスブタの胎内に入ってしまい、ブタのような姿で産まれる。観音菩薩からブタのようなので「猪」という姓と、「悟能」という名前をもらう。仏教の八斎戒を守っていたことから、三蔵法師から「八戒」の名前をもらう。
なお、シュヴァインとは、ドイツ語で豚のことである。
④沙悟浄
元々は天界の役人で捲簾大将と言ったが、仕事で失敗をし、下界の流砂河に落とされる。観音菩薩により、沙悟浄と命名される。
もともとは河童の妖怪ではなかったのだが、日本に西遊記が伝わった際に、河に棲む妖怪ということで、河童と同一視されるようになった。
⑤白馬
名は玉龍。正体は龍である。西海龍王敖閏の第3太子であったが、いろいろやらかして下界に。観音菩薩に命じられて、三蔵が乗る馬に化身した。
⑥観世音菩薩
観音菩薩とも言う。釈迦如来の命令により、三蔵法師一行を何度も救うサポートキャラ。女性でも男性でもなく、女性でもあり男性でもある、よくわからない人物。
⑦釈迦牟尼仏
お釈迦様。観音菩薩に命じて、三蔵法師に西方の天竺にある経典を取らせに行く。
なお、仏には10の別称(如来の十号)があり、その一つが「供養を受け取るのにふさわしい人」という意味の「応供」である。




