第27話 ビコーオ4:無限に生える長い友が欲しいのである!
四人目への連絡です。
「もしもし、こちらナーロッバ転生者コールセンター、担当のカノンです。ビコーオさま、少々念話をしてもよろしいでしょうか?」
今回は、ナルシスト全裸ハゲマッチョウ刻家のビコーオさんにご連絡です。
「うむ、マッチョウ刻をしていただけなので、構わないのである」
今日も全裸で空間転移して、自分の全裸彫像づくりですか。
お変わりなくて残念です。
「お忙しいところ、ありがとうございます。今日は良いお知らせがあって念話をいたしました」
「ほう、カノン殿の方から連絡をくださるとは珍しい。それで、何事であるか?」
「はい、実は創造神から、ビコーオ様に魔王討伐の神託が下りました」
「まおーとーばつであるか?」
「以前、魔王討伐に自己推薦されていたのが、当選したのです」
「はて?」
髪の毛と一緒に、記憶もなくしたのでしょうか?
「以前、ハゲに毛を生やしたいという天をも恐れぬ無謀な願いをされましたので、魔王討伐を希望すれば追加のチート能力を与えられるかもしれないとお話しいたしました。その際、即座に魔王討伐へ立候補されましたよね?」
「思い出したのである!!」
「つきましては、魔王討伐の準備として、追加のチート能力が与えられますので、そのご希望をお聞きしたくて、ご連絡を差し上げました」
「おお! もちろん願いはただ一つ! 毛である!!!」
「ですよね」
「すべての毛根から、力強く太く長い毛が欲しいのである! いや、死滅した毛根も多いので、毛根自体も増やしてほしいのである!!」
「承知いたしました。ただ、毛を生やすだけですと、ポイントが余ってしまいますので、もう少しいろいろ要望を出していただけますか?」
「むう、そういわれると……。そうであるな。吾輩、自由な髪形を楽しむことにあこがれているのである」
「となると、髪を自由にカットしたり、自由な形にしたりする能力ですか」
「そうであるな、あと、髪の色も自由に変えたいのである! 髪染めは髪に悪いからと、したことが無かったので、あこがれているのである!」
「承知いたしました。それでは、創造神に申請しておきますね」
「頼むのである!」
さて、ぼけ老神に伝えますか。
「許可が下りました。大体願い通りの能力になったようです」
「おお! さっそく試してみるのである!」
そう言って、ハゲマッチョウ刻家が力むと、一気に毛が生えました、……全身から。
「なんというか真っ黒な毛玉で、妖怪っぽいですね。毛羽毛現でしたっけ?」
ハゲマッチョ改め、毛玉マッチョ、いえ、ケダマッチョの爆誕ですね。
「……なぜ、全身の毛が伸びたのであるか?」
「申請した時に、『すべての毛根から力強く太く長い毛を生やす。毛根も増やす』と書いたので、頭だけでなく、全身の毛根が増えて、毛が生えたのかと」
「どうにかならんのであるか」
「毛をカットして調える能力もあるので、それで何とかなりませんか?」
「ふむ……こうであるか?」
ケダマッチョさんが力むと、全身の毛が1cmぐらいの長さにカットされます。
全身に短い毛が生えたマッチョ……、ゴリラかな?
「体をツルツルにしないんですか?」
「毛を抜くなんてとんでもない!」
「ですが、その状態だと、全身が毛だらけで、猿の獣人のようですよ?」
「ツルツルの輝かしい姿より良いので、構わないのである」
「まあ、ビコーオ様がそれでいいのなら構いませんが」
どうせ翌日になれば、不老の効果でまたツルツルに戻ってますからね。
ハゲマッチョと、ケダマッチョを行ったり来たりですか……。
どちらにせよ、ムサイことには変わりありませんね!
そんなことよりも、ちょっと気になることがあります。
「あの……、切断した毛が、なんかモゾモゾ生き物のように動いている気がするのですが」
「そうであるな。『毛を自由な形に変える能力』を試しているのであるが、なぜか切断した毛も動くのである」
「はぁ!?」
「こんな感じで、人型にもなるのである」
全身の毛が切られたので、ちょうど人間一人分ぐらいの体積がありました。
それを人型に纏めて、能力で動かせば、毛玉ゴーレムの完成です。
「意味が分かりません、いや、能力的には分かるのですが」
「それから『毛の色を自由にする能力』を使うと、ホレ、吾輩そっくりになったのである」
「キモッ!」
思わず本音が漏れてしまいましたが、ケダマッチョが二人に増えたら、鬱陶しくて仕方がないと思うのです。
よく見ると毛玉ゴーレムだと分かりますが、色が付いたので、遠目には分身したように見えます。
「さらに、毛はいくらでも伸びるので、分身もいくらでも増やせるのである!!」
「……ま、まあ落ち着いてください」
これ以上むさくるしくなるのは勘弁してほしいところです。
「ところで、その分身たちはどうしますか?」
「そうであるな、せっかくの長い友たちである。捨ててしまうのは惜しい……」
「いやいや、捨てましょうよ!」
「……ん? 宙に浮かべることもできるのである」
「それも『毛を自由に動かす能力』ですか?」
「そうであるな。そして、宙に浮かんだ毛玉に乗ることができるのである!」
「宙に浮いた毛玉に乗ったケダマッチョ……」
「空中を移動できるので、非常に便利であるな! やはり髪能力は神能力である!」
「せ、せめて毛玉の色を、金髪とかにして、明るくしましょう。黒のままだと、黒い悪魔が黒雲に乗っているみたいです」
「ふむ、分かったのである。全身の毛もちょっと脱色して茶髪にしてみるのである」
「そういえばビコーオ様、ポイントが少し余ったので、なにかアイテムを差し上げようかと思うのですが、ご希望はございますか?」
「そうであるな、何か武器が欲しいのである。今までは拳で殴っているのであるが、ちょっとリーチが欲しいのである。しかし、吾輩の筋力だと、下手な武器ではすぐ曲がってしまうので困っていたのである」
「では、分厚い鉄板のような両手剣などはいかがでしょうか? 丈夫ですよ?」
「吾輩、刃筋を立てなければ切れない剣は苦手なのである。できれは、剣以外のものが良いのである」
細かい操作が苦手とか、相変わらずの脳筋ですね。
「では、ビコーオ様の筋肉を生かせる打撃武器として、棍を差し上げましょう」
棍というか、ただの長い鉄の棒です。ただし、神鉄を使っているので、早々曲がることはないでしょう。
「うむ、力を込めて殴るだけでいい棍は使いやすいのである!」
そういうと、分身を相手に棍を振り回して、練習を始めてしまいました。
まあ、満足したようなので、そっと帰りましょう。
ケダマッチョさんはしばらく運動した後、全身毛むくじゃらになったことで、汗が溜まって背中が痒いのか、鉄棒で背中を掻きはじめました。
そういえば、孫の手のように、かゆいところに手が届く道具を、『如意棒(意の如くになる棒)』というらしいです。
ふむ、金色の空飛ぶ毛玉に乗り、如意棒を振り回し、薄茶色の毛に全身を包まれた猿のようなマッチョ。時に毛をむしって分身を作り出す……。
どこかで見たような設定ですが、気のせいですよね?
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