体育の時間(デストロイ方式)
二回に分けて投稿します。オネシャス。
今回はみなさま期待の超次元バトルです。推理はまた別の機会に……。
「おーし、お前ら。集まったみたいやな。誰も遅れてないな?」
ミーケの大阪弁が語尾に殺意を込められたものだった。
後者の中庭に集合して三角座りした生徒たちがミーケの威圧にさらされていた。
しかし、男どもは震え上がるが、女はまるで何事もなかったかのようにミーケの指示を待つ。
「今回の授業は『リ・アクション』の強化改め、ツッコミのキャッチボールしまーす」
神崎は蓮能寺がどこからか調達してきた丈の短い体操服を着て廊下の石柱に背を任し、その様子を見守っていた。
ミーケがその退屈そうな姿を横目に「神崎はまだあんまり馴染んでないみたいやから、見学しときな」
するとミーケは一瞬目を瞑り、次の瞬間大声で、
「起立!」
『はい!』とその場の生徒が皆立ち上がり、
「散開ぃい!」の声で瞬く間に中庭の中に広がっていった。
神崎は軽く瞬きをした。
ミーケが叫ぶ。
「ボールとバットの用意!」
しかし、周りにはボールもバットも無い。
いるのは手ぶらの生徒達だけだ。
それにバットはキャッチボールには使わないはずだ。
ミーケが腕を組んで腹から声を出す。
「投球準備用意!」
「「「はい!」」」
手前の高杉、杉浦、河合が大声で返事をして手ぶらのまま投球フォームに入る。
この三人の相手に山田、蓮能寺、龍生が立ち並んだ。
他の生徒たちも特に返事をしないまま同じく投球フォームに入る。
ミーケが続けた、
「よし、まずは肩慣らしから! バッターは各々『武器』の準備をしろー!」
「はぁ?」神崎が思わず首をかしげる。
それでも授業は先に進んだ。
すでに投手たちはどこからか野球ボールを手にしていた。どうやら投げる準備ができたようだ。
するとミーケが大声で、
「構えて! 溜めて! 投げろ!」
「「「なんでやねん!」」」
声に合わせて手前の三人が野球ボールを投げつける。
するとバッターもどこからかバットを取り出し、容易く吹き抜けの空へと打ち返した。
「投げろ!」ミーケが叫ぶ。
「「「もうええわ!」」」
又しても高杉たちはどこからかボールを投げつける。だが、龍生たち直ちに打ち返した。
「最後や!」ミーケが叫ぶ。
「「「どうも、ありがとうございましたぁ!」」」
ミーケの声に高杉たちが同じくどこからか調達したボールを投げつける。
そして容易く打ち返された。
「よーし、ええかんじやぞー」ミーケが頷いて満足げに「わかったか? 神崎」
「わからないですよ……」
神崎はもう慣れたとばかりに苦笑いだ
ミーケは頭を掻いて面倒そうに、
「そうかぁ、仕方ないなぁ。じゃあ龍生、お前の席、隣やろ? 教えたってくれ。私には体で覚えろとしか言われへんからな」
龍生は言われたまま高杉とともに神崎の元へとやってきた。
神崎ら心から呆れて、
「そもそも、これは何の意味があるの?」
「命を守るためだ」
「そこからおかしいんですけど」
尋ねても龍生からは意味不明の返答しか得られない。
すると高杉が軽く頷いて大阪弁で、
「龍生の言う通り、この授業は自分を守るためのもんや。なにせ、この学校では『リ・アクション』が上等すぎてたまにけが人が出るくらいやからな。それに、この能力はおもろいやつがおもろなかったやつを殺してまうこともある。それだけに身につけておかなければならない術や。さっきの野球ボールはツッコミの具現化。各々のバットはそれに対するツッコミの具現化。つまり、ツッコミをツッコミで返していたわけやな」
「ますますわからないわ」
理解が進まない神崎を横目に、ミーケが統制をとる。
「お前らー! ウォーミングアップが終わったから『デストロイ方式』で行くでー! 一人が生き残るまでやりやー」
そして彼女は軽く屈伸運動をして二階の校舎の窓に飛び乗ってしまった。
「はぁ? 今どうやったの?」
神崎が目を見開いていると、龍生と高杉が彼女を囲った。
「おい、お前は右を頼む!」
「おーけー、左は任せた」
「いったい何が?」神崎が戸惑う。
高杉が彼女に振り返って、
「聞いてたろ? 能力で互いを攻撃し、最後の一人になるまで戦わせるんだよ」
「そんな馬鹿な!」
「いいから! だから俺たちがお前らを死守する! これはチーム戦でもいいんだからな」
すると滝松が珍しく体操服姿でこちらに突撃してきた。
「はははは、これは洗礼だ! 考える間も無く散れぇ!」
龍生と高杉が反応する。
「おい、いきなり素人狙ってきたぞ」
「あいつの得意なのは筋肉ツッコミだ。突っ込んでくるぞ?」
「そういう意味のツッコミじゃないでしょ!」神崎が叫んだ。
しかし滝松は止まらない。
「もー!」と走ってこちらまであと二メートル。
筋肉が最大限に活かされた突進がまるで大型車のようだ。
だが、龍生と高杉もひるまなかった。
「ダイナミックソード!」
「中二病ブックス!」
二人は大きな剣と漆黒のノートを手にした。
「あんたたち正気なの!」
神崎が叫んだのもつかの間、滝松が迫る。
そして「もー!」と接近したその瞬間だ。
「「ダブルキーック!」」
「ぐぁあ!」
杉浦と河合が滝松に左から凄まじい飛び蹴りを同時に見舞った。
闘牛のごとく大きな巨体が右の石柱に叩きつけられる。
杉浦と河合が龍生たちに加わり、神崎の包囲網ができた。
高松が感極まる。
「お前ら!」
杉浦と河合は各々の盾と剣を手に、
「高杉、俺たち三人でやってんじゃねぇか」
「俺たちも頼れよな」
高杉が杉浦と河合から良い言葉をもらったところで、龍生は神崎に振り返る。
「ルールはわかったか?」
「わかるかぁ!」
龍生は頷いて「そのツッコミがあれば大丈夫だな。いいか? この能力の理屈は、要は『ノリとツッコミ』だ。 そのうち片方をマスターしているお前なら、そのうちわかる」
すると一行の目の前に山田が歩いてきた。
「すまんみんな。俺も仲間に加えてくれへんかな?」
「「「「「絶対いや」」」」」
「なんでや! 神崎さんまでなんでや! 頼むわ、俺やられたくないねん!」
龍生が一言、
「おい奈良県民。鹿になれば人間とみなされないから、攻撃はされないぞ?」
「あ、そっか〜、鹿になればいいんや〜。じゃあ今から遺伝子を操作してしかになろう〜。って、俺鹿とちゃうわ!」
手慣れたノリツッコミである。
すると瞬間。
「うらぁあああ!」
右の石柱から滝松の声が聞こえた。
一行が警戒。
彼はどこからかサッカーボールを用意しており、そのボールにキックが衝突するその瞬間であった。
ボールが大きく形を変え解き放たれると、それはピーナッツのような形のまま山田に直進する。
「な、なんや! ちょっとまってぇえ!」
山田は避けようと右に飛び跳ねた。
しかし、滝松の蹴ったサッカーボールはそれを予想して軌道を途中修正。
山田の腹部に命中。
「ぐふぅ!」
唸り声。それと同時に、
——ボキッ!——
何かが折れた。
そのまま山田とサッカーボールは左の石柱に叩きつけられる。
高杉が青ざめた。
「おい……なんか折れたぞ?」
杉浦が首を振って、
「そんな馬鹿な! 勃ってたって言うのか? 勃ってたのか?」
河合の童顔が左に傾いて考える。
「立ってた? そりゃここにいるやつはみんな立ってるよ」
高杉が大きく否定、杉浦が叫んだ。
「バカ言え! そういう意味じゃねぇ! 勃ってたんだよ!」
「いったい誰に興奮したって言うんだ!」
瞬間、神崎の周りにいた龍生以外の男たちが彼女の顔を見つめる。
「えっ、私?」
「「「ないない、絶対にない」」」
「なんでじゃコラァ!」
思わず神崎がその三人をハリセンで一度に強打した。
彼らは気絶。
その時、慧見は自分がハリセンをどこからか取り出してきたことに気がつく。
「これは……」
龍生が軽く笑って「会得したな」
「そんな馬鹿な……」
神崎が放心していると滝松が冷静に二人の隣に近づいてきた。
「まったく、三人同時にやられるとは。これだから俺は体を鍛えろと言っている。しかし、暑いな。体操服を脱ぐか」
上の体操服を脱ぐと、下にはTシャツが。
そこには『勃起』とプリントされていた。
「ぬぅん!」神崎が一撃。
滝松はハリセンで頭を殴られ気絶してしまった。
龍生が警戒して、
「神崎、周りを見ろ。味方の高杉たちを倒したのは間違いだったな」
「そんな……」
「これじゃあ戦場と変わらないぞ」
高杉たちの協力が無くなった神崎には目の前で起こっている授業が壮絶な殺し合いに見える。
彼女はハリセンを構え、龍生に尋ねた。
「どうすれば?」
「いいか? こういう時は観察だ。推理と同じで状況を察するんだ。そういうのは得意だろ?」
「当たり前よ!」
すると、声が聞こえた。
続く。
続きも見てね。
次回『給食のおばちゃんはエロくないが強い』




