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龍生の部活は神崎の好奇心をくすぐる。

1日頑張りましたね! きっと1秒1秒があなたを進歩させているはず! 頑張ってくださいね!


はいそこー、二次元の嫁想像しない。

 二人は逃げて走って中庭の横を通る廊下にやってきていた。


「はぁ、はぁ、はぁ。死ぬかと思ったわよ」

 神崎がらしくない息の切り方で膝に手をついた。

 龍生はそれをよそに平然を装い、

「がはぁ……だだだいじょうぶだ。なんにもつかれていななない」




 それほど笑いも怒らなかったところで、龍生は息を整えた。

 するとこう言う。

「ミーケ先生は撒けたろうからあとは見つからないように情報収集だな」


 神崎も息を整えて呆れた。

「でも、情報収集って言っても、一番の情報源は事件現場じゃない? そこには警察がいて、入れてくれないわよ?」


 龍生はウンウンと頷いて、

「どうだ? 小説じゃここら辺をお膳立ててくれているからな。情報集めも簡単じゃないんだよ」


 得意げな彼が琴線に触る。

 神崎はつまらなそうに、

「でも、心当たりがあるんでしょ? ただ逃げたわけじゃないとか?」

「ああその通りだ」



 龍生はそう言うと、廊下を進む。



 神崎は無我夢中に走ってたどり着いたこの場所について尋ねた。

「ここに何があるの?」


「ここは見ての通り、一階の中庭に当たる場所だがここからまっすぐ東の方に進めばフリースペース。そして食堂だ。そこに続く道には脇に階段がある。その階段の下に、俺たちの部活動があるんだ」


「そういえばあなたの部活ってなに?」


 すると龍生はもったいぶって、

「ふふふ、なんだと思う?」


 会話をしながら階段の下の部室へとやってくる。

 龍生はその扉を勢いよく開けた。




 扉の先は小さな部屋。

 もともと用具入れだったことが窺える。

 部屋中に大量の本とDVDが並んでいて、あまり広い部室とは言えないようだ。


 しかし、その立ち並ぶ本とDVDのタイトルを見てふと気がつく。

 全て神崎が知っている探偵物の作品だ。


「ちょ、なにこれ? たくさんの推理小説がこんなに……」


 神崎は目を白黒させて部屋に見入る。

 龍生は部屋の中に声をかけた。


「おい、起きてるか? 錐先きりさき、客だ客。茶でも出せ」


「う、ふわああ。もうそんな時間か、おかえりなさいませんご主人様。人間の従者を連れてらっしゃったんですね?」


「ねぼけるのも大概にしろ、男がファンタジーのメイドカフェみたいなこと言うな。茶だ茶」



 錐先の標準語は聞こえるが神崎は姿を確認できなかった。

 その時、部室の壁を向いた回転椅子が大きく動き、そこから人が立ち上がる。


 彼の黒髪でツーブロックは少々似合ってなかったが、それよりもだるそうに見えて仕方がない。

 錐先が茶を汲むため近くのポットをいじっている隙に、龍生は神崎を部室に招き入れ扉を閉めた。



 するとその流れで龍生が錐先の紹介を行う。

「あいつは錐先忍きりさきしのぶ。中学から知り合いだ。ここにある本の大半はこいつので、DVDは俺の。情報収集担当だ」


 神崎が思わず手を上げて龍生の紹介を止める。

「ちょっと待って、ここはなんの部活なの?」


 龍生は気がついたように、

「そうだな、それから話そう」


 錐先が茶を汲み、中央の本の山に置くと、

「まさか、部活のこと教えてないのに連れてきたのか?」


 龍生はニヤリと笑って、

「錐先、この子は神崎慧見。偏差値85以上のバケモンだ」

 錐先が感心して「ほほ〜、花園崎に引けを取らんとは。俺も勉強を教えて欲しい」


 神崎はその話を遮って、

「なんの部活なの?」

 龍生は仕方なく告げた。

「見たらわかるだろ? 推理研究部だ」




 神崎はその言葉を聞いてようやく納得した。

「だったら早くそう言ったらいいのに」

「すまん、これくらいならわかりそうだと思って」

「必要ないところまで推測させないで」



 神崎と龍生の会話を見て錐先は楽しそうだ。

「よかったじゃないか。女の子の友達ができたな」



 龍生は首を振って「俺がそう思っていても神崎はそう思っていないさ。なにせ、俺は犯罪者らしいからな」

「何言っているんだ?」錐先が首をかしげる。



 その間に神崎が驚いて、

「もう犯罪者なんて思ってないわよ! それに、私の考えを勝手に決めないでくれるかしら? 被害妄想もいいとこよ、ほんと」



 龍生は本の山の前に座る。茶を啜って錐先に尋ねた。

「それより、今日何か変なことなかったか?」

「変なこと? それならいっぱいあったぞ。甘栗先生がミーケ先生に隠れてタバコ吸ってたとか、桐原先生がラブホに行ったとか」

「ラブホ行ったのかあいつ」



 龍生は頷いて、

「それにも興味はあるが、今回は違う。南の教室で射殺事件があったんだ。発砲音を誰も聞いていない。監視カメラには音が録音されていたから発砲はしているはずなんだ」



 すると錐先が「ほほ〜、だから強制帰宅か。それなら一つあるぞ。今日は三年生が体育館で集会を受けていたな。五時間目にその集会があって、ちょうど1時15分から10分にかけて大行列で会議室の前を移動していたんだ」



 錐先が続ける。

「するとどうなる? 三年生が五時間目までにすべて体育館に到着したとすると、使用されてたい通路は誰もいなくなる。大行列でその通路は使えなかったから、他に生徒はいない。その時間なら発砲音があっても気がつかないだろうな」



 龍生はそれを聞いて頷き、

「なるほど、そのタイミングが映像を細工されていた時間と重なり、カメラには見事に映ってなかったんだな」


 神崎はその場の流れを止めるようで申し訳なかったが、つい。

「ごめんなさい。そういえばあなたも帰らなかったのね。殺人事件だってわかってたの?」


 尋ねられた錐先は腕を組んで、

「いんや、俺は元からここにいた。俺たち6組は五時間目が自習なもんで、暇な時はこの部屋のDVD見漁ってる。担任の谷川さんは生徒の指導のモットーとして『適当に的確に』を掲げてらっしゃるからな。全然ばれなかった」



 神崎はこの際と思い、さらに踏み込む。

「そういえば、大阪に来てから関西弁をしゃべる人と関西弁をしゃべる人がいるんだけど、どうして? みんな関西人なんでしょ?」



 錐先の代わりに龍生が答える。

「それがなぁ、大阪弁を文字で見ると標準語圏内の人間はエセ大阪弁で解釈するだろ? それが嫌なんだよ。とくにコ○ンくんとか、コ○ンくんとか、コ○ンくんとか」

「喧嘩売るのやめて」神崎がガクガクうろたえる。


 錐先が話を戻す。

「もうええわ、その話じゃなくて事件の話をしよう。今回の事件、お前はどう思っているんだ? 監視カメラを見れば容疑者くらいわかるだろ」



 彼が龍生を見つめてそういうので龍生は顎に手を添えて、

「確かに、今回の事件はもう三人まで容疑者を絞り込めているからな。言ってしまうとその三人以外はありえない。そこで聞きたいんだが、黒のスーツを着た太った男と新任の英語教師のことを知っている人間はいるか?」



 錐先が本の壁に背中を預けると、

「いいだろう、でもそれを聞くなら俺よりも金色虫こんじきむしに聞いた方がいいんじゃないか?」


 神崎は「こんじきむし?」と首をかしげる。


 龍生が錐先に尋ねた。

「また図書室か。あいつもお前も本当に楽しそうだな」

「いやいや、お前に時間が少なすぎるだけだろ」

 二人の会話を理解できない神崎がいた。



 龍生が部室の扉を開けて周囲を確認。

 そのままゆっくりと外へ出た。

「じゃ、図書室行ってくるわ。錐先、お前は花園崎に容疑者の画像を用意してもらってくれ」


 錐先は「あいよ〜」と軽く了解したが、神崎は慌てて龍生に続く。

「まって、私も行く」

「お前は残ってろよ。見つかりやすくなる」

「叱られる時は一緒よ」



 錐先は遠のく会話を聞きながら少しホッとしていた。

「ようやく、お前と歩めそうな人間を見つけたな」


ずん、ずんずんずんどこヒデキ!

小島だよ!

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